BIGYUKIが明かす、海外の超一流が集う場でグラスパーやメルドーから学んだこと

BIGYUKI(Photo by @ogata_photo)

 
BIGYUKIがバンドセットによる待望の日本ツアーを、3月15日(水)Billboard Live OSAKA、3月17日(金)東京・OPRCT、3月18日(土)Blue Note Tokyoにて開催する。前回のインタビューから約1年半を経て、シーンの最前線で活躍するキーボード奏者が現在の心境を語ってくれた。聞き手はジャズ評論家の柳樂光隆。

BIGYUKIの勢いが止まらない。パンデミック前にはマーク・ジュリアナのグラミー賞ノミネート作に名を連ねていた彼は、最近もホセ・ジェイムズによるエリカ・バドゥのトリビュート作『On&On』で音楽的な要として存在感を放ち、アントニオ・サンチェスが始めた新グループ、Bad Hombreでエレクトロニックなサウンドに貢献してきた。さらに日本でも、CHAIやAwitchなどとコラボし、AIとの共演プロジェクトにも参加するなど、刺激的な場所に顔を出し続けている。

ここ最近、日本人アーティストの海外進出について取り沙汰される機会が増えているが、そもそも海外の現場がどういったもので、そこで日本人がどのような活躍をしているのか紹介される機会は少ない。そこで今回は、BIGYUKIに最近の体験談を語ってもらいながら、彼が海外のシーンで具体的にどういった活動や交流をしているのか掘り下げることにした。先日、ロバート・グラスパーがTOKYO FMの番組「THE TRAD」に出演したときにBIGYUKIを絶賛していたが、彼はどのようにしてジャズシーンの最先端に溶け込んできたのだろうか。さらに記事の後半では、BTSも支えてきた韓国の新世代ジャズについても語られている。

共に高め合うミュージシャン仲間について、ずっと嬉しそうに語っていたBIGYUKIの笑顔が忘れられない。刺激的なエピソードの数々を経て、今の彼は「純粋に演奏したいという気持ちが高まっている」という。このインタビューを読んだら、今度のジャパンツアーにも足を運んでみたくなるはずだ。



―日本に来る前はアントニオ・サンチェス(※)のバンドのツアーに参加してましたよね。

※パット・メセニーとの共演や、2014年公開の映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』のスコアで知られるメキシコ系アメリカ人のジャズ・ドラマー

BIGYUKI:そうそう。彼のバンドでツアーをやって、日本に来る前日にワシントンDCで「Tiny Desk Concert」の収録をやったんですよ(※現時点で未公開)。普段のアントニオのバンドはAbleton Liveでトラックを流したり、タナ・アレクサ(Vo)がリアルタイムでループを組んだりして、トラックをがんがん流しながらみんなで演奏するんだけど、「Tiny Desk」はバッキングトラックNGだし、素の声を聞かせるのがテーマなので、歌を加工するのも喜ばれない。だから俺たちは、「Tiny Desk」で(このバンドでは)初めて生での演奏に挑んだんです。でも、みんなそういう無茶を面白がる人たちなので楽しかったですよ。アントニオのバンドは「チャレンジすることが自分の表現力向上にも繋がる」ってマインドだし、いつだって自分の演奏に厳しいから、彼らとプレイするとこっちも気持ちがシュッとしますよ。



―いきなりすごい話ですけど、他には最近どんなことを?

BIGYUKI:この前、ブルーノート・クルーズ(※)に乗ったんですよ。そこでロバート・グラスパーに「日本のラジオ(上述の『The Trad』)に出たから、お前のことを話しておいたぞ」って言われました(笑)。ブルーノート・クルーズはみんなの(音楽に対する)愛の濃度が高くて、本当にすごかったんですよ。俺はホセ(・ジェイムス)のバンドで参加したんですけど、他にもデリック・ホッジとジュリアン・ラージが一緒にスペシャル・バンドをやったりしていて。みんなと船の中で1週間一緒に生活して、お互いのライブを見たりできるから、最高に楽しいんですよ。

※「Blue Note at Sea」は米ブルーノート・レコードとブルーノート・ジャズ・クラブの主催で、2001年に始まった企画。クルーズ船でカリブ海の海を周遊しながら、一流アーティストによるジャズが堪能できる。2023年は1月13日〜20日に開催。


「Blue Note at Sea」公式ホームページより



―特によかったライブは?

BIGYUKI:歌いながらドラムを叩くジェイミソン・ロス。彼は絶対に有名になると思います。PJモートンみたいな存在になるんじゃないかな、それだけ求心力がありました。特に歌が良くて、ダイナミクスのコントロールもすごいし、ライブが自然にゆっくりと上昇していくから、(ステージ)横で見ながら感動しました。セシル・マクロリン・サルヴァントとシリル・エイメーも前でノリノリで踊ってたり、みんなを巻き込んでましたね。


ジェイミソン・ロス、ブルーノート・クルーズでの演奏

―ジェイミソン・ロスはスナーキー・パピーのドラマーでもありますよね。他には?

BIGYUKI:夜中にグラスパーがジャムセッションをやってて、ゲストでジーン・ベイラーとマーカス・ベイラーが入ったりして、そういうのも良かったです。

俺が参加したデリック・ホッジのバンドは、ジャスティン・タイソンがドラムで、ジュリアン・ラージがギターだったんですけど、リハの時から「出る音出る音愛しかないな」って感じてました。出演したのはクルーズのメインシアターで、夜の部はマーカス・ミラーやクリスチャン・マクブライドが演奏して、デリックのバンドは朝の部が出番だったんですけど、そこに俺が大学生の頃に熱心に聴いていたジェフ・バラードやラリー・グレナディアも観に来てくれたんです。

あとは、ブラッド・メルドーとセシル・マクロリン・サルヴァントが共演したりもしてましたし、サリヴァン・フォートナーとジェフ・バラードの即席バンドも超良かった。サリヴァン・フォートナーは未来でしたね。彼はサポートするときの世界の作り方がすごいんですよ。しかも、ソロピアノはソロピアノでめちゃくちゃヤバイですから。

―挾間美帆さんもBRUTUSのジャズ特集で「サリヴァン・フォートナーがすごい」と話してました。みんな彼をチェックしてるんですね。

BIGYUKI:セシル・マクロリン・サルヴァントとサリヴァン・フォートナーのデュオは本当に神がかってますよ。あの2人は天使ですね。


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