教会連続放火事件とブラックメタルの「過激思想」

ノルウェーのブラックメタル・バンド、Burzumの創始者であるヴァルグ・ヴィーケネス。1998年、収監されていた刑務所の監房にて。(Photo by Mick Hutson/Redferns/Getty Images)

アメリカ時間11日夜、ルイジアナ州セントランドリー郡で起きた教会の連続放火事件に関与した疑いで、ルイジアナ保安官代理の息子ホールデン・マシューズ(21歳)が逮捕された。マシューズは宗教的建造物に対する3件の放火で起訴され、1件につき最大15年の禁固刑が求刑される見込みだ。

警察は動機について明らかにしていないが、火災は3件とも歴史ある黒人教会で発生していることから、全米黒人地位向上委員会(NAACP)は今週初めにヘイト・クライム(憎悪犯罪)として位置づけた。マシューズのFacebookページにも動機と思われる手がかりがいくつか見つかった。

ニュースサイトのDaily Beastによると、彼はブラックメタルのミュージシャンを目指しており、ブラックメタルや反宗教的なページをいくつも閲覧していたらしい。記者会見でルイジアナのブッチ・ブラウニング消防局長は、マシューズがブラックメタルのコミュニティと「関係」があり、教会の火災にも「関与」していたと断定した。

誤解のないように言うと、マシューズの音楽の好み自体が必ずしも彼の政治的傾向を示唆していたわけではない。ブラックメタルのコミュニティの中には、白人系ヨーロッパの反宗教的な考え方をイデオロギーに取り入れたナショナル・ソーシャリスト・ブラックメタルと呼ばれる一派もいるが、「あれはブラックメタル・コミュニティの一部にすぎません。コミュニティの全体像を示すものではありません」と、極右過激派やヘイト・クライム、反政府勢力などの監視をおこなっている南部貧困法律センターのアナリスト、キーガン・ヘンケス氏は言う。

たしかに、マシューズがコメントを残したページの大半は、人種差別的あるいは反ユダヤ的な表現を積極的に禁止している。

にもかかわらず、ブラックメタル・コミュニティと過激派の思想には重なる部分もある。マシューズがノルウェーのブラックメタル・ミュージシャン、ヴァーグ・ヴィーケネスに関する動画にコメントしていることも、ひとつの証拠だ。ヴィーケネスはノルウェーのブラックメタル・コミュニティとネオナチ活動の両方でリーダー格と見られている。ノルウェーのブラックメタルバンドMayhemの元ベーシストだった彼は、「ブラックサークル」と呼ばれるブラックメタル仲間とともにノルウェーの教会に火をつけたと自慢げに語っていた。理由については、キリスト教に対して「復讐」したかったから、またノルウェーを本来の無宗教の状態に戻したかったからだと語った。彼は放火罪と合わせて、1993年に契約上のトラブルでMayhemのメンバーであるユーロニムスを刺殺した罪で15年の刑に服した。

ヴィーケネスに関しては、ブラックメタル・ファンの間でも賛否両論はっきり分かれる。大勢が彼を非難し、大っぴらに否定するのに対し、彼を支持する者もいる。「極端に崇拝するものもいます。彼はブラックメタル・シーンでは非常に影響力のあるバンドに在籍していましたから、ブラックメタルのファンで彼が何者か知らない人はほとんどいないでしょう」とヘンケス氏。もっとも彼はネオナチだという主張を否定しているが、刑務所で立ち上げた彼のブログには、ネオナチ的な思想への支持や、イスラム教徒やユダヤ人に対する暴言なども見受けられる(ローリングストーン誌はメールでコメントを求めたが、ヴィーケネスはコメントを控えた)。

Translated by Akiko Kato

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