XTC再結成の可能性は? テリー・チェンバースが語るバンド結成時と脱退後の記憶

XTC、1978年撮影。左からコリン・モールディング、テリー・チェンバーズ、アンディ・パートリッジ、デイヴ・グレゴリー(Photo by Ebet Roberts/Redferns)

XTC結成時のドラマーで、今年1月にトリビュート・バンド「EXTC」を率いて来日したテリー・チェンバース(Terry Chambers)のインタビュー後編。ここでは1982年の脱退劇とその後の人生、アンディ・パートリッジやコリン・モールディングと共にバンドを結成したときの記憶、EXTCの展望とXTCの未来について語ってもらった。

>>>【前編を読む】XTCのテリー・チェンバースが明かす、名曲を支えたドラム秘話と「EXTC」結成の真意


XTC脱退の背景「僕はライブを大切にしてきた」

―『English Settlement』は、テリーさんが全曲プレイしている最後のアルバム。ライブよりもレコーディングに比重を置き始めた時期の作品で、リズムもより多彩になっている印象です。

テリー:曲がもっと複雑になったよね。デイヴ・グレゴリーもギターと同じくらいキーボードを演奏するようになった。時にはステージに、もう一人ミュージシャンを加える必要が出てきたんだ。

後年の作品で、アンディはストリングスといったものをもっと加えるようになっていったけど、この頃はまだ、ライブで再現できない要素を取り入れることへの葛藤もあった。だけど、(1982年に)ライブをやらないという決断をしてからはその心配が一切なくなり、ステージで再現できることを前提とした曲作りから解放されたんだ。アンディはアーティストとして、やりたいことをひたすら追求していくようになった。赤、青、黄色という三原色に縛られず好きな色を使えるようになり、音楽的に好きなものを混ぜ合わせられるようになったんだ。

―「Senses Working Overtime」では、アンディが「中世っぽいドラムを叩いてほしい」とリクエストしたそうですね。

テリー:そうそう。この曲のイントロ部分みたいなリズムは、のちに「Love On A Farmboy’s Wages」(『Mummer』収録)でもプレイされているよね。あのサウンドは歌詞を邪魔することなくイントロを強調して、歌に繋げるためのものだった。これもやっぱり、歌詞や曲のフィーリングに合うものをプレイしようと心がけて作り出したものだね。

―個人的には、あの曲の最後に入る3連符のドラム(下掲動画の4:20〜)が大好きです。あそこはどのように生まれたのでしょうか?

テリー:あのテンポが半分になるようなところのフィルだよね? どうだったかな……(苦笑)。スタジオでいくつかトライしてみて、とにかくやってみたら上手くいったという類のものだったね。何通りかやってみたなかで、テンポを半分にしたら上手くいったんだ。とにかく実験をしてみて、その場で解決策を見出していった結果だったと思うよ。時にはちょっとしたミスから(リズムのアイディアが)生まれたこともあって、それが悪くなかったという感じだったのかもね。



―そして、テリーさんは『Mummer』の制作中にXTCを脱退するわけですよね。先ほど話に出た「Love On A Farmboy’s Wages」のセッションをしている最中、あなたはスティックを投げ出してバンドを去っていったとアンディは振り返っています。当時の心境を聞かせてください。

テリー:僕はドラマーとしてライブでの演奏を常に大切にしてきたから、「ライブ活動をやめる」というアンディの決断に失望していた。「レコーディングの機会が与えられるなんて恵まれた立場だ」と思う一方で、バンドが進化していくにつれて、ライブの重要性をさらに実感するようにもなっていたからね。アルバムを録音するなら、それをプロモーションするためにもライブをやるべきだと僕は思った。

レコード会社がテレビや新聞、ローリングストーンみたいな雑誌に広告を打ってくれたとしても、それは外の世界に出ていって、人々にものを売り歩くのとは根本的に違うものだ。そう、「売り歩く」ってことが大切なんだよ。レコード会社に販促を任せるだけで、誰が僕たちの音楽を知ってくれるんだ? 僕らはメディアに露出するだけで「あとは任せた、ぜひとも売って来てくれ!」っていうのは、自分には正しいことのように思えなかった。

それに『English Settlement』は大成功を収めたけど、『Mummer』の頃のアンディは病の影響もあって、ベストな曲を書いているとは思えなかった。ツアーをキャンセルしてからすぐに制作に入ってしまった気がするし、彼は休息をとるべきだったんだ。そうすれば本来の姿を取り戻して、もっと違うアルバムになっていたと思う。EXTCのツアーでは『Mummer』からも2〜3曲プレイしてきたけど、あのアルバムの曲はそこまで強度があるわけではないような気もするんだ。そこまで売れなかったはずだしね。

アンディは『English Settlement』のパート2を作るのではなく、次のステージに進みたがっていた。僕もそこは理解できたけど、不十分な形で臨んだ『Mummer』のスタイルが自分のドラミングには合わなくて、それでバンドを離れることにしたんだ。


Translated by Tommy Molly

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