屋代陽平が語る、YOASOBIの発足から戦略、不変のオタク精神と仲間の存在

屋代陽平(Photo by Mitsuru Nishimura)

さまざまなカルチャーへの「こだわり」と「偏愛」が強いエンタメ業界のキーマンに話を聞く、連載インタビュー企画「ポストコロナの産声」。2020年に全世界を襲ったコロナ禍において苦境に立たされた音楽業界のスタッフたちは、価値観が変容していく日々の中でどのように過ごしてきたのか? そしてアフターコロナに向けてどう考えているのか? そうした中で感じたカルチャーの面白さや、この業界で仕事する醍醐味を赤裸々に語ってもらう。

第3回目のゲストは、株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメントの屋代陽平。2019年にYOASOBIプロジェクトを発足させ、現在も同プロジェクトに深く携わっている屋代に、YOASOBIの発足から戦略、そして自身のルーツについて語ってもらった。

―屋代さんが今どのようなお仕事をされているか教えていただけますか?

屋代:僕は、YOASOBIが生まれた小説投稿サイト「monogatary.com」の運営と企画制作をデジタルコンテンツ本部で、REDエージェント部でYOASOBIのマネジメント&レーベル業務をやっています。その中にあるルームYが、YOASOBIとAyase、幾田りらのソロと、YOASOBIのバンドでも弾いているベーシスト・やまもとひかる、「夜に駆ける」のMVを作ったイラストレーター・アニメーター藍にいなのマネジメント、「フォニイ」「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」を作ったボカロPのツミキとシンガーソングライターのみきまりあによるユニット「NOMELON NOLEMON」のマネージャーとA&Rをやっている形になります。

―YOASOBI以外にも、いろんなアーティストを手掛けているんですね。

屋代:もともと新規事業開発的な仕事がメインだったので、アーティストと向き合う仕事はYOASOBIが初めてなんです。今もトータルでみると非音楽的な仕事の方が実は多いかもしれない。YOASOBIのプロジェクトの中では、自分はずっと小説サイトをやってることもあるので、楽曲の原作小説の作家さんや出版社さんと向き合ったり、ソーシャルアカウント関連、イラストレーターやアニメーション作家さんとのやりとりとかもやることが多いですね。

―まず、YOASOBI「アイドル」の反響について聞かせてください(※7月12日には、YouTubeの世界楽曲チャートで1位を獲得した)。

屋代:客観的に見て、誰も見たことのない動きをしていますね。それによっていろいろと変わってくるものもあったので、上手く活用して広げていきたいなと思っています。



―USでのチャートアクションもそうなんですけど、グローバルでの反響や展開に関しても、常にチェックしつつ動いているんでしょうか。

屋代:去年12月に『Head In The Clouds』でインドネシア、フィリピンに行かせてもらって、現地のお客さんの反応を見て手応えはすごくあったんです。アナリティクス上で見ると、海外のリスナー自体はシェアが大きいので、(YOASOBIを)聴いてくれてるなって何となくは感じていたんですけど、現地のお客さんが日本語で合唱していたのを目の当たりにしたときに、「思ったより響いてるかも」と感じました。そういう人たちを、よりファンにしていくには?とか、ファンになる一歩手前で曲がもっと浸透していくにはどういうアプローチをすればいいかってことは、より強く考えるようになっています。「アイドル」という曲が、こういう動きをしていることで、僕らにとっても新しい武器が増えましたし、それによって自分たちの意識もかなり変わってきたなって感覚はありますね。



―「アイドル」は英語版もリリースしましたよね。

屋代:外国のアーティストがジャパニーズバージョンを出してくれたら、日本人にとって距離の近さを感じると思うんです。たまたまikuraがシカゴに住んだことがあって英語の発音がいいっていう武器があったので、トライしたのが「夜に駆ける」の英語版「Into The Night」で。空耳的なギミックは思いつきと偶然でなんですけど、そういったものも一つ話題にしてもらえて。じゃあ続けていこうとなったのが一昨年。「アイドル」で初めて英語版を出したと思ってくださった方も多いのはまだまだ努力不足なのですが、話題になったのはよかったなと思っています。





―英語版を出していたということが改めて認知されたと。

屋代:英語版を出すもう一つの目的があって。海外の配信ディストリビューターのスタッフが、そのエリアでプロモーションしてくれるとき、日本語の曲だけ持っていってもなかなか話を聞いてもらいづらいんです。そんな中で英語版を持っていれば「YOASOBIって今日本でめちゃくちゃすごくて、しかも英語版も作ってるんだよ」って、彼らがプロモーションする上での武器になるわけですよ。そうすると、現地でプロモーションしていくときに、もうワンプッシュ踏み込むことできる。それがあることによって、「これはアーティストにも協力してもらえるのかな?」みたいなオファー、例えばインタビューやコメントの依頼が来たりするんです。そこに応えることで、現地のプロモーションがより効果的になっていく。そのための武器という意味でも敢えて出している感覚もあります。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE