「ボブ・ディランの上を行く」と言われた女性シンガーソングライター、才能と謎に満ちた生涯

1954年、ジーン・ダイッチの家で弾き語りするコニー・コンヴァース(COURTESY OF KIM DEITCH)

シンガーソングライターのコニー・コンヴァースの才能と謎に満ちた生涯を、ジャーナリスト兼ミュージシャンのハワード・フィシュマンが新著『To Anyone Who Ever Asks: The Life, Music, and Mystery of Connie Converse』にて検証している。同書より、その一部を抜粋する。

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2010年、友人宅のパーティで、とある曲がスピーカーから流れてきた――まったく初めて聴く曲だったが、まるで昔から知っているような感じもあった。女性シンガーが物憂げな声で「孤独と呼ばれる場所」について歌っていた。

誰の曲かピンとこなかった。往年のカーター・ファミリー作品のように素直でメロディアス。同時に優しいギターの爪弾きはエリザベス・コットンを彷彿とさせ、ハーモニーあふれる展開はホーギー・カーマイケルに通じるものがあった。伝統的な要素を洗練された感性で丁寧に紡ぎ合わせ、まったく新しいサウンドに仕上げたかのようだ――現代的といってもいい。私はこの曲に飲み込まれ、周りの風景は跡形もなく消えた。

ようやく家の主を見つけ出し、なんという曲か尋ねた。「ああ、あれか」と家主は言った。「コニー・コンヴァースだよ。1950年代に自宅のキッチンで収録していた人で、ファンに恵まれず、ある日車で出かけたきり音沙汰は分からない」。

彼女の1950年代の音源は、2009年にインディーズレーベルから『How Sad, How Lovely』というタイトルのアルバムとして日の目を見た。じわりじわりと火がついて、今では知る人ぞ知る存在となっている。『How Sad, How Lovely』はSpotifyだけで1600万回以上もストリーミングされ、収録曲はビッグ・シーフやローリー・アンダーソンなどのアーティストにカバーされている。「世界中に私のファンは数十人ぐらいね」。自分の曲が世間に求められていないことへの失望感を、彼女はユーモラスに茶化してみせた。今彼女が生きていたらどう思ったことだろう。



私がコンヴァースの亡霊を追い求めて13年になる。彼女の類まれな才能にもっと注目してほしいという願いから、闇に埋もれた彼女の物語から詳細をかき集めている。

Akiko Kato

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