TAKUROが語る民主主義、令和元年のアルバム『NO DEMOCRACY』を振り返る



田家:2019年に発売になりましたGLAYのアルバム『NO DEMOCRACY』の5曲目「氷の翼」。4曲目「Flowers Gone」から「氷の翼」。ここに20年分がある感じがしましたけどね。

TAKURO:本当ですね。この曲はジャーニー(TAKUROソロアルバムJourney without a map)の影響を受けて、ギターのアプローチとか、コード進行もかなり「Flowers Gone」とは違ってちょっと頭が良くなってますよね(笑)。

田家:ラブソングも年齢に応じて、時代によって変わってきてるでしょう?

TAKURO:いちソングライターとしてスタートして、例えば学校行ってたらクラス、アルバイトとか社会とか、今度は家族とか国とか、アメリカに移住したら移住したで外から見た祖国とか、その時々で書く題材は変わっていると思います。

田家:この「氷の翼」は汚れたカップルの歌。

TAKURO:GLAYってわりと不倫の歌とかあるんですよ。滑稽だな、面白いなと思うものは、すごいスキャンダルになるでしょう? 普段俺たちが見てるテレビはもう刑事ドラマではバンバン人が死んで、社会派ドラマでは汚職が溢れていて、それにみんな熱狂する。人が人を攻撃するポイントって多分きっかけは何でもよくて、写し鏡のようなものなのかって。SNS時代到来というのはある種、民主主義の老化をめちゃくちゃ早めて。今は民主主義が病気で重篤の状態ですよね。本来ならば人の権利をお互い守り合って楽しく生きようって中で、SNSの発言によって人々の頭の中が透けて見えるようになっちゃった。気に入らないってなったら気に入らないって書けばいいし、つぶやけばいいだけで。それが巨大な拳となって、小さな何かをぶん殴り合うみたいなね。

田家:「愛で殴り合う」って歌詞がありました。

TAKURO:正しさとか愛っていう免罪符を振りかざせばもう何してもいいってことがSNS時代に加速していく様をうわーって思いながら、曲を書いた記憶ありますよね。

田家:「氷の翼」の後の6曲目「誰もが特別だった頃」、これも別々の道を歩くことになったカップルで、この辺は青春を歌っている曲です。

TAKURO:これまた今っぽいんですけど、様々な事情があって1人で生きていこうとする人の歌ですよね。昭和だと婚姻制度を信じてこの歳になったら結婚するものだとか、ある意味社会の同調圧力によってせざるを得なかった人、もしくは世間体でもって別れたくても別れられない夫婦だったりね。だけど、どんどん世の中の価値観が変わっていく中で、1人で生きていくと決めたと。その高らかに宣言する主人公の歌を書きたかったんですよね。

田家:なるほどね。

TAKURO:いろんな恋や愛もあったんだけれど、そこでない生き方。ある種、自分たちの音楽も含めて、日本の音楽は愛と恋の歌であるときから覆い尽くされちゃった。愛だ恋だもいいけれど、私は1人で生きていくんだ、自分らしく生きていくんだっていうのが歌の中では歌われていくべきだと思うし、それが社会と共鳴し合って、人のそれぞれの考えを認められればいいのになって歌なんですよね。

田家:そういう歌の後にこの曲が入っておりました。「あゝ、無常」。

Rolling Stone Japan 編集部

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