中嶋ユキノ、人生を乗せた歌を観客と大合唱した「アコ旅」ツアーファイナル

その後も、3月19日のツアー初日・仙台公演を皮切りに福岡、札幌、大阪、愛知、富山、広島、岡山と日本中を旅して、ともに成長してきた新旧ナンバーを多種多様なサウンドアプローチで披露。また、例えば「All or Nothing」の「認めたくなんか これっぽちもないけど 心のどこかで いいね!をつけてしまう」「不安ばかり いつもかき集めて それでも お腹は空いてしまうし 寝たら半分くらい 忘れちゃうけど」など彼女の日常のリアル、人柄が滲み出た共感性の高いフレーズたちがハートフルな一体感を生み出していった──と思えば、Fairlife(浜田省吾・春嵐・水谷公生のプロジェクト)のカバー「虹」における「愛しい人と共に新しく 生きてね」や、同じく切ないバラード「誰かにそっと」における「誰か」が最後の最後に「あなた」というフレーズに変わるくだりでは、涙を誘うほどの世界観で観客を釘付けにする。

音でも歌でも言葉でも聴き手の心を揺さぶり続けるライブ。後半ではフィジカルでも音楽を楽しんでもらうべく「皆さん、このツアーから声出しが解禁ということで……皆さんのお声を聴かせて頂きたいなと思います」と全国各地から集まったファンのみんなと会話しながら、NHK『みんなのうた』から生まれた「クラリネットこわしちゃった」「ちいさい秋みつけた」「山口さんちのツトム君」「コンピューターおばあちゃん」「だんご3兄弟」と歴代の名曲をワンフレーズずつ歌っていく。そして、自らの『みんなのうた』に選ばれた1曲「ギターケースの中の僕」を届けると、共に口ずさむ人の姿も。ちなみに、今の彼女の新しい夢はこの曲を「合唱曲として男女混合で歌えるような譜面を自分で書いて、音楽の教科書に載せて頂いて学生の皆さんに歌ってもらう」こと。そして、ライブでもみんなと合唱することだそうだ。


©︎Road & Sky

そんな新たな夢への大きな一歩となるワンシーンのあとは、実は同じく『みんなのうた』のために書き下ろすも選ばれず、それでも「いつか本当の意味でみんなのうたになればいいな」と思って歌い続けている「お・ふくろうママの歌」を。さらには、武道館の近くでバイトしていた小料理屋で、そこのママさんがお客さんに聴かせるべく「有線にリクエストしなさい」と言って流させてくれたという、しかしお客さんは酔っぱらって聴いてくれず、悔しくてバイト帰りに武道館の前で「いつか必ずこの武道館で」と思いながらアカペラで歌っていたという「桜ひとひら」を情感たっぷりに届けていく。自らの人生を歌に乗せながら夢へ立ち向かう中嶋ユキノらしい一幕。

Rolling Stone Japan 編集部

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