シンガーソングライター・ずみをが語る、上京して騙されたこと 身の回りのことを歌う理由

―そもそも何もない地元で育ったという人が、どうして東京に出て音楽で売れてやろうと思ったのでしょうか。

ずみを:地元で大学に行ってたんですけど、自分はやりたいことを見つけられなくて。大学3年生ぐらいにみんな就活を意識し出して、私も何となく就職するのかなっていろいろ悩んでるときに路上ライブをしてみたんです。音楽は好きで、友だちがギターを始めたのに付き合う感じで自分もギターで弾き語りするようになったんですけど、地元の宇都宮で路上ライブをしたときに、誰も聴いてくれなかったんですよ(笑)。田舎で人があまりいないっていうのもあるんですけど、誰も聴いてくれなかったことがちょっと悔しかったんです。自分の中で、これをもっといろんな人に聴いてもらいたい、それには人がたくさんいる東京に行くしかないって思ったんです。私はもうすぐに行きたかったんですけど、やっぱり親には大反対されて。「大学はちゃんと卒業してから行ってくれ」って言われて、話し合いの末、大学を出てから上京しました。

―上京して、路上ライブをやりながら、曲作りも始めたんですか? 音源もライブハウスで売っていたそうですけど。

ずみを:上京して、音楽の専門学校に通うようになったんです。最初は、そこで知り合った先生に頼み込んで、格安で音源制作をやっていただきました。そこからどんどん自分で曲を作り出して、オリジナルでライブをやっていた感じですね。

―どんな曲を歌おうと思ってオリジナルを作り始めたんですか。

ずみを:高橋優さんを一番よく聴いていたんですけど、高橋さんは結構生々しさとかリアリティを歌にしている人なんですよね。自分も東京に出てきたばっかりの頃はお金がなくてもう本当にボロボロのアパートに住んで、日々食べるものが買えるかどうかみたいな生活をしていて。そういう不満とかがあったので、そういう気持ちを歌にすることが多かったです。

―なんか昭和のアーティストっぽいエピソードというか、なかなかの苦労人ですよね。

ずみを:いや、自業自得なので(笑)。でも、上京して2年くらいは路上ライブを中心にやっていたんですけど、聴いてもらえるようになってきて、ライブハウスでも徐々に自分目当てで来てくれるお客さんができたりとか、X(ツイッター)とかで自分のことをつぶやいてくれたりすると、すごく嬉しくなったりしましたし、だんだん自信もついてきました。

―アルバム収録曲の「下北晩杯屋」を聴いたら結構毒づいている感じもあったので、もともと尖った人なのかなと思ったんですが、どうなんですか?



ずみを:そうだと思います。専門学校で、曲の作り方とかも授業でやるんですよ。そこで「売れるため、みんなに聴いてもらうために、もっと人の印象に残るような歌を作りましょう」みたいなこと言われて、いつもそのことばっかり考えていて、どこか人と違うものを作ってやるっていうネタ探しみたいなのを毎日していたので、そういう尖った曲とかが多くなっていました。

―「下北晩杯屋」は実際にあったことを曲にしているのでしょうか。

ずみを:下北沢のライブハウスでライブをしたときに、みんなで近くの居酒屋さん「晩杯屋」で打ち上げをしていたんですけど、向かいの席で飲んでる男女がいて、みんなで様子を伺っていて、その一連の様子を「ずみを、曲にしてよ」ってライブハウスの人に言われて作ったんです。

―マッチングアプリで出会った男女であろうと思って見てた?

ずみを:そうであろう、という想像で書きました(笑)。これは最近の中でもかなりエグみがあるというか尖った曲なので、歌うときはすごく疲れます。歌って、作って終わりじゃなくてずっと歌っていくじゃないですか? その時々の気持ちで作っているので、尖った曲ほど、作ったときの気持ちと歌うときの気持ちに差があると楽しくないというか(笑)。だからもうちょっとほっこり優しい歌を作ってみようかなと思って、今回の「初恋チャーハン」はそういう曲になりました。今の気持ち的には、「初恋チャーハン」ぐらいの感じで行きたいんですけど、やっぱりライブだといろんな歌があった方がいいと思うし、「下北晩杯屋」は「あの曲良かったよ」ってすごく評判も良いので、頑張ってこれからも歌います。

Rolling Stone Japan 編集部

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