規格外の大型新人ブラック・カントリー・ニュー・ロード、ポストジャンル世代のバンド哲学を語る

ブラック・カントリー・ニュー・ロード(Photo by Maxwell Grainger)

2018年に結成。定評のあるライブはアルバム・デビュー前から完売が続き、「現在イギリスで最高のバンド」(MOJO誌)を始め異例のお墨付きと注目を集める話題の7人組ブラック・カントリー・ニュー・ロード(以下BC,NR)。シェイム、ブラック・ミディ、フォンテインズD.C.ら近年人気のギター・バンド同様、彼らの変則リズムや鋭角なギターにも音楽的支柱としてポスト・パンクのラディカルな実験精神が据わっている。

しかしサキソフォンやバイオリンを含む編成、民族音楽モチーフ、ポエトリー・リーディングに近い歌唱等の溶け込んだサウンドは、性急なロック・ソングではなく異なる質感がせめぎ化学反応が連鎖する、緩急に富んだ空間を編み上げていく。ピンと張り詰めた音世界はプログレ、ジャズ・フュージョン、前衛音楽とも通低するが、と同時に踊り出したくなるビートや印象的なリフ、ポップの快感も備えている。そんな高尚と軽佻のてらいのない交錯ぶりは最高にスリリングだ。

ずばり『For the first time』(初めて)と題されたアルバムは6曲入り約40分、ライブ・セットの流れをゆるく反映した作りになっている(2月8日付けのUK Midweek チャートにて初登場3位を記録)。今回バンドの成り立ちや本作に対する思いを語ってくれたルイス・エヴァンス(Sax)、タイラー・ハイド(Ba)、メイ・カーショウ(Key)の3人も屈託のない素直な受け答えが印象的で、自らの音楽の生んだ反響に興奮し驚いてもいる様が初々しい。何も世紀が変わったからと言って、暦に応じて新波が生じるわけではない。だがポスト・ジャンル世代を体現するカリスマとして、ニュー・タイプな感性の象徴として彼らの登場は必然だと思っている。BC,NRは音楽シーンの地図を刷新してくれるはずだ。


左からチャーリー・ウェイン(Dr)、タイラー・ハイド(Ba)、ルーク・マーク(Gt)、ルイス・エヴァンス(Sax)、ジョージア・エラリー(Vln)、アイザック・ウッド(Vo,Gt)、メイ・カーショウ(Key)


―現在イギリスはロックダウン中ですが、どうお過ごしでしょう? 暇を持て余し手持ち無沙汰?

タイラー:(苦笑)今日は取材があるからそうでもない。

ルイス&メイ:(笑)

―1stアルバムのリリースまであと3日ですが、今はどんな気分ですか? 待ち遠しい? それとも不安?

タイラー:やっと世に出てくれるんだなって、興奮してる。ほんと長かかったから。妙な気分でもあるけど、こうして出ることで次の課題に目を向け始めることもできるわけで、そこは最高。

ルイス:すごくどきどきしてる。待ち遠しいよ! だから今週は本当にエキサイティングな週だし……そう、「ここまで長くかかったなあ」って気がしている。

―昨年録り終えていたものの、COVID絡みで発売を待たされたかと思います。普通だったらアルバム発売に連動してツアーに出る頃でしょうが、現在はそれもままなりません。フラストレーションを感じていますか?

メイ:もう発売は何カ月か延期したし、とにかくここで発表してしまおうよと、みんなが思った。とてもライブ向きなアルバムだから、リリースに合わせてツアーに出られないのはすごく残念。ただ、私たちとしても、もうこれ以上じっと待つのはごめんだってところじゃないかと(笑)。

タイラー:特に今って、ギグがやれるのはいつか――というか、次のライブがいつになるやら知りようがない状況なわけで。だからアルバム向けにライブ/ツアーをやれる時機をひたすら待つことにしたら、それこそもう1年待つかもしれない。

メイ:だよね。

タイラー:それは誰だって避けたいところ。



―昨年末からの再ロックダウン以降、ここ1、2カ月はどんな風に過ごしていますか? 音楽を書いたり、生産的に時間を費やしている?

ルイス:ああ、すごく有意義に過ごしている。先週は良かったな、みんなで曲作りに取り組んで、2nd向けのマテリアルを書いて。そっちはほぼ出来上がりつつあって。

―えぇっ! もう2ndアルバムを?

ルイス:(笑)うん。

メイ:(笑)フフッ、そう!

ルイス:ほぼ書き上がっている。かなりの曲を書いたし、ほんと、このロックダウン期もとても良い状態だ。それに実にラッキーなことに、職業としてやっていれば(近隣での食料の買い出し、エクササイズ等の理由以外での)外出移動は認められるから、リハーサル・スタジオに入りたければ僕たちは集まれる。だから、ここのところグレイトだね。リハーサルもすごく良い感じで、一緒に過ごせて本当に楽しい。それにもちろん、また音楽を書けるのは最高だ。

タイラー:それもあるし、以前の自分たちは音楽的にあまり生産的ではなかった、というか。でもロックダウンのおかげで、私たちも本当に、とにかく少しチルアウトしてリラックスさせられる羽目になった。人間として、そして友人同士としての自分たちの面倒をちゃんと見て、自分の健康等々にもちゃんと気を遣わざるを得なくなった、みたいな? だから、そんなに物事を急くのはやめにしよう、と。というのも、ロックダウンに入る前までの私たちの状況は、ほんとに混沌としていたから。バンドにまつわるハイプはものすごく強烈だったし……もしもロックダウンが強制的にもたらした休止期間とそれに伴うセルフ・ケアの時期がなかったら、自分たちはスピードが速過ぎて衝突しバラバラになっていてもおかしくなかったと思う。どうなっていたことやら。

ルイス:たしかに。

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