J-POPの歴史「1994年と95年、アーティストと時代の転機になった90年代半ば」



1995年4月発売、スピッツ11枚目のシングル「ロビンソン」。アルバムは9月に出た6枚目『ハチミツ』の中に入っておりました。スピッツは結成が1987年、デビューが1991年。そこから5年目になるわけですが、この曲をデビュー曲と思った人もいるでしょうね。

さっきおかけしたMr.Childrenとスピッツには一つの共通点がありまして、バンドブームに乗り遅れてるんですよね。80年代後半のバンドブームの最中に音楽を始めたり、バンドを組んだりしていて、ライブハウスシーンがどういうものだったのか現場で知っている。でもバンドブームの恩恵を被ってないんです。むしろ冷ややかに、どこかその崩壊を見てるんですね。縦ノリビートがあれだけ蔓延して、そういうバンドがどんなふうに末路を迎えていったのかを見てる。自分たちのスタイルを決して崩してはいけないってことが、彼らの教訓でもあるんでしょうね。

スピッツの1枚目のアルバム『スピッツ』の中にで「うめぼし」っていう曲があったんです。それを聴いたときに、なんだろうこのバンドは?と思ったんですが、「うめぼし食べたい」って歌詞をストリングスと一緒に歌ってる。こういう日本のロックのバンドがあるんだと思った。そこから試行錯誤を重ねてきた。スピッツは元々パンクバンドでしたからね。そういうバンドが、いろんなことを浄化して「ロビンソン」にたどり着いた。「ロビンソン」以前以後ですね。5月17日に彼らの新作アルバム『ひみつスタジオ』が出るんですが、これがロックバンド、スピッツの第2のデビューアルバムと僕は思ってるんですね。機会があったらぜひ聴いてみてください。

以前以後ということで言うと、この人の作品も90年代の以前以後と言っていいでしょうね。95年1月発売、TRFの8枚目のシングル「CRAZY GONNA CRAZY」。



1995年1月発売、TRFの8枚目のシングル『CRAZY GONNA CRAZY』。94年95年が90年代の転機だった。後半を席巻するのが、この人たちと、この人たちをプロデュースしている小室哲哉さんでしょうね。TRFというのは、TK RAVE FACTORYで、93年にデビューしました。ディスコのイベントの企画とかダンスミュージックのCDの輸入をしていたエイベックスの邦楽第1号アーティストですね。

それまで音楽シーンの外にあったディスコが台風の目になっていった。小室さんがやっていたTMネットワーク=TMNにはダンスミュージックとファンクが合体したファンクスっていう言葉があって、ファンクとパンクを一緒にした存在ではあったわけですけど、もう一方にクラブがあった。同じようにサンプリングが使われたりしているDJがいたって意味ではクラブとして似てるところもあるんでしょうけど、やっぱりディスコは踊りメインで、クラブはもうちょっと音楽に寄っているって違いもあったと思うんですね。

エイベックス以降、小室プロデュース以降、ディスコが発信源になっていく大きな転機になりましたね。TRFはシングルが5作連続1位を獲得して、最速1000万枚を突破した。これが95年だったんですね。

彼らのライブを95年12月東京ドームで見たんですが、ちょっとびっくりしたことがあって。生演奏だったんですよね。TRFって生演奏のバンドなんだと思ったのが、そのときの印象でした。単なるダンスユニットではなくて、小室さんっていうのはとても生演奏にこだわる人なんだっていうのがTRFを通じての一つの発見でありました。

そんな95年、年間チャート1位のシングルをお聴きいただこうと思います。95年7月発売、DREAMS COME TRUEで「LOVE LOVE LOVE」。

Rolling Stone Japan 編集部

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