カーネーションが語る19作目のアルバム、40周年を迎えてたどり着いた新境地

—ヤコブさんが参加したオープニング・ナンバー「ここから -Into the Light」はまさにカーネーション節というか。カーネーションのアルバムはこういう風に始まってほしい、と思うような高揚感に満ちたロック・ナンバーです。

直枝:出来過ぎなくらい1曲目っぽい曲(笑)。この曲の仮タイトルが「サイケこれから」で、サイケな曲にしようと思ってヤコブくんを呼んだんです。完成した曲にはいかにも60年代っぽいサイケな要素はほとんど残っていなかったけど。

—ヤコブさんのギターもいいですけど、橋本歩さんのチェロの伸びやかな音色も効いてますね。

直枝:ヤコブくんのギター一本で押す、というのでもよかったけど、もう、ひとひねりほしいと思って最後にチェロを入れたんです。

—「ここから 灯りが見えないか」という歌詞がありますが、これはもしかして……。

直枝:「夜の煙突」にひっかけてます。

—やっぱり! 「はしごを登る途中で ふりかえると僕の家の灯りが見える」と歌ったデビュー曲「夜の煙突」へのオマージュなのかな、と思いました。

直枝:歌詞を考えている時に40周年に繋がるキーワード的なものとして。「あれから時が経ったけど今はどうなの?」っていう問いかけというか。

—それを知ると曲に対する味わいが増しますね。続く「カルーセル」はガラッと雰囲気を変えて、ピアノを軸にした70年代のシンガー・ソングライターっぽい曲。2曲目でこうきたか、と思って驚きました。



直枝:この曲はいつか出す予定のソロ・アルバム用に作った曲なんですけど、変拍子で難しい曲だからバンドではやれないと思っていたんです。だから大田くんに聞かせた時は、ある程度、アレンジをしてわかりやすくして。

大田:最初に聴いた時は大丈夫かな、と思ったけど、メロディーと歌詞が乗ったら、それで拍子を覚えられるからうまくいったね。

—メロディーに耳がいくので、そんなに難しい曲とは思いませんでした。大田さんのコーラスが隠し味になって、ちょっとシャレた感じもあり。こういうタイプの曲は最近のカーネーションにはなかったですね。

直枝:『YOUNG WISE MEN』(88年)の「ハンバーガーですね」みたいなね。

—そうですね。初期の頃を思い出させます。そういう曲を入れたのも40周年だからですか?

直枝:それはないけど、引き出しはいろいろ開けてます。

—「どこで筆を置くべきか それとも終わらぬ絵と向き合うべきか」という歌詞の一節といい、直枝さんの音楽に向かう心境を描いたような歌詞ですね。

直枝:「あの木馬に跨って 太陽を背に受けて書き割りの荒野へ」という歌詞を書いた時、これが僕らのポップ観だと思ったんです。僕らがやってきた音楽って、そういうことなんじゃないかって。

—40年目にしてカーネーションの謎が解けた?

直枝:これまで自分たちがやっている音楽が言葉にできなかったんですよ。この変な世界は何だろう? カーネーションの分かりにくさってなんだろう?って思い続けてきたけど、ようやく言葉にできたと思ったら、すごく気が楽になったんです。

Rolling Stone Japan 編集部

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