米退役軍人、レジスタンスの心得と戦術をウクライナ市民に伝授

バリケードを築き、奇襲を仕掛けることもできる

訓練がはじまってからまだ数日だが、どうやら志願者たちはコツをつかんできたようだ。ハンドサインだけを使って屋外の危険区域を移動することもできるようになった。互いの距離を保ちながら、仲間の前進と後退をカバーした。バリケードを築き、奇襲を仕掛けることもできる。

B.A.は、自分が担当する分隊を教えていた。彼の分隊には、従軍経験のある年配の男性も数名いた。B.A.は、侵略者たちの手を焼く方法を解説していた。

「あなたも、私たちと一緒に戦うんですよね?」と志願者のひとりが質問した。

B.A.は、彼らが生き延びるために必要なツールを積極的に提供すると慎重に答えた。だが結局のところ、これはウクライナの人々の戦いだ。答えが「ノー」であることは言うまでもない。

ハンニバル氏は、アメリカの政府当局者たちとの会話に基づいて次のように述べた。彼のチームが「領土防衛隊」と呼ばれるウクライナ市民軍のために志願者を訓練するという活動の範疇を超えない限り、場所がどこであれ、法律的には裁くことができないグレーゾーンにいるそうだ。

戦時下では、中立的な参加者であり続けることは容易ではない。ベトナム戦争からシリア内戦、さらにはニジェール内戦に至るまで、最終的には戦闘に巻き込まれてしまった「トレーナー」の事例にアメリカ史は事欠かない。

それに加えて、ナチスの問題もある。2014年以来、ウクライナ東部では「dobrobaty」と呼ばれる30以上もの国家主義的ないし愛国主義的な「志願者による軍事組織」がロシア軍と戦ってきた。その一部は、新興財閥・オリガルヒの私兵組織だ。これらの多くは、ウクライナ国防省および内務省の管轄下にある。その中には、海外からの志願者を受け入れるものもあれば、部隊全体が旧ソ連出身の「外国人」で構成されているものもある。こうした軍事組織のひとつである極右組織・アゾフ大隊は、2014年にウクライナ南東部マリウポリ解放において決定的な役割を果たしたが、のちにネオナチ思想に傾倒した隊員がいたと批判された。実際、彼らは戦争中毒者であり、白人至上主義者でファシストだ。こうした思想の持ち主が紛れ込んだ結果、アメリカがウクライナの軍事支援を強化する中、アゾフ大隊は支援対象から除外された。

極右過激主義者が逃げ込む場所としてのアゾフ大隊の評判は、ウクライナをナチスまみれの国家(プーチン大統領がウクライナ侵攻を正当化する主な理由のひとつ)として描くロシア側のプロパガンダとも好相性だ。ハンニバル氏のチームが訓練地を見て回っていたとの同日、ロシア国防省のイゴール・コナシェンコフ報道官は、ウクライナとの戦闘中に捕らえられた「傭兵」は戦争捕虜としての扱いを受けることはないと、国営タス通信に述べた。「せいぜい、犯罪者として起訴されることを覚悟しておいてください」

ロシア政府がどれだけ法律を使って警告しようとも、エスカレートする戦争の物語の変曲点としてのアメリカ人の介入(彼ら自身の定義や役割はさておき)を防ぐのは、不可能であるかのように思えた。2014年を振り返ると、ロシア政府はクリミア侵攻の際に暗躍した「リトル・グリーンメン(訳注:親ロシア派武装勢力)」とは一切無関係であると主張した。こうした作り話を信じる人は誰もいないが、プーチン大統領が目的を達成するための後ろ盾となったのも事実だ。我らが特攻野郎たちも、プーチン大統領のプロパガンダの一翼を担うことになるのだろうか?

Translated by Shoko Natori

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