NEX_FEST総括、メタルの新時代を示した「音楽的越境」、ブリング・ミー・ザ・ホライズンの功績

コアとポップの橋渡し

NEX_FESTの美点のひとつとして挙げられるのが、タイムテーブルの良さだろう。メインステージのNEX_STAGEにメジャー寄りのアクト、サブステージのCHURCH_STAGEにアンダーグラウンド寄りのアクトを配置し、その交互でライブが行われていく形式なのだが、全ての出演組が各々のやり方でポップな広がりをもたらしているために、違うステージのアクトを続けて観ても違和感が生じない。例えば、CHURCH_STAGE先頭のAlice Longyu Gaoはアヴァンギャルドなニューメタルとバブルガムベースをトラップメタル経由で混ぜたような音楽性、NEX_STAGE先頭のYOASOBIは「夜に駆ける」「アイドル」といった有名曲のライブ仕様のアレンジを序盤と終盤に配置しつつ、その間にはJ-POP寄りの楽曲を衒いなく並べる構成で、いずれのアクトにも理屈抜きの親しみやすさがある。それに続く花冷え。はメタルコアの系譜を突き進んだらたまたま100 gecs的なものにぶち当たってしまったような混沌と勢いが凄まじく、BMTHと並ぶニューコアの巨頭であるアイ・プリヴェイルは、ポップミュージック領域でもメタルコア〜ポストハードコア領域でも一線級で戦える楽曲と演奏表現力が素晴らしい。ここまで贅沢なラインナップが序盤に固められたイベントは滅多にない。


Alice Longyu Gao(Photo by Yu Kubo)


YOASOBI(Photo by Masanori Naruse)


花冷え。(Photo by Yu Kubo)


アイ・プリヴェイル(Photo by Masanori Naruse)

そして、このフェス最大の特異性が発揮されたのが中盤の流れだろう。KRUELTYは日本のみならず世界を代表するデスメタリック・ハードコア、VMOはブラックメタルにガバやブレイクコアを混ぜた“DEATH RAVE”でメタルにおけるアート志向を突き詰める存在。その2組の間にNEX_STAGEへ出演したのがマキシマム ザ ホルモンで、このバンドはライブでコアなバンドのTシャツを着用し、メジャーシーンに身を置きつつアンダーグラウンドシーンの紹介をし続けている。KRUELTYのZumaはMCで「あなたがどんな音楽を好きでも関係ない」「普段から場を作っているやり方を変えずに、その輪を広げていきたい」と言っていたが、NEX_FESTにおいては、そうした姿勢がメジャーの側からもアンダーグラウンドの側からも貫かれ、馴れ合いはしないが隣り合い協働する場が作られていた。この3組の後も、ポップパンクを軸に多彩な音楽領域を呑み込むヤングブラッドと、デフトーンズやアルカに通ずる豊かな音響構築のもと奥深い叙情を表現するCVLTEが続き、上記のような協働を別の角度から補強していく。こうした流れは、NEX_STAGEとCHURCH_STAGEをあわせて観ることで初めて全貌を掴めるものだが、それぞれのステージ単体を通して観ても一貫性があり、どちらか一方に居続けても楽しめる。文脈を緻密に張り巡らしながらも押し付けがましくなく、フェスならではの気軽さが保たれていたのもNEX_FESTの魅力と言えるだろう。


KRUELTY(Photo by Yu Kubo)


マキシマム ザ ホルモン (Photo by 浜野カズシ)


VMO(Photo by Yu Kubo)


CVLTE(Photo by Erina Uemura)

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE