音楽評論家・田家秀樹が毎月一つのテーマを設定し毎週放送されてきた「J-POP LEGEND FORUM」が10年目を迎えた2023年4月、「J-POP LEGEND CAFE」として生まれ変わりリスタート。1カ月1特集という従来のスタイルに捕らわれず、自由な特集形式で表舞台だけでなく舞台裏や市井の存在までさまざまな日本の音楽界の伝説的な存在に迫っていく。2023年4月前半2週は、5月に公開される映画『浜田省吾 A PLACE IN THE SUN at 渚園 Summer of 1988』をクローズアップ。1週目は同映画の監督・板屋宏幸を迎え、本作の撮影秘話や当時のライブの様子に迫る。
関連記事:浜田省吾、2000年代以降の作品とライブ音源を水谷公生と振り返る田家:こんばんは。先週まで「J-POP LEGEND FORUM」の案内人だった田家秀樹です。今週から少し肩書きというんでしょうかね変わります。「J-POP LEGEND CAFE」マスター、喫茶店の親父です。
2014年4月から始まった「J-POP LEGEND FORUM」は先週でひとまずピリオドを打ちまして、今週から「J-POP LEGEND CAFE」として新装開店しました。何が変わるかというと、ほとんど変わりませんね。建物は変わりました。フォーラムからカフェ。フォーラムっていうと立派な建物を連想される方も多いでしょうが、街の片隅にあるカフェということでお送りしようと思います。
「LEGEND FORUM」のときは1カ月1テーマっていうスタイルを踏襲してたんですが、いろんなテーマを取り上げられる形になりました。ときには前と同じように1カ月1テーマというときもあれば、毎週毎週違うテーマという月も出てきます。新装開店の今週と来週は今流れている浜田省吾さんの特集です。5月5日から3週間限定公開される映画があるんですね。『A PLACE IN THE SUN at 渚園 Summer of 1988』。この映画についての特集です。
1988年8月20日、静岡の渚園に約5万5000人を集めた野外イベントが35年経って映画館で公開されることになりました。この映画のオープニングで流れるのが今お聞きいただいてる「A PLACE IN THE SUN」アカペラバージョンなんですね。オリジナルは1966年のスティーヴィ・ワンダーのヒット曲。お聞きいただいてるのは96年に発売になった浜田さんのコンピレーションアルバム『ROAD OUT "TRACKS"』のバージョン。バンドですね。でも、ライブではアカペラのオープニングでした。
今週と来週、それぞれにゲストをお招きしてます。「J-POP LEGEND CAFE」最初のお客様、映画『A PLACE IN THE SUN at 渚園 Summer of 1988』の監督、映像作家の板屋宏幸さんです。レベッカとかユニコーンとかポルノグラフィティとかいろんな人の映像も手がけてきた人で、浜田省吾さんとは86年のMV「二人の夏」からほとんど浜田さんの映像を撮っているという方です。35年経っての映画は彼なくしてはありませんでした。こんばんは。
板屋:こんばんは。板屋宏幸です。開店おめでとうございます。
田家:ありがとうございます。第1号のお客様ですもんね。
板屋:すごい光栄です。
田家:いきなりビール持ってこいって言われるかと思いましたけど。
板屋:きっとフォーラムじゃなくてカフェだからあるかもしれないなとは思っておりますよ。
田家:ありますよ。でも今日はコーヒーで(笑)。映画の公開が近くなってるわけですがどんな心境ですか。
板屋:後でちょっとお話できるかもしんないですけど、構想8年、制作から5年だったので、ようやく皆さんに見てもらえる日が来るんだなと思うと本当に感慨深いですね。
田家:今日は88年8月20日当日のこととか、今言われた映画公開に至る経緯、苦労話をお聞きしていこうと思うんですが、渚園で、今お聞きいただいた「A PLACE IN THE SUN」アカペラバージョンが流れたとき、どんなふうに思われてましたか?
板屋:当日全く覚えてないんですよ。実は、渚園は何一つ覚えてないんです。もちろん浮かぶ風景はあります。だけどそれはほぼライブではないんですよ。前の日に旅館の大広間でスッゴイ布団をひいて、クルーとみんなで寝たなっていうときの布団とか蛍光灯の感じとか、そういうのは覚えてるんです。ライブ中はいわゆるフィルムチェンジ表とかですね。
田家:その話はこれからゆっくり。なぜ覚えてないかというのが明かされていきます。