浜田省吾、5万5千人を集めた88年渚園野外イベントがいま映画化した奇跡の背景



田家:1984年のアルバム『DOWN BY THE MAINSTREET』の中の「MONEY」。さっきの「HELLO ROCK & ROLL CITY」にしても「MONEY」にしても、ライブの定番曲に入るわけでしょ。で、板屋さんはそれらの曲を一番たくさん映像に残している人だと思うんです。改めて渚園の中の「MONEY」映像をご覧になってどんなふうに思われました?

板屋:僕が浜田さんの撮影に携わらせていただいて、多分2回目の撮影になると思うんですけど、さっきもう言いましたけど全くもう覚えてなくて。この「MONEY」の頃には撮影の現場がカオス状態になってて。ステージから漏れてくる照明にちょっと照らされたストップウォッチ4個と曲順表とカメラのロールチェンジ表とどんどんずれてくるわけですよ。トラブルがあると、そのたびに計算し直すんですよね。例えば「3カメ、トラブル」みたいなことがインカムに入ってくるんです。当然モニターもないので、事前に打ち合わせをして撮ってるんですけど、そういうのが「MONEY」ぐらいでもうカオスになって。

田家:ライブが始まったばっかりって言っていいぐらいですけど。

板屋:いや、もうなってましたね。ストップウォッチで計算し直して止めてからまた回すんじゃなくて、1回フィルムを出して、それをまた缶に入れて3分ぐらい残ってるのをもう1回使い回したりするみたいな。モニターがないから絵は見れない。収録してる曲はROAD&SKYの岩熊信彦さんさんに事前に決めてもらってるんですけど、何で渚園の思い出がないかっていうと収録してない曲は各カメラのとこにダッシュして走ってるんですよ。状況はどうなってるのかとか確認してるんで、まともに見た思い出は全くないですよね。

田家:なるほどね。フィルムの終わっちゃうっていうそれぞれの状況がうまくかみ合わなくて、撮れなかったかもしれないって曲があったりするわけでしょう。

板屋:2曲あるんですけど、これ映画を見ていただくと楽しめると思うんですけど、1曲目は「DADDY’S TOWN」という曲で、浜田さんが下手の花道に行くんですけれども1台しか回ってなかったんですね。多分もうカオスになってるんでしょうね。回ってるか回ってないかもわかんなくて、1台だけ回ってたんでかろうじて繋がってるという。

田家:もう回ってることを祈るしかないっていう。

板屋:そうですよ。大体みんなトラブルとかフィルムチェンジとかで、また?みたいなのが入ってくるじゃないですか。もう浜田さんは下手に行って歌ってて。でも、あそこには誰かのカメラが行っているのか分からないという状態になるんですよ。ハンディのカメラだったんでインカムはつけてないから視認みたいなもんです。

田家:連絡も取れないんだ。

板屋:連絡取れないです。各カメラにはインカムがありますけど、ハンディカメラが走っていってるんで、撮っててくれてすごい助かったんですけど、だから撮影が終わった後は充実感とか達成感って全くなくて、疲労感と不安感しかなかったですね。

Rolling Stone Japan 編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE