藤井 風、MFS、なとり…日本発バイラルヒットから広がるグローバル進出の可能性

藤井 風のSpotifyページ

 
2022年、「死ぬのがいいわ」の海外でのヒットをきっかけに、藤井 風が日本のアーティストとして初めてSpotifyの月間リスナー数1000万人を突破するという快挙を達成した。そして、MFSの「BOW」、なとりの「Overdose」といったニューカマーによる楽曲が多くの海外リスナーに受け入れられた。Spotifiy Japanの芦澤紀子氏に話を伺い、2022年の日本のアーティストのグローバルな活躍をひも解くことで、バイラルから広がるグローバル進出の可能性に迫った。

Spotifyが発表した「2022年に海外で最も再生された国内アーティストの楽曲」で1位を獲得した「死ぬのがいいわ」。2020年5月にリリースされた藤井 風の1stアルバム『HELP EVER HURT NEVER』に収録されたアルバム曲が、発売から2年が経ったタイミングで世界中でバイラルしたきっかけは、タイのリスナーがTikTokでアニメ『呪術廻戦』のキャラクター・狗巻棘のシーンの投稿に本楽曲を使用したことだったことは周知の通り。昨今の“推し活ブーム”が楽曲の力を後押しした形だ。


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最初の顕著な動きとしては、2022年7月30日にタイでバイラルチャートの1位を獲得。そこから9月にかけ、一気に右肩上がりのスパイクが続いた。8月12日にはベトナム、8月21日にはシンガポール、8月末にはカザフスタンとUAEとインドネシアとカナダとエジプト、9月頭にはマレーシア、フランス、フィリピン他で1位となる。9月6日にグローバル最高4位を取った時点ではヨーロッパ各国で軒並みトップ5に入るまでに。火が付く前のデイリー再生数は1万5000回程度だったが、2カ月弱で150万回再生まで伸びた。つまり、約100倍ということだ。

「死ぬのがいいわ」が一過性のバズではない証として、本稿を執筆している2023年1月末の現時点で未だにデイリー140万回再生を保っているというデータがある。また、「死ぬのがいいわ」がきっかけで、藤井 風の他の楽曲を聴くリスナーが増え、先述した通り、藤井 風は日本人アーティストとして初めて月間リスナー数が1000万人を突破し、その後も伸び続けている。

例えば、2023年1月に入って「まつり」の再生回数が右肩上がりで伸び、1月末時点でデイリー再生数が2022年12月と比較して3倍にも膨れ上がった。国別チャートでは、1位がタイ、2位がアメリカ、3位が日本、4位がインドネシア、5位がフィリピンとなっており、直近1カ月間の再生数の海外シェアは9割近くだ。


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タイのインフルエンサーが投稿したTikTok動画。同国ではジョニー・デップのヒゲフィルター機能を使って、「まつり」に合わせて踊る動画がバズっている。

芦澤氏はここまで藤井 風の楽曲が広がった理由として、「元々グローバルスタンダードな素晴らしい音楽を展開していた藤井 風をようやく世界が発見した」と指摘する。「『死ぬのがいいわ』はメロディや詞の乗せ方に歌謡曲っぽさがあり、そこにYaffleによるトラップぽいサウンドが加わる。シティポップが世界的に受けたことにも通じる、日本独特のノスタルジーを呼び起こすような感覚が海外のリスナーに新鮮に響いた」(芦澤氏)

 
 
 
 

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