カーネーションが語る19作目のアルバム、40周年を迎えてたどり着いた新境地

—「書き割りの荒野」、つまり、果てしなく広がっている物語の世界を音楽という木馬で駆け抜けているんですね。

直枝:そう。木馬に跨っているっていうのがユーモアがあっていいと思って。カッコつけてないしね(笑)。

—「カルーセル(回転木馬)」というのも良いですね。回転するところがレコードやCDを連想させて。歌詞に「サイケなココロ」という過去の曲名が入っているのは40周年オマージュですか?

直枝:あ、ほんとだ。これは無意識。すっかり忘れてた(笑)。

大田:俺も今気づいた。面白いな(笑)。

—無意識のオマージュでしたか(笑)。いろんな意味でアルバムを象徴する曲ですね。続く「愛の地図」も初期カーネーションを思わせるポップな曲です。

直枝:80年代の頃はXTCとかを引き合いに出されることが多かったけど、その時に自分たちのポップさをちゃんと消化できていなかったような気がして後悔するところがあったんですよ。もっと面白く作れたんじゃないかって。だから、今あえてもう一度、そういう曲に挑戦してもいいんじゃないかと思ったんです。

—デビューした頃は、よく「ひねくれたポップ・センス」なんて言われてましたね。

直枝:あの頃、大田くんがいたグランド・ファーザーズの方が、よっぽどXTCだったけど(笑)。

大田:東京に出てきた頃、XTCのファーストを聞かされてカヴァーしたんだよな。でも、俺は「愛の地図」にXTCはあまり感じなかったけど。

直枝:大田くんがXTCを聴いてたのが初期だからだよ。この曲は80年代後期にXTCがポップになり始めた頃の感じがある。あと、歌詞が落語口調みたいなのが異色で、ちょっとべらんめえ調なんです。

大田:そうそう。おかしいよね、これ(笑)。

直枝:このアルバムの歌詞には、そういう笑いが結構ちりばめてあるんです。

—続く「ペインター」でまた雰囲気が大きく変わって、フォーキーな曲ですね。後半はストリングスが入ってバロック・ポップみたいになる。

直枝:これもソロ用に考えていた曲でバンドに持っていっていいのかな?と思っていたんですけど、なんでもありだ、と思ってアルバムに入れました。中間部の〈どこまで上昇するの?〉っていうメロディーが気にいってます。

—心象風景を描いているような内省的な歌詞ですね。

直枝:悲しい歌なんだろうけれど、主人公は困り果てて笑っているんですよね。そこがリアルかなと思って。

—個人的な体験が反映されていたりするのでしょうか?

直枝:それは全然関係なくて。シンガー・ソングライターの自分語りのように見せているだけで、ひとつの物語の脚本を書くような感じで書きました。

—「ペインター(画家)」の次の曲が「ソングライター(作曲家)」というのも面白いですね。

直枝:このアルバムはキンクス『ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティ』(68年)みたいに、いろんな登場人物が出てくるんです。

—まさに書き割りの世界ですね。

直枝:曲の雰囲気はニルソンをイメージしていて、谷口くんにもそう言ったんです。でも、あとでニルソンを聴き直してみたら、こういう曲は全然なかった(笑)。

Rolling Stone Japan 編集部

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