Black Country, New Roadが語る、「永遠の友情」がバンドにもたらす絶大な力

ブラック・カントリー・ニュー・ロード(Photo by Masato Yokoyama)

 
2023年4月に行われた初の単独ジャパン・ツアーを大成功に収めた、ブラック・カントリー・ニュー・ロード(Black Country, New Road)。2022年2月にフロント・パーソンだったアイザック・ウッドが脱退して以降、果敢にも残された6人で活動を続けてきたかれらは、3月にツアーやフェス出演の際に演奏してきた新曲群を集めた、ライブ盤『Live at Bush Hall』をリリースした。

前身バンドも含めると約10年以上もの月日を共に過ごしてきた、友人同士であるかれら。数々の逆境に見舞われなながらも“BC, NR friends forever”(BC,NRは永遠の友人同士)(「Up Song」)と今、高らかに歌い上げるブラック・カントリー・ニュー・ロードは「友情」のかけがえのなさとその絆の絶大なパワーを知っている。

今回は6人のメンバーのうち、メイ・カーショウ、チャーリー・ウェイン、ルーク・マークの3人に、バンド結成期の秘話やツアーで経験した奇妙な体験などについて語ってもらいつつ、「友情」がバンドにもたらす音楽的ポジティヴィティについて話を訊いた(編註:撮影は東京公演の当日、リハーサル終了後の渋谷Spotify O-EASTにて実施)。


左からルイス・エヴァンズ、ジョージア・エラリー、チャーリー・ウェイン★、タイラー・ハイド、ルーク・マーク★、メイ・カーショウ★(★:インタビュー参加、Photo by Masato Yokoyama)



「恐怖のバンド」から「永遠の友人」になるまで

ー今日は先日リリースされた『Live At Bush Hall』に関するストレートなインタビューというよりは、みなさんの考える「友情」や「青春」についてのお話が聞きたいんですよ。

チャーリー:へー、面白いね。いいね。

ーそもそもの話なんですけど、ブラック・カントリー・ニュー・ロードってバンドは「青春の産物」だと思います?

ルーク:最初の頃はたぶん、そうだったかもね。若さに満ち満ちていたから、思いつく限り一番過激なアイディアを掴み取って「みんなが話題にするような、ヤバいことやるぞ!」って感じではあった。でも、だんだん大人になってきて、どんどん普通になってきてる……かな(笑)?

メイ:そう?

ルーク:そうでもないか(笑)。でも、確実に大人にはなっていっているとは思うよ。陳腐に聞こえるかもしれないけど、音楽は年月を追うごとに成熟してきている……ってことを言いたかった。

メイ:人間も音楽も一緒に歳を重ねてるよね。

ルーク:そうそう。面白いアイディアを持っている、独創的な大人になりたいな、って最近は特に思う。人の海の中に消えていく没個性的な、つまらない人間ではなくて。そういうヤツになりたくないからこそ、僕らはバンドを続けているんだと思う。

チャーリー:いいね〜。これ以上ない答えじゃない?


Photo by Masato Yokoyama

ー前身バンド(Nervous Conditions)の結成が2015年だから、メンバーごとに差はあるにしても約10年ぐらい一緒にいるわけじゃないですか? 意地悪な質問しますけど、今でも、ちゃんと仲良しですか?

全員:(爆笑)。

チャーリー:毎年ちょっとずつ悪くなってる……(笑)。

メイ:そんなことないでしょ(笑)!

ー仲良いですね(笑)。メンバー同士が友達であることって、音楽にどんな影響を与えていると思いますか?

チャーリー:お互い憎しみ合っている関係性よりは、確実にポジティブだよね(笑)。実際、仲がいいからこそ、違う楽器同士であれこれ会話がしやすいっていうのはあると思う。バンドって役割ごとに色々グループ分けできるじゃん? その中で色々ちょこちょこ話すのが大切なんだよね。例えば、僕はタイラー(・ハイド)とかルークとよく話すし、メイとジョージア(・エラリー)とルイス(・エヴァンズ)は、また違うグループで……。

メイ:ルイスって、私たちのグループなの(笑)?

チャーリー:違うの(笑)?

メイ:まぁ、ルイスも入れとくか(笑)。そういう意味で言うと、私たちはピアノとヴァイオリンとサックスだから……ハーモニー担当だね、「ハーモニー・ギャング」。

ルーク:俺とチャーリーとタイラーは、「ザ・ロック・バンド」だ。

チャーリー:あとは、バンドの中で色々なクラブ活動をやってるから、それでも分けられるよね?

メイ:「Bukatsu(部活)」ね(笑)。

チャーリー:メイと僕はブック・クラブに入ってるし、ルイスとルークはボッカー・ボールのクラブに入ってて……。

ーあぁ、ナード(オタク系)とかジョック(体育会系)みたいなタイプ別でもバンド内で分けられるってことですか?

チャーリー:僕はジョックじゃないよ! やっぱり、ルイスとかじゃない? あと、メイもジョックの一員だと思う(笑)。

メイ:違うよ。ジョックは私じゃなくて、タイラーでしょ!

チャーリー:まぁ、確かにタイラーはそうだね。僕は明らかにナードだよ(笑)。

ルーク:ルイスは確かにジョックだな(笑)。

メイ:ルークは色々被ってる感じがするね。

ルーク:俺は自分ではナードだと思うけどな……。

チャーリー:ルークは、アレかも。みんなから好かれるナード。学校に一人はいるじゃん。

ルーク:でも俺はルイスと一緒の家に住んでたから、名誉ジョックってことでダメかな(笑)?


Photo by Masato Yokoyama


Photo by Masato Yokoyama


Photo by Masato Yokoyama

ー(笑)。ルークさんは、他のメンバーと違って、2019年に加入したじゃないですか? 最初に6人と会った時はどう思ったんですか?

ルーク:正直、めちゃくちゃ怖かった。当時、BC,NRは地元で恐れられてる存在だったんだよ。でも、音楽はカッコよかったし、最高のバンドだなとは思ってたから、加入できて嬉しかったのは覚えてるね。アイザックから急に電話がかかってきて「明日、ウチに来い。全部弾き方教えてやるから」って呼び出されて。30分ぐらいリハーサルしたんだけど、終わった後は一言「クールだな、今日はおしまい」って言われただけだった(笑)。

ー「怖い」って何がそんなに怖かったんですか? 

ルーク:なんだろうね……。とにかくずっと緊張が解けなかったんだよ。半年ぐらい経って、ようやくリラックスできるようになった。

チャーリー:でも、お互いのこと知らないわけじゃなかったじゃない?

ルーク:それぞれ個別に知り合いだったね。だから余計に……なんていうか、彼氏とか彼女の友達軍団と会ってるみたいな感じで嫌だったんだよなあ。自分と関係がある人たちなのに、その人たちはその人たちで、人間関係が出来上がってる。そういう状況が怖くて安心できなかったから、ずっとイラついてたんだよね。普通に演奏もできなかった。

チャーリー:あぁ、でもそれって……(メイの方を見る)。

メイ:私たちもバンド始めた時は同じように感じてたよね(笑)。全然喋れなかったし。

チャーリー:人生で一番恐ろしかった経験と言っても過言じゃないかも。BC,NRの前身バンドで、僕が初めてドラムを叩いてるライブの動画があるんだけど。「West Winch」って曲で、派手にミスっちゃったんだよ。その時の自分の表情がヤバくて。「うわぁ、僕はクビだ! 追い出される!」って顔してるんだ(笑)。その映像を観れば、僕が当時どれだけこのメンバーと演奏することにビビっていたかがわかると思う。



メイ:噂が一人歩きしてたからじゃない? 「固い友情で結ばれたグループ」みたいな……。私とかチャーリーも本当の初期メンバーではないから、ルークと同じように居心地悪く感じたのかも。

チャーリー:あと「あいつらはマジで変」「狂ってる」みたいな評判もあったじゃん。実際、今よりも確実にハードコアで、タフな空気があったし。

メイ:「これはかっこいい」「これは違う」みたいにやりたいこと・やりたくないことがハッキリしてたよね。

ルーク:傍目から見てても、カッコよかったんだよな。まぁ、俺が加入してからですよ、カッコよくなくなったのは……なんて(笑)。

チャーリー:そんなことないでしょ(笑)。

メイ:お互いのことをよく理解したから、そう思わなくなったんでしょ、きっと。

ルーク:まぁ、それはそうだ。一緒に時間を過ごして、大人になったからだね。

 
 
 
 

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