The Acesが日本で語る 影響を受けた5枚のアルバム、クィアとしての使命に目覚めた瞬間

 
パラモアへの共感、「バンド」の魅力

―そしてもう1枚、バンドとして選んでいただいたアルバムは何でしょう?

クリスタル:パラモアの『Riot!』(2007年)。パラモアは、私たちがバンドを始めた時から全員が好きだったバンドなんだ。最初の地下のバンドルームには、パラモアの『Riot!』のデカいポスターを貼ってた。

アリサ:バンドを結成したとき、私はグレード8(中学2年生)で、みんなはグレード10(高校1年生)だった。家族共有のパソコンで、いとこがYouTubeで「crushcrushcrush」のMVを見せてくれたんだ。それから、私たちはハマっちゃって……「もう1回! もう1回!」って(笑)。

クリスタル:その後、地下に降りて「Misery Business」を猛練習したんだよね(笑)。ただ、パラモアになりたい! ヘイリー・ウィリアムスになりたい! いつかパラモアみたいにうまくなるんだ!って願いながら……それくらい影響された。今でも、フロントとしてヘイリー・ウィリアムスみたいになりたいって思ってる。彼女は私のアイドルなんだ。

それに、私たちの境遇はパラモアに似ているところがある。中学生の頃、パラモアは南部のテネシー州の小さな街でバンドを始めたんだよね。私たちは、西部(ユタ州)の小さな郊外でバンドを結成した。彼らの表現が大好きだし、ファンもすごく多様性に満ちている。それは、パラモアが生み出しているエネルギーの象徴だと思う。彼らのミュージシャンとしての姿勢をすごく尊敬してる。ジ・エイシズが今でも影響を受けているバンドだね。

―昨夜の開演直前のSEで、「Misery Business」が流れたのも興奮しました。

アリサ:SEのプレイリストは、登場前に私たちのファンを盛り上げるため、ファンに向けて選曲してるんだ。日本ではカルチャーの違いもあって、ちょっとうまくいかなかったけど。ファンのみんなは、私たちが選曲したアーティストのファンでもあることが多いから、大合唱になったりするよ。だから、私たちのルーツにある曲を流すのをすごく楽しんでる!




―ここまで話してきたような音楽的影響もニューアルバム『I've Loved You for So Long』に反映されていると思いますが、改めてどんな作品を作りたかったのか教えてください。

クリスタル:制作面やインストゥルメンテーション、さまざまな場面で、自分たちのルーツに戻ろうとした。「Suburban Blues」は、スタジオで円になって座って演奏したんだ。昔はそうやって音楽を作ってたから。

アリサ:今回のアルバムは、ティーンの頃のストーリーを歌っている。だから、バンドを結成した頃のガレージロックのエレメントを取り入れて、自分たちのルーツに立ち戻ろうとしたんだ。サウンド制作も、アナログな方法をとって、楽器演奏をオーバープロデュースしないように作っていった。荒々しいグランジのサウンドを残すことで、このアルバムのストーリーをより鮮明に伝えられると思ったんだ。

マッケンナ:もう1つは、パンデミックの間にレコードをリリースした時の教訓として、どんなフィードバックを受けたとしても、自分たち自身が楽しんで満足できる音楽を作ることを念頭に置いていた。今までのようにツアーができなくなって、どれだけファンの歓喜に私たちが満たされていたか、身に染みて分かったんだ。このレコードで大事なのは、誰がどのように聴こうが、どう受け取られようが、自分たちが作りたいものに従順でいることだった。



―ジ・エイシズの音楽と出会うことで、「バンドって楽しそうだな、自分もやってみたい」と考える次の世代が今後出てくると思うんですよね。そこでお聞きしたいのが、「バンド」で活動することの魅力ってなんですか?

クリスタル:もちろん、私は音楽が大好きだけど、バンドでいることがそれ以上に好きなんだ! バンドだから経験できることはたくさんあって、お互い助け合ったり、一緒に乗り越えていったり、それってすごく貴重なことだと思う。私たちは幼い頃から一緒にいる。お互いのことを分かり合える仲間と作品を作ることができるなんて。バンドは、とても特別な存在だよ。

アリサ:人と関わり合って何かをすることは、すごく素敵なことだよね。テクノロジーの発達によって、関係性は薄くなり、人々は孤立して、個人で何かをする傾向が強くなってきてるけど、それは寂しいことだと思う。バンドって、一緒に素晴らしい作品を作るために、時には妥協したり、何度もやり直したり……すごく原始的な活動だと思うんだ。それに、音楽業界は特にアップダウンが激しいし、時に辛いことや孤独になることがある。私たちは、バンドでいることでお互い支え合い、辛い時期を乗り越えて、最高の瞬間の幸せを分かち合うことができる。仲間と世界中を旅して、すべてを分かち合えるなんて、最高じゃない?

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ジ・エイシズ
『I’ve Loved You For So Long』
配信リンク:https://theaces.ffm.to/ilyfsl

Translated by Miho Haraguchi, Natsumi Ueda

 
 
 
 

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