浅川マキLIVE伝説――プロデューサー寺本幸司が語る「歌は死なない」の意味



流れているのは、この番組のテーマ竹内まりやさんの「静かな伝説」です。

寺本さんは1938年生まれですね。今84歳、今年の8月で85歳です。年々自分より年上の方というのが少なくなってくるわけですが、寺本さんは、そういう中でも最も先輩で、そして精力的に活動されてる1人と言っていいでしょうね。

浅川マキさんを歌う伊香桃子さんのライブのプロデュースも彼がしています。伊香桃子さんは出身が神戸なんです。阪神大震災のときに自宅が全壊する体験もしてるんですね。マキさんの命日が1月17日、阪神大震災と同じ日だった。25歳の時、伊香さんはマキさんのライブのオープニングが決まった。その知らせをもらった翌日にマキさんが亡くなってしまった。それがやはり阪神大震災と同じ1月17日だった。これもやっぱり縁と言っていいんでしょうね。

ボックスの寺本さんの私的ライナーの中には、それぞれのライブの縁がつづられてます。いろんな方たちが登場してます。そして登場された方のほとんどが、もうこの世にいらっしゃらない。でもそういう人たちが残した音というのが、こうやってボックスになって、マキさんを知らない「アングラの女王」という言葉も聞いたことがない。でも今の世の中が眩しくて、うまく生きられない人たちに届いてるのが、歌は死なないということでもあるんだろうと思います。音楽は人の手によって伝わっていきます。寺本さん、84歳のプロデューサーの伝言が、このボックスセットなんではないかと思ったりしました。



<INFORMATION>

田家秀樹
1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソリナリテイとして活躍中。
https://takehideki.jimdo.com
https://takehideki.exblog.jp

Rolling Stone Japan 編集部

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