NEX_FEST総括、メタルの新時代を示した「音楽的越境」、ブリング・ミー・ザ・ホライズンの功績

ブリング・ミー・ザ・ホライズン(Photo by Masanori Naruse)

夢のようなフェスだった。11月3日に幕張メッセで開催された「NEX_FEST(ネックス・フェスト)」。主催を担当したブリング・ミー・ザ・ホライズン(以下BMTH)のオリヴァー・サイクスは、開催前のインタビューで「このフェスはどの出演者もオルタナティブなんだけど、多様なスタイル、多様な音楽を表現してるし、ヘヴィなものからライトなものまでいろいろある。でもそれこそがフェスのあるべき姿だと思うんだ」と述べていたが、まさにそれが理想的な形で成し遂げられた一日だった。

【写真まとめ】「NEX_FEST」ライブ写真

演者および観客の世代交代。メタルとハードコアパンクを軸に多方面に繋がる音楽的越境。コアとポップの橋渡し、メジャーからアンダーグラウンドへの動線。そうしたテーマが日本のバンドをメインに実現され、実力本位で集められたラインナップが比較的適正なジェンダーバランス(出演した12組のうち6組に女性メンバーがいる)をもたらす。すでに始まっていたメタルの新時代を優れたラインナップで知らしめ、集客や盛り上がりの面でも成功したNEX_FESTは、日本に限らず世界的にみても、ヘヴィ・ミュージックの歴史における記念碑的なイベントになったと言えるだろう。これを先導したBMTHの功績は本当に大きい。

実際、NEX_FESTの音楽的な広がりはBMTHが軸になったからこそ実現できたものだ。2013年の4thアルバム『Sempiternal』でメタルコアのジャンル越境傾向(ニューコアという括りでも知られる)を先導したBMTHは、近作で積極的なコラボレーションを繰り返し、人脈の面でも繋がりを生み続けてきた。その筆頭が、2019年の国内ツアーでBMTHをゲストに起用し2020年の「Kingslayer ft. BABYMETAL」でも客演したBABYMETALと、BMTHの「AmEN!(feat. Lil Uzi Vert And Daryl Palumbo Of Glassjaw)」およびリル・ウージー・ヴァートの「The End (feat. BABYMETAL)」(いずれも今年6月リリース)の作編曲を担当したDAIDAI(Paleduskのギタリスト)で、この2組は今回のラインナップの中核と言っていいだろう。そうした音源制作上の交流をふまえ、今回のBMTHのステージでは「Kingslayer ft. BABYMETAL」でBABYMETALとの共演が実現。また、BMTHの「Obey(feat. YUNGBLUD)」と自身の「Happier(feat. Oli Sykes Of Bring Me The Horizon)で共同制作をしていたヤングブラッドも、互いのステージで客演していた。


ヤングブラッド(Photo by Masanori Naruse)

そして、マキシマム ザ ホルモンについても、2008年にUKツアーをした際にメンバーとマネージャーが現地でBMTHを観て衝撃を受け、そのまま楽屋に押しかけアプローチしたことから、ホルモンが翌年にツアーする際のサポートとしてBMTHの初来日が実現した経緯がある。NEX_FESTはこうした縁の集大成であり、そこに新たな実力者たちを加えて関係性を広げる場でもある。音楽的コンセプトと交流をここまで高い精度で両立したイベントは稀で、それが当日の盛り上がりにも繋がっていたのが何とも素晴らしかった。



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