NCT 127が語る、唯一無二の「オールラウンドなユニット」である理由

ひとつの“世界”と言うよりは、魅惑的な空間の連なり

メンバーたちは、積み重ねてきたいくつもの思い出を「NCTzen」と呼ばれるファンダムと分かち合ってきた。実際、彼らの写真や動画はSNS上にあふれている。だがJohnnyは、「メンバー間で昔のことを話すときは、一番キツかったときのことが決まって話題にのぼるんです。『クタクタで死にそうになったあのときのこと、覚えてる?』のように。苦しいことは、写真や動画ではお話しできませんから。一番キツかったときのことが一番記憶に残っているというのは、少し皮肉な感じもしますけどね」

それを聞いてMarkは(Yutaの肩に頭を乗せながら)にんまりと笑った。Johnnyは、K-POPスターのイメージとは相容れないような皮肉っぽいドライなユーモアをさらりと言ってのけてしまうのだ。少し経ってから、Johnnyは「でも、いまはもう大丈夫です」と苦笑した。

本誌のインタビューは、5作目となるフルアルバム『Fact Check』の発売が2週間後に迫った9月某日に行われた。ここに来るまでNCT 127は、4作のフルアルバムをリリースし、2度にわたるワールドツアーを成功させた。Disney+のオリジナルドキュメンタリーシリーズ『NCT 127: The Lost Boys』(全4話)も記憶に新しい。ほとんどのK-POPグループはデビューから7年という契約を事務所と結ぶが、契約満了となる7年目に全盛期を迎えることが多い。だが、デビュー7周年を迎えたNCT 127の歴史を振り返ると、過去3年間の活躍ぶりには目を見張るものがある。3年連続でリリースされたアルバム3作(2020年の『Neo Zone』、2021年の『Sticker』、2022年の『2 Baddies』)は、それぞれが100万枚以上のセールスを記録しただけでなく、全米アルバムチャート「ビルボード200」の上位にランクインしたのだ。









艶やかなビジュアルとパワフルなパフォーマンス、そしてハードでカラフルなネオンカラー(それは「Neo Culture Technology」の略称であるグループ名にも象徴される)。NCT 127は、一目でそれとわかる唯一無二のスタイルを守り続けてきた。それはひとつの“世界”と言うよりは、魅惑的な空間の連なりのようだ。彼らがリリースするすべてのシングルは緻密に計算され、チャントのようなコーラス、ラップのヴァース、滑らかなボーカル、複数の層からなるシンセサイザーのエフェクトがふんだんに盛り込まれている。2020年にリリースされた「Kick It」(ダンスミュージック特有のシンセサウンドが特徴的)は、彼らのトレードマークとも言うべきラウドなサウンドをさらに強化したものだった。「Kick It」は、パンデミックという不安な現実から人々を逃避させた。その頃はまだ中規模だったNCT 127のファンダムは、一夜にして爆発的に拡大した。



「Kick It」に次いでリリースされたシングル(「Punch」「Sticker」「2 Baddies」「Ay-Yo」)のアレンジメントは、オーディエンスの予想をはるかに超えていた。MVの再生回数も1時間ごとに伸び続けた。こうしてNCT 127は、“崇高”と“滑稽”が紙一重となる、ポップ・ミュージックのハイリスク・ハイリターンの領域に足を踏み入れたのだった。彼らがこの繊細きわまりない領域で自分たちを見失わずに活躍できているのは、深刻になりすぎずに、あらゆることに真剣に取り組む術を心得ているからだ。

Translated by Shoko Natori

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