マカヤ・マクレイヴン、現代ジャズの最高峰が語るブルーノートの新しい解釈

マカヤ・マクレイヴン(Photo by Nolis Anderson)


「この地球上に存在しない音楽を作りたい」

―次は「Ecaroh」について。ホレス・シルヴァーが1952年、53年に録音した『Horace Silver Trio』からで、改めて聴いてみるとこの原曲自体がほぼループで出来ていますね。

マカヤ:そうだね。サンプリングして切り貼りしてエディットする前から、もともとループになっているのを感じて、その部分に惹かれていたんだ。これもジェフ・パーカーに聴かせたら気に入ってくれて、それで採用することになった。それにヴィブラフォン奏者のジョエル・ロスはニュースクールに通う大学生で、彼にとってはちょうど大学で学んだばかりの覚えたての曲だったらしい。プロセスとしては、僕が切り貼りして作り上げたところに自分でドラムを叩いて、ビートを付け加えて、それを他のミュージシャンたちに渡して演奏を加えてもらっている。




―個人的に驚きだったのは、ブルーノートの中でも特にマイナーな西海岸のピアニスト、ジャック・ウィルソンの曲が2曲も選ばれていたことです。

マカヤ:音楽が導いたとしか言いようがない。2曲ともカタログを聴きまくっている中で偶然出会ったものだね。「Frank’s Tune」はこのアルバムの中でも最初期にレコーディングした曲。聴いた瞬間に虜になった。「C.F.D.」に関しても同じだね。一旦、かなりの曲をチョイスしてサンプリングしてみたりしていたんだけど、この曲のピアノのラインが聴こえて来た時には瞬間的にこれだって思ったよ。元の音源のレコーディングがすごくパワフルなものだったことが伝わってくるのも気に入ったポイントだったから、それを活かすようにしているよ。

―ブルーノートはジャズの名門ということでオーセンティックなイメージがありますが、もともとはかなり尖ったレーベルで、その中でも録音やミックスが特殊なことで知られています。それらはエンジニアのルディ・ヴァン・ゲルダーが手がけていました。今回のアルバムは、ヴァン・ゲルダーのサウンドにマッチするようなサウンドを作っているのも特徴だと思います。

マカヤ:ブルーノート初期のレコーディング手法に関してはすごく共感するところがある。初期のカタログでルディ・ヴァン・ゲルダーがやっていたことは、僕が所属しているシカゴのInternational Anthemのような小さなインディー・レーベルが、自分たち自身で音楽を届けようとしているやり方に通じるものがあると思ってる。ヴァン・ゲルダーが録音を始めたころ、彼は検眼技師をやっていて、母親が住んでいた実家のリビングを自宅スタジオにして録音していたことさえある。そこまでして音楽をドキュメントしようとしていた人なんだ。そういった彼のグラスルーツ的な部分はすごくドープだと思うし、僕はすごく共感するんだ。僕もホームスタジオを自分で作って、そこを使って20年くらい自宅でレコーディングをしているからね。

それにブルーノートにはライブ録音のクラシックスがたくさん残っていて、このアルバムで僕はそれらをサンプリングしている。ブルーノートはライブを記録して残そうとしていたレーベルなんだ。そういったレコード・ビジネスの在り方だったり、レコーディングの手法だったり、そういうところは今、僕らがやっていることと近いものがあると思っている。

話がずれちゃったけど、僕は様々な音楽がうまく合わさってスムースに溶け込むように作りたいと思っている。その音楽のエッセンスが無効になってしまうように分離してしまってはダメだと思うからね。このアルバムではまるでジュニアス・ポール(マカヤのバンドに参加するベーシスト)がアート・ブレイキーと共演しているように聴こえるものを作りたいってことを常に意識しながらやっていた。つまり、サンプリングと演奏の垣根を取り払うのが理想。僕はこの地球上に存在しない音楽を作りたいと思っているから。


Photo by Nolis Anderson

―ライブ盤の話が出ましたが、このアルバムは「1950〜60年代の架空のライブ盤」みたいに聴こえる、タイムレスなムードや質感を感じさせる作りになっていますよね。だからこそ、アルバム全体を通じて統一感もある。そのアイデアについて教えてください。

マカヤ:ピー・ウィー・マーケットのアナウンスも入っているので、このアルバムでは何箇所かで言葉も聴こえてくる。それは特異なライブ体験みたいなものをしてもらいたいと思ったからやったことなんだ。でも、それって実は『In The Moment』や『Universal Being』など、僕の過去のアルバムからも聴こえてくる要素だよね。僕はライブ的な空間から聴き手に向けて語りかけるようなアルバムを作ってきたから。そして、これは僕自身が考えるヒップホップ観や音楽観を反映している部分もある。インタールードがあって、その後にヴォイス・サンプルがあって、そこからトラックに移っていく、みたいな流れがある音楽が好きなんだ。イントロの後に声が聴こえてきて、その声に導かれるように異空間に連れていかれるような感覚を表現したいから。

例えば、僕はここでアート・ブレイキーのインタビューを使っているけど、マッドリブもインタビューなどの音声をサンプリングする手法をよく使うよね。そういった手法を駆使して、様々なモーメントの音楽をアナウンスで繋ぎ合わせて、ひとつのショーみたいに聴かせることができたら、僕なりのストーリーテリングもできるんじゃないかと考えた。それができれば、僕がサンプリングしたすべてのブルーノートのレコードが合わさった「ひとつの体験」として昇華できるかもって思ったんだ。




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