シンガーソングライター・ずみをが語る、上京して騙されたこと 身の回りのことを歌う理由

―自作のイラストを使ったMVもいくつか拝見しましたけど、「みんなのうた」っぽくて良いですね。

ずみを:ありがとうございます。「みんなのうた」っぽいとはよく言われますね。母が美大出身で、小さい頃から一緒に絵を描いていたんです。母も子供のときは漫画家になりたくて、絵を書くのが好きなので、それを見て私も母みたいに絵が上手くなりたいと思って、ずっと描いていました。

―イラストと音楽は結び付けて考えているんですか。

ずみを:そうですね。曲のイメージを人に伝えることが結構苦手で、うまく伝わらないかったりすると、自分でやった方が早いって思ってしまうので(笑)。その結果、自分でイラストを描いてMVを作ってみたんです。

―なかでも、「あいこそ」という曲のアニメーションMVが印象的だったんですけど、〈飢えこそはないが 戦争こそはないが 幸せとは金か? 「豊さ」ってなんなのか〉と歌っていますよね。これはそういう自問自答みたいな時期があって書いたんですか。



ずみを:この曲は、本当に上京して1年ぐらいのときに作った曲で、結構ひもじくて電気とガスが止まったんです。それで、電気を開通させるために電力会社に電話しても全然繋がらないんですよね。電気代を払えなかった私が悪いんですけど、「金がすべてか、くそったれ」と思って勢いで作った曲ですね(笑)。

―逆ギレじゃないですか(笑)。今、他国の戦争のニュースが日常に侵食してきてると思いますが、歌にしようかなとか思ったりはしませんか。

ずみを:関心はあるんですけど、曲にして何か力になろうとかっていう風にはあまり考えられなくて、やっぱり自分の身の回りのこととかに起きていることを歌詞にすることが多いです。

―世の中のこと全部を自分ごとみたいに受け止めちゃうと、しんどいですもんね。

ずみを:そうですね。自分の身の回りのことを歌っていきたいです。

―趣味は映画鑑賞ということですが、映画が曲づくりに影響することもありますか。

ずみを:あります。例えば「UBのワンルーム」は、「花束みたいな恋をした」を見て、川沿いのアパートに一緒に住んでいるシーンからインスピレーションを得て書きました。

―だいたい邦画からインスピレーションを受けることが多い?

ずみを:邦画が多いんですけど、1曲だけ洋画の『500日のサマー』から作ったのが、「すっぴん」という曲です。あの映画は、男の子と女の子が付き合えるんですけど、結局最後別れちゃうんですよね。別れるときに女の子が、「朝起きたときに、好きじゃなかったことに気付いたの。あなたと私の気持ちが違うことに気付いたの」って言ったセリフに、ワーッと思ってそこから作りました。

―観たことありますけど、あれは男性がかわいそうだなって思いましたけどね(笑)。

ずみを:そうなんですよ(笑)。だから「すっぴん」も男の人には「ひどいよ」って言われるんですけど、女の子は「すごくわかります」って言う人が多いです。気まぐれじゃないけど、やっぱり気持ちっていうのは変わっていくものなのでと言ってしまえばすごく冷たいですけど(笑)。それは仕方ないのかなと思います。

―今後はどんな活動をしていきたいか教えてください。

ずみを:ライブはこれまで弾き語りメインだったんですけど、ここ1年ぐらいでバンドを始めてメンバーも揃って楽しくなってきてるところなので、そっちの方でもライブを増やしたいなと思っています。作品としては、日常から曲を作るっていう今までのスタンスでやっていきたいです。曲を作り込んでしまうとかなり時間がかかるので、もっと簡単な歌というか、それこそ「みんなのうた」みたいな、あまり歌詞も多すぎないっていう曲を作ってみたいなって思います。

―今は上京したときのように「売れてやるぞ!」みたいな気持ちではなくなりましたか。

ずみを:いろんな人に曲を聴いてほしい気持ちはもちろんあるんですけど、紅白に出たいとか武道館でライブをしたいとかそういう方面ではなくなっている気がします。昔は「有名になりたい」と思っていたんですけど、今は何かを作ることが好きで、曲を作ることに重点を置いているところがあって、ライブをしているときよりも、曲を作ってるときの方が楽しいんですよね。それをできるだけ多くの人に聴いたり見たりしてもらいたいです。



<リリース情報>

ずみを
『初恋チャーハン』
2023年10月25日リリース
https://linkcloud.mu/359367a3

ずみを
『UBのワンルーム』
2023年9月27日リリース
https://linkcloud.mu/9580097c

Rolling Stone Japan 編集部

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