TAKUROが語る民主主義、令和元年のアルバム『NO DEMOCRACY』を振り返る



田家:歌詞に出てくるアイリスっていうのはどんな人なんでしょう?

TAKURO:女性を称した架空の名前というか。言葉尻というかで選んだと思うんです。

田家:プロポーズソングではあるんですけども、1曲の中に「あなた」が四つの文字で表現されていて。祖母、祖父、父、母。1曲中にいろんな時間が込められていますもんね。

TAKURO:今改めて聞いて思ったんですけど、そうですね。あなたがいるから生きてゆけるってことと、あなたがいたから生きていけたんだっていう感謝の気持ち。当時40代後半だったんですけど、自分の父親がその38で亡くなったってこともあるから、生きる時間に関してあまり固執しないようにしていて。俺がいなくなった後、子供たちが何か迷ったら、この曲を聞けば俺から欲しかった言葉は多分入ってるよって意識しながら作品を残すようにしていて。その出発点は「SAY YOUR DREAM」かな。あの曲を聞けば、仲間と出会って、バンドをやって、仲間と協力し合うことで自分が見られなかった風景を見ることができて、あなたのお母さんと出会って、あなたが生まれたときはこんな気持ちだったんだとか、どれほど愛したかってことがわかってもらえるように、まさにそうした作品ですよね。それを残すようになったのが38歳以降なので、ちょうど10年たった。歌って便利だなと思って。遺言みたいなメッセージを残さなくても、人生で迷ったときGLAYのアルバムを聞けばどれかしらサポートぐらいできるんじゃないかなって。そういう思いで作っていましたね。

田家:プロポーズソングではあるんですけども、指輪の交換とか花嫁衣装だけではない、もっといろんなテーマが織り込まれている曲でもあります。アルバムの『NO DEMOCRACY』は、どこでつけたんでしたっけ。最初にあった?

TAKURO:当時、民主主義を無視して政治の中だけで決まって国民は後から知らされるようなことがあって、自分たちはどうありたいかを考えたんです。シンプルに言うならば、バンドって民主主義だよねって。少なくとも自分たちが目指すバンドは、一国の党首がいてその人が引っ張るんじゃなくて、国民みんなの民意が反映されるバンドGLAYでありたいよねってところで、デモクラシーとつけました。いろんなことを知るにつけ、まだまだ人間が考えた民主主義という素晴らしいアイディアは成長過程であって、完成でもなければ、もしかしたら始まってすらいないんじゃないかぐらいのひどいことがあった。東京オリンピックの賄賂だ、汚職だっていうのもマジかよって。薄々わかってたけど本当なんだっていう。そういう国民の気持ちみたいなものをいつの時代も政治は裏切ったりするなって。

田家:作る前にもう『NO DEMOCRACY』ってタイトルはあったという。

TAKURO:デモクラシーが先だったと思う。そっちの方を大事にして、それを信じてみたい気持ちもあったんだけども、今の時代を素直に歌うなら『NO DEMOCRACY』でいいんじゃないかと。10代20代の青春真っ盛りだったら万歳って歌えたかもしれないけど、いろいろと知るにつけ、まだまだ不完全なものなんだなと。というような記憶ありますけどね。

田家:来週は2021年に出たアルバム『FREEDOM ONLY』についてお聞きします。来週もよろしくお願いします。

TAKURO:よろしくお願いします。

Rolling Stone Japan 編集部

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