CHAIが語る、海外で掴んだ「世界に通用する音」「自分たちにしかないオリジナリティ」

CHAI(Photo by Kana Tarumi)

 
CHAI、今が一番面白い。2016年、1st EP『ほったらかシリーズ』でデビュー。2019年にリリースした2ndアルバム『PUNK』が海外でも高く評価され、Pitchforkでは8.3の高得点を獲得。そして、かつてニルヴァーナやサウンドガーデンを輩出したアメリカのレーベル・Sub Popと組み、2021年に3rdアルバム『WINK』をリリース。『WINK』以降、明らかに海外リスナーの反応が変わったことを本人たちも実感しているという。

1月18日には最新曲「ラブじゃん」と、日本限定EP『ジャジャーン』をパッケージリリース。「ラブじゃん」は日本のファンをさらに巻き込みたいという想いから生まれた楽曲だが、その奥には「どういう音楽が今日本で流れたらかっこいいか」というCHAIらしい強い意志がある。重低音の効いたビート、ミニマルな音で攻めるBメロ、サビのぶっといベースライン――そういった細かい音作りも、大枠の遊び心や「ラブ」というテーマも、地に足つけながら世界で活動しているCHAIだからこそ掴んだ表現方法で生み出すことができている。

CHAIは国内でも早い時期から注目を集めていたが、「NEOかわいい」というフレーズが大きく広まるたびに、そして海外メディアから高い評価とプッシュを受けるたびに、もっと自分たちの音を磨き上げなければならないというプレッシャーと向き合い続けてきた。本気で世界を活動のフィールドにして一歩ずつ進んできたCHAIだからこそ今掴んでいる「世界に通用する音」や「世界の中のCHAIのオリジナリティ」について、惜しみなく話を聞かせてもらった。


Photo by Kana Tarumi


―初めてCHAIを取材したのっていつだっけ?と振り返ると2016年で。もう7年前。

ユウキ(Ba, Cho):やば!

マナ(Vo, Key):そうだよ、本当に初期だもんね。

ユナ(Dr, Cho):上京したてだったもんね。

―そこから作品ごとの変化・進化が凄まじくて。特に3rdアルバム『WINK』からはSub Popと契約して、何度も海外ツアーを経験したことで、現行のグローバルシーンの音を現場で感じ取った上でクリエイトしていると思う。改めて『WINK』からサウンドを大きく変化させた、その理由や意識から聞かせていただけますか。

マナ:うん、だいぶ変わった。音作りの変化のきっかけはコロナだったかな。それまではスタジオに集まって会話して、感覚の中でキーワードだけ探って、というふうに曲作りしていたのを、コロナで集まれなくなったからパソコンのGarageBandで作るようになって。

―GarageBandなんだ!?

マナ:そう(笑)。最近は、もうひとつ……。

ユナ:Logic(笑)。

マナ:そう! 勉強してる(笑)。そうやって作るようになって、それまでに出会っていた海外のプロデューサーとも関われるようになったの。コロナをきっかけに、「こういうものが作りたい。だったら、このプロデューサーとやろう」って、柔軟な考えができるようになった。私たちだけで作るものも素晴らしいけど、他の人と関わることでもっとすごい音を作れるんじゃないかと思って、いっぱい試してみた。そこからだんだん音楽に対する考え方も変わっていったし、「ここでレコーディングしたら、こういう人と組んだら、こういう音ができるんだ」っていうのがパッと見えるようになってきた。だから今、音に落とし込むのがすっごくナチュラル。考え込まなくなった。


『WINK』収録の「IN PINK」ではLA拠点のシンガーソングライター/プロデューサー、マインドデザイン(Mndsgn)をフィーチャー

―だから音楽性の幅も広がってるし、音の自由度も高まってるし。

マナ:そう、より自由に。あとは、ツアー中に曲を作ることも増えた。今アルバムを作っていて、それも去年後半のアメリカと南米ツアー中に全部仕上げた(9月下旬〜11月下旬、ロサンゼルス、デラウェア、ブラジル、チリ、アルゼンチン、メキシコなどでの大型フェス出演含め、アメリカ・南米ツアーを行っていた)。ホテルとかでメロディを録音したりギター弾いたり歌詞を考えたりして、みんなで作り上げるものが形になりやすくなったんだよね。

―各国のライブで感じたことをそのまま音源に落とし込めるだろうし。

カナ(Gt, Vo):そうだね。その時の感情をそのまま曲にできるのはめっちゃいいことだなと思ったよね。

―YouTubeに海外ツアーのドキュメンタリーがあがっていて、スタジオでレコーディングしてる様子も入ってるけど、あれは次のアルバムの作業?

マナ:あ、そうだね。「ラブじゃん」は日本でレコーディングしたんだけど、海外で作った。ツアー中に「どういうものが今日本で流れたらかっこいいかな」って、カナとずっと考えながらコードと歌から作っていったかな。



―なるほど。「ラブじゃん」はサビこそ日本人の耳にも馴染みやすいメロディや音のバランスになっているけど、重低音が効いたビートとかがめちゃくちゃ気持ちよくて。「今日本で流れたらかっこいいもの」とは、具体的にどういうことを意識したんですか?

カナ:やっぱりあっち(アメリカ)はベースとドラムが絶対で、それが前に出てくる音楽だけど、日本は「安心感」っていう感じの音楽だと思うんだよね。すべての音がちゃんと聴こえて、主役は歌。歌の周りにギター、ベース、ドラム、キーボードが、安定して「ちゃんといます」という感じ。この曲はScoobert Doobert(カリフォルニア在住のアーティスト)がアレンジしてくれたんだけど、その辺も伝えたし。私たちも日本向けにリズムとかを作ったことがなかったから日本の音楽を聴いたりもした。

―でも、そういった「J-POPサウンド」みたいなものではないところに着地しましたよね?

カナ:あはははは。そこはやっぱり意地が(笑)。その塩梅が難しかった。ベースとドラムだけは日本に寄せすぎるとCHAIとして表現するにはダサい方向になる可能性もあるから。今回の曲は、ちょっと韓国要素みたいなものを入れたいってメンバーで話して、キラッとした感じと、メロディのアンニュイな感じ、あとJ-POPみたいなメロディを少し、楽曲に落とし込んでみようと思った。


あああ

 
 
 
 

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