Borisと明日の叙景が語る、連帯関係と届けること、Merzbowとの交流

国内シーンの繋がり、流動的な連帯関係

ー『New Album』(初出は2011年)とか、特に物議を醸したあのあたりの作品はどうでしたか。



Takeshi ドン引きだよね。

一同 (笑)

Atsuo まあまあまあ。でも、すごくそれを気に入ってくれる人も。

Takeshi そう!新しいファンもできたし。

ー今までのファン層と違うところに刺さる感じだとは思いますね。

Atsuo でも、僕らとしては全然変わってないんですよ。成田忍さんのプリプロダクションで初期ヴィジュアル〜J-ROCK的な音像にしてくださったので、いろんな人に聴いてもらえたけど、基本的には変わってないし。

Takeshi 全然違うジャンルのリスナーの人が聴いてくれたり。

Atsuo あのアルバムに入ってる「Luna」も、あの当時でもうポストブラックメタルだね、という感想をこのあいだ聞いたりもして、

ーそうですね。直接的な関わりがあるかはともかくとして、COALTAR OF THE DEEPERSあたりを介して明日の叙景にも繋がる……。

Takeshi 「Luna」とか、(曲が最初にできたのは)2009年頃だからね。だからもう、15年近く前(笑)。

Atsuo 明日の叙景と一緒にやって、僕らもこういうことやってたな、というのを急に思い出したんだった。



ー叙景も、特に等力さんはDEEPERSから相当影響を受けてますよね。

等力 はい。DEEPERSは大好きですね。

Atsuo ナッキーさん(NARASAKI)も、『New Album』のプロデューサーの成田さんの、極端にいうとお弟子さんみたいなもので。僕もそうなんだけど、成田さんに師事してて。ナッキーさんもURBAN DANCE(成田忍がメンバーとして在籍)大好きで。で、等力くんがDEEPERSに影響受けてたりとか。Takeshiもナッキーさんにすごい影響受けてるし。

Takeshi Atsuoにパクリって言われたからね。

一同 (笑)。

Atsuo DEEPERSの曲聴いてて「これ同じじゃん」「同じフレーズ使ってるじゃん」って。

Takeshi いやいやいやいや(笑)。

Atsuo まあまあまあ。なんか、繋がってるよね。で、等力くんもアイドル(SAKA-SAMAやRAY)に楽曲提供してるし。ナッキーさんみたいに。それで、BorisもSAKA-SAMAのバックバンドやって、それがTRASH UP!!からリリースされたりとか。ほんと、音楽って繋がってるよね。

Takeshi 『New Album』のジャケットと『アイランド』のジャケットも、顔がバーンと出てるのがなんか近いなと俺は勝手に思ってたり(笑)。最初にも言ったけど、短い期間で両者の距離感がブワーって繋がってく感じがありましたね。

ーなんというか、伝統的なメタルの文脈からしたら全部逸れてるんですけど、その周縁のところではたくさん繋がっている感じもあって。それが最近、多くの音楽ファンに自然に注目されるようになってきた印象があります。それはヴィジュアル系とかもですね。日本のメタル的な音の流れとしては非常に重要なんだけど、コアなHR/HMファンからすれば軟弱と見なされていた期間も長かった。

Atsuo みんなは世代的に通ってるんでしょ?

等力 僕はまったく通ってないんですよ。

布 他のメンバー3人はヴィジュアル系大好きで、等力だけは通ってなくて。

等力 DEEPERSのNARASAKIさん経由でそういうエッセンスは取り入れてるけれども。

Atsuo さっき「軟弱」という言葉が出たけど、バンドマンとかミュージシャンからしたら、ヴィジュアル系っていう言葉は、当時はやっぱりアンチにならざるを得なかった背景があって。音楽やってるのになんで一番前面に「ヴィジュアル」が来るんだっていう。なので、アンチ・ヴィジュアルって人はやっぱり多かったんですね。でも、原体験としてヴィジュアル系を通ってきたミュージシャンがどんどん増えてきて、ENDONとかあの年代以降の人たちは公言しだすんだよね。影響元としてヴィジュアル系があるって。そこに世代としての線があるよね。上の世代として僕らはわりと柔軟だったかも。

ーそうですね。2014年頃のBorisインタビューで、ヴィジュアル系を好きと言える世代が30歳あたりで線引きされてしまう、と仰っていたのがすごく印象に残っています。

Atsuo 僕はトランスレコーズ(YBO2やZ.O.A、ASYLUMなど)の影響がすごく大きくて。ヴィジュアルでもない、ハードコアでもない、その間の人たちがすごい好きだったので。

Takeshi 今は無いよね。あの独特な感じ。

Atsuo ないね。MORRIEさんや清春さんが作ってきた美学を僕が共有できたのも、そのあたりが大きいかも。そういう点では、周りとの音楽的な美意識や価値観は違ったかもしれない。


Boris(Photo by @vvvydmy)

ーそういう、シーンが立ち上がるとき特有の何でもありな気風を受け継いでいるのがBorisなのだと思いますし、今の若い世代にはそういうスタンスを持っている人が増えているように感じます。明日の叙景もそうですよね。だから、DEEPERSとの共演なども……。


Atsuo 3バンドでやりたいよね。

等力 機会があればぜひ!

布 そうですね。私たちもこうやって縁を繋いでもらって広まりましたけど、自分たちも自分たちで、横でも縦でもどっちでもいいんですけど、どのバンドやどのアーティストと繋がっていけるのか、っていうのは考えていきたいなと感じましたね。国内でワンマンやった後は「自分たちだけのイベントって最高!」という気持ちになってしまってたんですけど、Borisとのツアーに同行することで、共演することの意味とか、心強さ、得られることの多さに気付きました。

等力 「みんなでやっていき」になったよね。

Atsuo 「シーン」とまでは言えないんだけどね。美意識をシェアできる仲間同士みたいなのがいたほうが心強いからね。

布 逆に、「シーン」みたいに括らないけど流動的に動いていって、こまめに混じり合えるよっていう、そういうのがすごい快適で居心地がいいと思いましたね。

ーかなり良いところに着地しましたね。

一同 (笑)

Takeshi 僕らバンド同士だから、今こういうふうに話して共有できてる部分もあるんだけど、外から見る人ってわからないじゃないですか。でも「なんでこの人たち一緒にやってるの」って調べたりするところで文脈や関係性が繋がってったり。それぞれの過去のインタビュー読んだりしてね。今は情報が拡散して飽和状態でもあるけど、その一方でいくらでも掘っていけるし、辿り着く手段もあるから。そういうのは、僕らがバンドを始めた頃と状況が変わってきてて、むしろ良いのかなとも思いますね。

ーそれはもう、Borisが切り拓いてくださった面も多いと思いますよ。

Atsuo いえいえ、書き手の人たちにも頑張ってもらわないと。流れちゃうじゃん。調べようと思ったら調べられるんだけど、どんどん流れちゃう。

Takeshi そう。流れちゃうから、ピン留めしてください(笑)

布 大量生産、大量消費の時代になっちゃってるじゃないですか。一昔前も今も。情報もそうですよね。

Atsuo 俺らイントロ1分とかあるからな〜。この間クリエイティブマンさんに提供したティーザーがさ、リフ2回で終わっちゃった(笑)

一同 (爆笑)。

Atsuo リフ2回で1分。

ーただ、ファスト動画とかギターソロ不要論みたいなのも本当はどうだろうという話もあって。ギターソロを抜き出してTikTokで使うこともできますからね。

等力 全くもってそうですね。

Atsuo 俺らも、Rate Your Musicってところで取り上げられたりもするじゃない。あれ、俺はけっこう距離を置いてる。反応が玉石混交だし。

ーそれもそうですし、リリース前から点数つけているものも多いですからね。高得点も、低得点も。

等力 めちゃめちゃな人も。

Atsuo あ、そうなんだ。ちょっとあれは静観してる。リツイートしない(笑)。

等力 でも、自分たちはプロモーションの一環でゴリゴリに使ってますね(笑)。

ーただ、ああいったところは、いわゆる音楽ファンの人たちに対するある種の世論形成の一助になっている面もありますね。

等力 はい。すごく足掛かりにはなるので。ありがたい限りですね。

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