サンプリングに見られる音楽性の変化また、「Can’t Go」ではホール&オーツの「I Can't Go for That (No Can Do)」、先述の「Insane」ではエムトゥーメイの「Juicy Fruit」と、それぞれ80年代を象徴するヒット曲がサンプリングされているのも興味深い。
グラスパーもカマシもヒップホップ的な感性を備えてはいるが、サンプリングを用いるのではなく、敢えて人力で同じような効果が得られるサウンドを構築してきた。グラスパーは『Black Radio 2』(2014年)のライナーノーツに「プログラミングは使っておらず、すべて生演奏で行われている」とわざわざ明記するほど、生演奏へのこだわりを見せてきたはずだった。ところが最近では、『Black Radio 3』(2022年)にプログラミングで作ったハウストラック「Everybody Love」を収録。ディナー・パーティーでも前作の時点でドラマーを起用せずに自らビートを組み、『Enigmatic Society』ではサンプリングまで使うようになった。この流れはグラスパーの音楽性における面白い変化の兆候かもしれない。
その一方で、前作と比較すると少し複雑なビートが入り込む部分もあれば、「Watts Renaissance」「The Lower East Side」のような生演奏を活かしたインストの曲があったりもして、聴けば聴くほど変化が見えてくるアルバムでもある。
だからこそ、コーチェラ出演時のバンドセットでのパフォーマンスでは、グラスパー/カマシ/テラスの3人だけでなく、ジャスティン・タイソン(Dr)やバーニス・トラヴィス(Ba)の演奏にも自由に表現できる余地がかなりあって、ニューアルバムの作風がライブの方向性にも反映されてるのは明らかだった。そういう意味でもやはり変化のあるアルバムだと思うし、その真価を確かめるためにも秩父でのパフォーマンスは必見だろう。
ディナー・パーティー
『Enigmatic Society』再生・購入:
https://dinnerparty.lnk.to/enigmaticsociety『LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL JAPAN 2023』日程:2023年5月13日(土)、5月14日(日)12:00開場 / 13:00開演(予定)会場:埼玉県・秩父ミューズパーク出演5月13日(土)【THEATRE STAGE】GEORGE CLINTON & PARLIAMENT FUNKADELIC with Special Surprise Guest/DOMi & JD BECK/AI, bird, 家入レオ with SOIL&"PIMP"SESSIONS/Answer to Remember with HIMI, Jua【GREEN STAGE】ALI/海野雅威 with Special Guest 藤原さくら/4 Aces with kiki vivi lily/OPENING ACT : MoMo【DJ TENT】荒田洸(WONK)/SHACHO(SOIL&"PIMP"SESSIONS)/柳樂光隆(Jazz The New Chapter)/Chloé Juliette5月14日(日)【THEATRE STAGE】DINNER PARTY FEATURING TERRACE MARTIN, ROBERT GLASPER, KAMASI WASHINGTON/SKY-HI & BMSG POSSE(ShowMinorSavage - Aile The Shota, MANATO&SOTA from BE:FIRST/REIKO) with SOIL&"PIMP"SESSIONS/Blue Lab Beats featuring 黒田卓也, 西口明宏 with 鈴木真海子(Chelmico) , ARIWA(ASOUND)/Penthouse with 馬場智章【GREEN STAGE】Kroi/BREIMEN/馬場智章/OPENING ACT : soraya【DJ TENT】荒田洸(WONK)/SHACHO(SOIL&"PIMP"SESSIONS)/柳樂光隆(Jazz The New Chapter)/Chloé Juliette※モノンクルは出演キャンセル。これに伴うチケットの払戻は行わない。公式サイト:https://lovesupremefestival.jp