ウィーザーのリヴァースが語る、ギタープレイの源流「僕はヘヴィメタルのギタリストだ」

ウィーザー(Photo by Taio Konishi)

フジロック3日目、WHITE STAGEの大トリを飾ったのはウィーザー。MCで「ウィーザーの歴史を振り返る旅」と言っていたように、リヴァース・クオモ(Vo, Gt)の運転に身を任せて、バンドの代表曲を辿っていくような内容。そしてあらためて感じたことは、リヴァース・クオモは最高のロックギタリストだ!ということだった。今回はそんなリヴァースにギターに関する話を聞きつつ、2022年にスタートさせた作品プロジェクト『SZNZ / シーズンズ』についても聞いた。

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ーフジロックのライブでも日本語のMCが達者でしたけど、リヴァースさんが日本語でいちばん好きな言葉は?

リヴァース:「便秘」(即答)。

ー(笑)どうしてですか?

リヴァース:響きがいいよね。ベンピ。

ー面白いですね……。フジロックのステージを観ましたが、ライブ中にあれだけの数、異なるギターを使い分けるスタイルはこだわりの一つですか?

リヴァース:あのスタイルは今回初めてやったんだ。長いセットをやりたかったから、ビジュアル面で何か変化をつけたかった。僕的にも、長いセットの中で「次の曲はこのギターだ」っていう気分転換を楽しめたよ。

ーウィーザーのライブにおいて、機材のセッティングやバンドの演奏面において、ギターの聴かせ方で大切にしていることはありますか? ブライアン・ベルとのバランスもあると思いますが。

リヴァース:その質問はタイミングがいいな。ちょうど昨日(※東京の単独ライブ)のサウンドチェックで、ブライアンが「どのギターを弾くんだ?」って聞いてきたんだ。彼はいつも僕と対照的なポジションをとることを意識してるから、同じタイプのギターを使いたがらない。一方で、僕自身はまったく気にしてないよ。そういえば、彼は日本でストラトを買ってたな。それを使いたくて、僕と被らないように確認したんだろう。彼はバンドとしての見せ方について、美意識的な部分でかなりこだわってるからね。

ーあなた自身はライブのパフォーマンスに関して、こだわっている点は何かありますか?

リヴァース:十分なサステインとゲインを持たせたサウンドが好きなんだ。まるでバイオリンを弾いてるみたいな、無限に音を奏で続ける感じ。実は、このツアー中毎晩アコースティック・ソングを弾いてるんだ。昨日はやらなかったけどね。初めてフィンガーピッキングで弾いてるよ。僕にとって新鮮で、とても楽しい。ちょっとソフトなサウンドで、歌い方にも影響してる。練習に励んでるところなんだ。

ー『Van Weezer』というアルバムがあるように、あなたのルーツにヘヴィメタルやハードロックは欠かせないですよね。フジロックのライブ、特に本編最後の「Hash Pipe」「Thank You And Good Night」あたりで思いましたけど、フライングVをあれだけカッコよく弾けるインディ・ロックのギタリストは、あなたしかいないですよ。ヘヴィメタルやハードロックのギタースタイルって、あなたのギターアプローチに大きな影響を与えていますか?

リヴァース:ああ、完全にね。僕はヘヴィメタルのギタリストだ。僕はウィーザーをインディ・ロックと思ってない。別のインタビューでも話したんだけど、今回のツアータイトル(「Indie Rock Roadtrip」)はChatGPTにつけてもらったんだ。ツアーメイトのモデスト・マウス、スプーン、フューチャー・アイランズ、彼らはインディ・ロック・バンドだ。でも、僕らはどちらかといえば、オルタナティヴ・ロックの方ががしっくりくる。僕が思うに、90年代のすべてのオルタナティヴ・バンドはヘヴィメタルの影響を受けてると思う。





ーあなたにとってのギターヒーローは誰ですか?と聞かれたら、まず思い浮かぶ人は誰ですか?

リヴァース:若い頃はキッスのエース・フレーリー。それからメタリカのジェイムズ・ヘットフィールド、イングウェイ・マルムスティーンかな。

ーそういったギタリストたちのプレイを真似して練習していたりしたんでしょうか。

リヴァース:ああ。ティーンの頃はそうだったよ。メタリカのカバーバンドにいて、イングウェイのカバーバンドもやってた。



ーちなみにあなたが所有するギターコレクションの中で、最も愛着があるモデルは何ですか?

リヴァース:ないね。ギターは集めてないし、特に気に入っているのもない。ハムバッカーがあれば何でもいいんだ。

ーウィーザーの曲がきっかけでギターを弾きたい!って思った人もたくさんいると思いますが、これからギターを始めようと思っている人、ギター初心者の人にアドバイスするとしたら、どんな言葉を送りますか?

リヴァース:バンドを始めることかな。早く上達するだろうし、練習のモチベーションにもなる。週末にライブが控えていたりすると、練習しなきゃって気になるだろ? 他のバンドやオーディエンスの前で演奏するのってやっぱり最高だよ。

ー今注目しているギタリストはいますか?

リヴァース:ジャック・ホワイトが好きなんだ。去年アルバムを2枚リリースしてたよね?(『Fear of the Dawn』『Entering Heaven Alive』)1枚はハードロックだった。彼のギターサウンドはとても信じられない。クレイジーなエフェクトにあのレコーディングのテクニック、どうやってるのかまったく見当がつかないよ。あとは、ゴーストもよく聴いてる。ゴーストはギターに関しては特にユニークだとは思わない。むしろ親近感を感じるね。自分が聴いてきた音楽に近い感じがするんだ。どれもキャッチーで耳に残るけど、「収まらなさ」も持ち合わせてる。どの作品にも、面白いレイヤーがたくさんあるんだ。

ー昨年には四季をテーマにした『SZNZ』シリーズも話題になりました。それぞれ毛色の異なるアルバムでしたが、改めてどんなことをやりたかったのか、どんな手応えを得られたのか教えてください。

リヴァース:『SZNZ: Spring』ではアコースティック。ウィーザーがフォークミュージックをやったらどんな感じか。『SZNZ: Summer』は、いわゆるクラシックなウィーザーサウンド。『SZNZ: Autumn』は、フランツ・フェルディナンドやザ・ストロークスみたいなダンスロック。『SZNZ: Winter』では、90年代のシンガーソングライター、エリオット・スミスみたいなサウンドをやりたかったんだ。









ーその結果、バンドにどういったフィードバックがありましたか。

リヴァース:今回のアルバムはとても良い試みになったよ。不評だったのはアコースティックサウンドの『SZNZ: Spring』で、ダンスロックの『SZNZ: Autumn』が一番人気だった。内心は「僕らにダンスロックが作れるのか?」ってちょっと不安だったんだけど、結果的には高評価だったからびっくりしたね。これから『Seasons』というタイトルでコンピレーションを作る予定で、全32曲のうち、気に入った17曲を収録するんだ。たしか、『SZNZ: Spring』からは2曲だけで、『SZNZ: Autumn』からは6曲くらいだったかな。

ー近年のウィーザーはコンセプト色の強いアルバムを出し続けていますが、ツアーではバンドの歴史を振り返る内容(オールタイムベスト)に徹していますよね。普通ならツアーにも最新作のモードを反映したくなってもよさそうなところですが、ライブと制作/レコーディングについて、それぞれ近年はどのようなモチベーションで取り組んでいるのでしょうか?

リヴァース:もし、1〜2枚のアルバムしかリリースしてないバンドだったら、単にニューアルバムを披露すればファンはハッピーだ。けれど、僕らはたくさんのアルバムをリリースしてきて、幅広い世代のファンがいる。ティーンエイジャーから僕と同じ世代までね。だから、みんなに楽しんでもらえるようなセットにしなきゃならない。新曲はセットリストにフィットしなきゃならないって思ってるし、ファンが望まない限り、演奏するつもりはない。もしかすると、僕らがすごく気に入っていて、みんなが知らなくても盛り上がるっていう確信があったら1〜2曲は入れるかもしれないけど。1万人のファンのみんなが楽しみに待っているのは昔の曲で、最大限に楽しんでもらうことを第一にショーを作ってる。「Thank You and Good Night」は新しい曲で知ってる人も少ないけど、かなりヴァイブスのある曲だ! 今回のセットに入れたらみんな気に入ってくれて、最高に盛り上がったよ。


Photo by Taio Konishi




『SZNZ: Winter / シーズンズ:ウィンター』
ウィーザー
ワーナーミュージック・ジャパン
発売中
https://wmg.jp/weezer/discography/27163/

Translated by Yukiko Amita, Natsumi Ueda

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