fewsが語る再出発の合図、手のひらを返されても人間が大好きな理由

ー今回1stミニアルバム『re:cue(リキュー)』が5月10日(水)にリリースされるということで、このタイトルはどういったところから付けたんですか?

長谷川:「合図を送る」という意味のcueと「繰り返す」という意味の接頭辞、reを組み合わせた言葉にしようと思ったんです。僕らは前身バンドの解散きっかけに熱いファンの方々からものすごく心苦しい言葉を受けるようになってしまったんですよ。その中でもめっちゃ腹立つ書き込みは全部スクショしていて。あと僕はアンチコメントほど絶対いいね押しちゃうんです(笑)。僕はそういう性格だから人間が大好きなんですよ。自分に興味を持ってくれる人に興味を持ってしまうタイプ。だからあまり人に裏切られる経験がなかったんです。けど今回バッシングを受けて、久しぶりに人に手のひらを返されることの悔しさや悲しさを痛感しました。次に自分が新しいことを始めるってなったらファンの方たちは付いて来てくれるだろうと勝手に思っていたので、それは自分の慢心だったし押し付けだったと反省する部分もありました。もう一回ここから頑張るから見つけて欲しいっていう僕たちからの合図。あとこれからまた僕らを応援してくれる人と出会い直したい、繋ぎ直したいって思いから僕らがそういう人たちからの合図をキャッチしたいなとも思って。そういった意味で信号的な言葉にしたかったんですよね。これは僕らにとって初めての合図ではなく、おそらく最後のバンドになるだろうと思ったので『re:cue』というタイトルにしました。



ーメンバーの皆さんそれぞれに今作に収録されている6曲の中で特に思い入れがある楽曲をお聞きしたいです。

鮎京:僕は4曲目の「ゴッホと徒花」という曲が好きですね。弾いていて楽しい感情が乗る、エモくなれる曲なんですよね。1曲通してプレイしていて自分の中で起伏を作れるって意味でもお気に入りの曲です。この曲はリードギターをサポートの方に入れてもらった時に大化けしたんですよ。デモでリードギターのフレーズを聴いた時鳥肌が立ちましたね。

ーこの曲はゴッホの生き方、生き様みたいな部分を歌詞で表現しているんですか?

長谷川:僕はゴッホの人となりを知っているわけではないんですけど、当時の芸術家の人たちって亡くなってからその作品が有名になることが多かったじゃないですか。僕はゴッホみたいに別に賞賛されなくても曲さえ書ければいい、筆さえ描ければいいっていう生き方が羨ましかったんです。僕は器用貧乏で音楽以外にもやりたいことが沢山あるので、多分1日中スタジオに閉じ込められたら具合が悪くなってしまう。もしそういう生き方だとしたらどんな言葉になるのだろうと想像しながら詞を書きました。その人の生涯で花が咲かずとも、作品はそれを愛してくれた人々の手によって生き続けていき、その先で必ず花開くみたいな意味を込めてこのタイトルにしました。でも僕は拍手が欲しいです(笑)。なんで自分とは真逆のことを書けばいいんで簡単でした。けどこういう歌詞を書けたことで、自分の中のアーティスト精神は死んでいないんだって確かめることができましたね。

藤井:僕は「水槽」という曲が好きですね。この曲はだいぶ初期の段階でデモが出来ていたので、何回も聴いてきたから思い入れがあるっていうのも1つあるんですけど。歌詞の内容やそのストーリー性から感じる物寂しさがすごく好きですね。今回のアルバムのコンセプトに1番近い、核となるような曲なのかなとも思います。あと演奏に関してこの曲ではシンセベースを弾いているんですよ。前から1曲丸々シンセベースを弾き切ってみたいとは思っていて今回はその挑戦で。結果シンセベースが曲の雰囲気に合っていてフレーズとしても良いものが出てきたので、僕にとって自信に繋がったなと思いますね。

長谷川:実はこの曲のデモが出来たからバンドやろうと思ったと言っても過言じゃないくらい、この曲には自信があったんですよ。だから和也くんが「この曲やろうか」って言ってくれた時はすごく嬉しくて。今のシーンで流行りのラブソングっぽく聴こえるチルい曲を意識しつつ、僕のイメージでこの曲はメンバーをバンドに誘う時の心情を書いたつもりなんです。恋愛に限った話じゃなく、気になる人に自分からアクションしたいけどそれができない時ってそんな自分がすごく矮小に思えたりする。送信のボタンをただ押すだけなのにそれが出来ない携帯の中の自分、でっかいお月さんですら新宿のビルの中に閉じ込めてしまえば全然触れそうだなと思う自分。そういう矮小さと広大さを比較した時の屈折具合をこの曲で描きたかったんですよね。

ーまるで水槽の中にいて息ができないようなもどかしさ、苦しさというような印象を受けました。

長谷川:リスタートの時に味わった、モヤモヤ、しんどさ、愛憎とは表裏一体なんだって思い知らされた経験は おそらくトラウマとして残って簡単には消えないだろうと思いますね。でもそこに対して曲を書けるってことは、1つ表現者としてラッキーな経験ではありました。

Rolling Stone Japan 編集部

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