Black Country, New Roadが語る、「永遠の友情」がバンドにもたらす絶大な力

 
「メリー・クリスマス、ウェルカム・トゥ・アメリカ」

ー人生の最後に死の床で思い出すような、バンド活動に関する思い出ってありますか?

チャーリー:死に際か……(笑)。正直いうと、いまだに自分たちの置かれている状況が信じられない。音楽を演奏するのが自分の仕事で、友達と一緒にそれをやれてるっていうのが。日本にいて、Rolling Stone Japanのインタビューを受けているだなんて……。

メイ:想像もしなかったよね。ちょっと出来過ぎ(笑)。

ルーク:思い出ねぇ。今、日本にいるから思い出しちゃうんだと思うんだけど、やっぱりフジロックでのライブは強烈に記憶に残ってるなあ。ステージ上で感じたあのフィーリングは凄かった。しかもさ、別に最高の演奏だったわけでもなかったじゃん(笑)?

メイ:全然だったね(笑)。あの日、あの場所にいたことが大事だったっていうか……。

ルーク:そうそう、雰囲気が最高だった。後は、2ndアルバム(『Ants From Up There』)をレコーディングした時のことかな。スタジオで「魔法みたいだな」って思ったのを覚えてるね。

チャーリー:「Bread Song」を演奏して、プレイバックを聴き直したときの「ワォ!」って感覚……ヤバい作品を作ったなって思った。

メイ:私はやっぱりルークと同じでフェスに出演した時のことが印象深いかな。フジロックもそうだし、地中海を目の前にしてライブした時もあったよね。大自然の中で友達と一緒に音楽を演奏するのって、すごく美しくてクレイジーな体験だと思うな。


Photo by Masato Yokoyama

ーじゃあ、ライブや楽曲制作以外でのクレイジーな思い出って何かあります?

メイ:めちゃくちゃあるよね。特に去年のアメリカ・ツアーでは色々あった(笑)。

チャーリー:ノース・キャロライナ(笑)。

ルーク:ノース・キャロライナ(爆笑)!

ーノース・キャロライナで一体何があったんですか?

ルーク:2022年の秋にブラック・ミディと一緒にアメリカ・ツアーをしてたんだよね。ノース・キャロライナ、アッシュヴィルにある「The Orange Peel」ってライブハウスで公演をしたんだけど、ライブの後にみんなで飲みに行ったんだ。

チャーリー:そうそう。

ルーク:最初は地元で人気のあるバーに行ったんだけど、待機列があまりにも長すぎて入れなくて。ツアー・マネージャーがドア・マンに「こいつら、バンドマンなんだよ」みたいな適当なことを言って、どうにかして入れてもらおうとしたんだけど、「知らねえよ、ダメなもんはダメだ」って普通に断られて(笑)。仕方ないから、別の「これぞ、アメリカ!」みたいな雰囲気のバーに行くことにしたんだ。

ー雲行きが怪しいですね。それからどうなったんですか?

ルーク:しばらくそこで飲んでたら、ツアー・スタッフの一人が「これからみんなで行けるパーティーを見つけたから、行ってみない?」って言ってきて。なんでパーティーにこれから行かなきゃいけないのか、全然意味はわかんなかったけど「面白そうじゃん!」ってことで、みんなでツアー・バンに乗り込んで、とりあえず行ってみることにしたんだよ。

チャーリー:謎だったよね(笑)。

ルーク:でも着いた場所は、市街地から離れたところにある、ただの一軒家で。周りには他に何もなくて、カバード・ポーチのついたその家だけが建ってるだけ。「は? なんだよ、これ? パーティーじゃないの?」ってなって(笑)。

チャーリー:でもスタッフが「ここで(パーティーを)やってるらしい」っていうから、恐る恐る中に入ってみたんだ。そしたら、外の陰気な感じとは裏腹に室内は異様な雰囲気で。ネオン・サインが家中に飾られてて煌々と光り輝いているし、なぜか箱いっぱいのコスチュームが玄関に置いてあって……。

ルーク:とりあえず、みんなでそのコスチュームを着て(笑)。家の中を見て回ることにしたんだ。いやぁ、変なパーティーだったよ。全然人がいなかったし。参加者の半分以上が俺らだった(笑)。

メイ:他の人たちは10人ぐらい? 私たちは15人で押しかけた(笑)。なんか、パーティーっていうか、展覧会みたいな感じだったよね? おもちゃとかぬいぐるみとかよくわからないアートが至る所に飾り付けてあって。「なんでこんなにお客さんがいないの……?」って思った(笑)。


チャーリーが撮影したパーティー(?)の様子

チャーリー:しかも、朝の5時半ぐらいに土砂降りの雨が降り出したんだよね。アメリカってどこに行くにも車で移動しなきゃいけないから。「どうやってモーテルまで帰ろう?」ってみんなで途方に暮れたの覚えてる。

ーあれ? ツアー・バンで行ったんじゃなかったんですか?

ルーク:途中で帰っちゃったんだよ(笑)。でも、幸運なことにパーティーに参加していた全然知らない女の子が、俺ら全員をモーテルまで送ってくれたんだ! 「うん、いいよ、送っていくよ! 全然大丈夫!」って感じで。すごくいい子だった。

チャーリー:想像してもみなよ。朝の5時ごろに最悪なパーティーと最悪なモーテルの間を3往復もして、訳のわからない奴らを送り届けるんだ(笑)。

メイ:彼女はマジで聖人だと思う(笑)。

ー郊外だとUberとかLiftもなかなか捕まらないですもんね。ちゃんと帰れてよかったですね。

チャーリー:いやあ、アメリカ・ツアーは本当にぶっ飛んでた。キツキツの予算でツアーをやんなきゃいけなかったから……変な奴らに大量に遭遇したんだよね。「ウェルカム・トゥ・アメリカ」おじさん覚えてる?

ルーク:覚えてる(笑)! 

チャーリー:僕らが泊まっていたモーテルのプールに、一人でチルしてる中年の男性が居たんだ。髪を後ろになでつけていて、めちゃくちゃ日に焼けた、ちょっとお腹の出たビーチ・スタイルのおじさんで。僕らのツアー・マネージャーに「俺も昔はバンドやってたんだ!」みたいな感じで、ずっと絡んでたんだけど(笑)。

ルーク:そのおじさんがタバコを吸ってたから、ルイスが「一本もらえませんか?」ってタバコをねだったんだよね。そしたらそのおじさん、そこにあるタバコをくれればいいのに「おう、わかった。ちょっと待ってろ」って自分の部屋に戻っちゃったんだよ。

「何が起きたんだ……?」って、俺らが狐に包まれたような顔で待っていたら、しばらくして、おじさんはタバコの箱を持って帰ってきて。箱をルイスにグイッと押し付けて「メリー・クリスマス、ウェルカム・トゥ・アメリカ」って意味ありげに言い放って、またどこかに行っちゃったんだ(笑)。

チャーリー:「メリークリスマス」って二回ぐらい繰り返して言ってたよね(笑)?

ルーク:言ってた(笑)。「意味わかんねえ」と思いながらも、ルイスがタバコの箱を開けたら、中には一本しかタバコは入っていなくって。代わりに、白い粉が包まれたサランラップが入ってたんだ。たぶん、コカインかなんかだと思うんだけど(笑)。わけがわからなかったから、「今、なんか変なおじさんにこんなのもらったんだけど!」って、ツアー・バンの運転手のザックに、そのタバコとコカインらしき物体を見せたら「そんなもんすぐに捨てろ!」って、怒られて(笑)。

チャーリー:「いや、言われなくてもそうしますよ」って感じだったよね(笑)。

ーデヴィッド・リンチの『マルホランド・ドライブ』とか、コーエン兄弟の『ノーカントリー』『ビッグ・リボウスキ』みたいな話ですね……(笑)。

ルーク:まさにそういう映画に出てきそうなモーテルだったよ。ロードサイドにあって、プールが付いてて、ヤバいおじさんがいて……(笑)。

ーそういう奇妙な経験を共有したことが、自分たちの音楽に影響を及ぼしていると思いますか?

全員:全然影響してないね(笑)。

 
 
 
 

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