シンガーソングライター・ずみをが語る、上京して騙されたこと 身の回りのことを歌う理由

ずみを

シンガーソングライターの「ずみを」が、2023年10月25日に新曲「初恋チャーハン」を配信リリースした。「UBのワンルーム」に続く2カ月連続配信リリースの2曲目となるこの曲は、まったりとした心地良い演奏に乗せて過去の恋愛が回想されており、誰しもが気持ちを重ねることができるはず。また、昨年リリースされた1stアルバム『つぎの日曜日』の中には、日常で起こる、ほんのちょっとした非日常的な出来事がユーモラスに描かれていたりと、その独特の視点による歌詞と、スッと体に染み込んでくるような歌声が耳に残る。いったいどんなアーティストなのか? 初めてのインタビューは、とんでもないエピソードから始まった。

―2カ月連続配信リリースということで、9月27日に「UBのワンルーム」が、10月25日には最新曲「初恋チャーハン」がリリースされました。反響は結構気にする方ですか。





ずみを:気になります。ライブハウスだとファンの人にしか届かないものが、サブスクでリリースできると、一般の人とかも聴いてくれるじゃないですか? どこで聴かれているかっていう報告がサブスクから毎週メールで届くんですけど、台湾で聴かれていたりするんです。海外でも聴かれているんだって、すごく嬉しいですね。

―いろいろ気になることがあるんですけど、まず「ずみを」というアーティスト名の由来を教えてください。

ずみを:これは、高校時代のあだ名なんです。女子高だったんですけど、女の子っぽくしてなかったので、友だちが私のことを「女じゃないよ。「ずみを」だ」って呼んでいて、それが自分の中で気に入っていたので、何も考えずにつけました(笑)。

―意外とそんなに深い理由はないわけですね(笑)。2018年に上京してギター弾き語りで都内ライブハウスで活動を始めて、同年に初の自主製作CD『グラスホッパー』を会場で販売したとのことですが、曲を聴くと〈夢追いかけて来ました東京 ギター背負って言われるままに座った自動契約機〉という歌い出しから〈一夜にして手にした100万円で買ったのはバッタモンの夢〉と続きますよね。どういうエピソードからできた曲なんですか?



ずみを:地元がすごい田舎で、本当に何にもなくて小学校の同級生が5人しかいないぐらいのところで育ったんですよ。そこから「音楽で売れてやる!」みたいな感じでギターだけを持って何もわからずに急に東京に来て、最初に路上ライブをやっていたんですけど、そのときに声をかけてくれた人が小さい事務所の社長みたいな人で、何もわからずにホイホイついて行ったら、「とりあえず活動費として100万円払ってくれ」って言われて、持ってないから消費者金融に連れて行かれて。

―いやいや、どうしてついて行っちゃったんですか?

ずみを:消費者金融がどういうものなのか知らなかったんです(笑)。それで、「ここに行って、こういうふうに言えばいいから」ってセリフみたいなことを書いた紙を渡されて、一晩で複数の消費者金融を渡り歩いて150万円を借りて、そのうち100万円を事務所に収めたんです。

―その100万円ってその後どうなったんですか?

ずみを:そこからライブハウスに出るようになって、「こういう事務所にいるんですけど」って、いろんな人に相談したんですよ。そうしたら「それはおかしいよ」って言われて、どうやらおかしいらしいっていうことを知って、このままいてもどうにもならないから「辞めます」って言ったら、「じゃあ100万円は自分で払ってください」って言われて、借金だけが残ったんです。5年かけてつい最近、完済して今はスッキリしてます。

―とんでもない経験からスタートしてますね(笑)。でも諦めずにそれをちゃんと曲として昇華させているっていうのがすごい。

ずみを:ただ100万円なくしただけじゃちょっと悔しいから、音楽でちゃんと100万円返すまで辞めないって決めて、曲にもしてやろうと思って「グラスホッパー」という曲を作りました。

Rolling Stone Japan 編集部

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