SANADAが語る、温故知新のプロレス観、ハイスタから授かった「魂(スピリット)」

新技「デッドフォール」が生まれるまで

―ロス・インゴの脱退以降、本当に急展開だったじゃないですか。Just 5 Guysへ加入してそこからベルトまで一気に上り詰めた。ロス・インゴ脱退はずっと頭の中にあったことなんですか?

伸び悩みが続いたときは、環境を変えるのもひとつの手だなとは思っていました。

―Just 5 Guysではタイチ選手と合流することになりましたけど、タイチ選手の存在は大きい?

彼は、すごく優しいんです。ここ何年かですけど、敵なのに試合中も優しかったんですよ。IWGPタッグのベルトを賭けた試合でも「sanaやんはいいよ」と俺のことを常に守ってくれる。「sanaやんは好きだけど、内藤はちょっと」とか言って(笑)。



―その理由は何なんですかね?

それが分からないんですよ。ただ、全日本からというルーツは同じなんですよね。そのルートがあるから優しいのかは分からないですけど。それで、昨年10月のNJPW WORLD認定TV王座戦でシングルマッチした際に、試合後リング上で「俺ら鈴木軍、多分解散するから一緒にやらない?」と言われたんですよね。正直そのときはドッキリだと思ってましたけど(笑)。

―なるほど。いざユニットを組んでみていかがですか?

あんまりプライベートで一緒になることはないですが、優しいですね。ツンデレって言うんですかね? 仲良くなったら優しくなる。マナーが守れないファンがいたら怒りますし、実はきちんと筋の通った人です。ツンデレ兄やん。

―ユニットとしての居心地はいいですか?

そうですね。ただ、居心地が良すぎるのもあまり好きじゃない。緊張感がなくなるのも良くないんです。ロス・インゴのときも居心地は悪くなかったけど、緊張感はありましたから。

―ロス・インゴは緊張感がありますよね。

みんな独特ですからね。俺なんて(高橋)ヒロムさんと喋ったのってトータルで10分くらいですよ。内藤さんとも普段は全く喋らないですし。喋っていたのは、BUSHIと鷹木(信悟)さんだけです。

―そうだったんですね。そういう意味では馴れ合いはなかった。

それがよかったなと思っています。でも、逆にロス・インゴは俺が今いなくて居心地がいいんじゃないですか? だから緊張感がないと落ちていくよとアドバイスしたいです。余計なお世話だと言われると思うけど(笑)。

―では、Just 5 Guysのメンバーとも程よい距離感をとりつつやっていく?

そうですね。でも自分以外の4人はすごく仲がいいですから。ずっと鈴木軍でやってきたメンバーですし、だからこそ自分がその色を払拭しないといけないなと思っています。そのイメージを脱却できれば、ユニットとしてもっと上に行けると思うので。

―新たなユニットへの加入の他に、新技「デッドフォール」の存在も大きいのかなと思います。SANADA選手が頭から落とす技の封印を解いたことも含めて非常に語りがいのある技だなと思うんですが、あの技に行き着いた経緯、頭から落とす技に行き着いた気持ちはどういうものだったんですか?

ここ近年、固定概念を全て捨てたくなったんです。じゃあ、あえて頭から落としてみようかなと思った。「頭からは落とさない」という固定概念があったから上にいけなかったのかなと。そのこだわりすら捨てて、こだわりより新しいことに挑戦してみたい、前に進み続ける何かを持っていたいという気持ちの方が強くなってしまったのがキッカケです。

―そのこだわりから解脱したことで一気に物事が動いた。

そうですね。あと、「デッドフォール」とハイスタの難波(章浩)さんに命名していただいたことで、技に魂が入った感じがしますし、重みも増したなと。

―なるほど。技の入り方とかも含めて絶妙だなと思っていて。頭から落とすとは言え、下品な落とし方ではないし、品があるんですよね。

確かに雑な感じはないですよね。

―芸術点が高いというか。その辺りもきっとこだわられたのかなと。

自分の中でイメージしたのは、誰にでもかけられる技にしたいなと思ったんです。たとえ200kgの人にでもかけられる技。きっとそこに繋がってるんじゃないですかね、雑じゃない感じは。

―フィニッシャーとして頭から落とす技が増えて、SANADA選手の全体のプロレス観みたいなものって変わった部分はありますか?

自分は根本的にはそんなに変わってないんですが、これをやったことによって周りはどう思ったのかなと気になっています。

―核となる部分は変わってないと思います。

基本は、全て新しければいいという発想ではないので。古き良きことがありながら新しいことにチャレンジした結果が「デッドフォール」なので。


Photo by Mitsuru Nishimura

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