マカヤ・マクレイヴン、現代ジャズの最高峰が語るブルーノートの新しい解釈

マカヤ・マクレイヴン(Photo by Nolis Anderson)


サンプリングもインプロヴィゼーション

―ここからは個々の曲について。ハンク・モブレー「A Slice of the Top」はブルーノートが1979年にリリースした、1966年録音の未発表アルバム『A Slice of the Top』に収録されていた曲です。あまりにマニアックですが、なぜこの曲を?

マカヤ:この曲はバンプ(※Vamp:リズムパターンのみの演奏部分)のフィーリングや、イントロのAパート、ソロのあり方も全てが素晴らしくて、突出していると思った。だから、ソロを活かすために、曲をそのままサンプリングして使っていて、そこに僕のエレクトリックなドラムやベースを加えている

マルチトラックのステムがあるわけじゃなくて、2トラックのステレオのレコードをサンプリングしているから、ビリー・ヒギンスのドラムも、ハンク・モブレーのサックスも、リー・モーガンのトランペットもそのまま聴こえてくると思う。それをループさせたり、チョップしたり、ソロの部分もシークエンシングして、そこにドラムやベースを加えることで、コンテンポラリーなサウンドになるようにしている。

―「A Slice of the Top」はデューク・ピアソンがアレンジを手掛けていて、チューバやユーフォニウムが入っているかなり変わった曲です。その原曲のアレンジをうまく活かしてますよね。

マカヤ:僕はあらゆる楽器のフィーリングや質感が混ざっている状態が好きだからね。過去の作品を聴いてみてもらえば、ブランディー・ヤンガーのハープや、テオン・クロスのチューバから、エレクトロニクスまで入っていたりするのがわかると思う。だから、この曲はすぐに気に入ったんだ。あとで調べてみたら、このチューバはハワード・ジョンソンが演奏しているとわかって、彼とは大学時代に交流があったからびっくりしたよ。最初に聴いたときにリフの部分のチューバがものすごくパワフルだから、ここはサンプリングしたいなって思った。でも、こういう作業ってなるようにしかならないから。セ・ラ・ヴィってこと。この曲の流れに沿って曲を作ったら、結果的にこうなっちゃったって感じかな。




―「Sunset」はケニー・ドーハムが1961年に録音した『Whistle Stop』に収録されている、これまたずいぶんマニアックな曲です。

マカヤ:実は、今回ブルーノートからのリリースが決まる前に、すでにサンプリングして曲を作っていたんだ。それくらい好きな曲なんだよ。最初、ジェフ・パーカーにこの曲を送ったらすごく気に入ってくれた。このプロジェクトに関しては、ジェフが気に入ればゴーサインが出るという感じで先に進むんだよ。




―ここでサンプリングしてループさせているケニー・ドリューのピアノは、原曲ではかなり引っ込んでいるし、音量も小さくてサンプリングしにくそうなんですよね。なぜこのピアノを?

マカヤ:「サンプリングしやすいかどうか」は、僕にとってはあまり関係ないこと。ブルーノートのカタログをたくさん聴いていく中で、ビートを入れるスペースをどうやって作るかってことを研究するためにヒップホップもたくさん聴いていくうち、僕が好きなヒップホップはサンプリングする際にどのようにビートを入れているかってことがだんだんわかってきたんだよね。

―そのピアノを、音がノイジーに割れる感じに加工して使ってますよね。

マカヤ:古い作品を素材にして新しいサウンドを作る際には何かを変えることになる。サンプルする際にレコードから音源をとって、PCに取り込んで、そこでリヴァーブをかけたり、コンプレッションをかけたりしていくうちに、サウンドは徐々に変化して、楽曲も進化していく。この曲に関してもそうなんだけど、ピアノの部分を変わった音にしようってことは考えていなくて、手を加えていく中でピアノも含めて様々な箇所が変化していって、最終的に楽曲が進化して、最終的にああなったんだよね。

―つまり、あなたにとってはサンプリングしてトラックを構築していく作業も、ほとんどインプロヴィゼーションと変わらないものということなのでしょうか?

マカヤ:そうだね。僕の音楽は全てがインプロヴィゼーションだと思うよ。今この瞬間を生きていることもインプロヴィゼーションだからね。僕がUberの中でiPhoneを充電させてもらいながらZoomでインタビューを受けていることも、その相手が日本にいるこの時間も含めて、全てはその瞬間ごとに起きていることだから。それもインプロヴィゼーションみたいなものだよね(笑)。

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