バッドバッドノットグッドが極意を明かす 懐かしくも新しいサウンドメイクの秘密

ヘヴィなサウンドの探求

―チェスターに質問です。先ほど触れた「Signal From The Noise」の印象的なイントロなど、このアルバムでは曲ごとに多彩なベースギターの演奏を聴くことができます。『Talk Memory』の演奏面で意識したことを聞かせてください。

チェスター:アルバムの狙いとして一つあったのは、より長い尺のソロを入れるということだった。だから「Signal From the Noise」と「Timid, Intimidating」には比較的長いソロが2箇所にある。その2曲に関しては、エフェクトペダルをいくつか使って演奏しているんだ。

それに、エンジニアのニックがサウンド面にまつわるアイデアでたくさん貢献してくれて、ベースや他の楽器を、その曲に合うよう毎回調整してくれたんだ。彼は「このディストーションペダルも使ってみるといい」などと言ってサウンドの提案をしてくれた。また、「Unfolding (Momentum 73) 」や「Talk Meaning」のようなジャズ要素が強い曲では、ベースの音に温かみを持たせて、アップライト・ベースに近い音になるようにしてくれた。僕はアルバムを通してずっと同じベースを弾いていたんだよ。ニックがその音を違う響きにしてくれたし、ペダルを使ったのも効果的だったね。

―次はリーランド。『Talk Memory』でのギターの音色、エフェクトや奏法はこれまでのBBNGでは聴かれなかったものだと思います。ロック的な演奏も多く、ジャズだとしてもジョン・マクラフリンやピート・コージーのような、ジャズとロックを融合しているギタリストの演奏を想起させるように感じました。

リーランド:ギターの音はディストーションやファズペダルを主に使っていて、フェイザーペダルやワウペダルも少し入っている。マハヴィシュヌ・オーケストラは僕ら全員の影響源だし、ドラムやギター、ベースの音作りに関してはブラック・サバスも参考にしていた。僕たちは、今までよりもヘヴィなサウンドを聴いていたんだよね。「Beside April」と「Timid, Intimidating」はチェスターが作曲したんだけど、その2曲をバンドでジャムっていくうちに、よりヘヴィなサウンドへと自然に向かっていった。

機材に関してオタクっぽいことを言わせてもらうと、今回は初めてマーシャルのハーフスタック(二段積み)アンプを使ったんだ。アルバムの制作中は全てフェンダーのテレキャスターを使っている。あまりジャズのセットアップとは言えないね(笑)。僕は子供の頃、ギターを習っていたんだけど、当時、最も影響を受けていたのがジミ・ヘンドリックスやジミー・ペイジ、トニー・アイオミ(ブラック・サバス)だったから、そういうのが自然と、今の自分が演奏する音楽ににじみ出てきているんだ。



―前作『Ⅳ』の取材ではアルトゥール・ヴェロカイ、マルコス・ヴァーリ、アジムスなどブラジル音楽のレコードを影響源に挙げていました。本作に関してはどうでしょう?

チェスター:今回もブラジル音楽やアルトゥールがインスピレーションになっているのは間違いないね。ただ、ブラジルのサイケやロックに影響を受けていたのは確かなんだけど、アプローチに関して言うと、60年代のジャズを再訪して、ウェイン・ショーターやジョン・コルトレーンなどをたくさん聴いていた。

リーランド:チェスターが言ったように、エラスモ・カルロスやセリアなどのブラジル音楽をたくさん聴いたよ。それからジャズもたくさん聴いた。セロニアス・モンク、チャールズ・ミンガス、さっきも挙げたけどマハヴィシュヌ・オーケストラの『The Inner Mounting Flame』と『Birds of Fire』、それからブラック・サバスに、ジミ・ヘンドリックスの『Band of Gypsys』をたくさん聴いた。まとまりがないね(笑)。

※1:サイケデリックなサウンドが特徴的なブラジルのSSW。近年、Light In The Atticから過去作がリイシューされた。
※2:ブラジルのシンガー。代表作『Celia』はアルトゥール・ヴェロカイがアレンジを手掛けた傑作。





―BBNGはヴァイナルが好きですよね。『Talk Memory』はヴァイナルならではの音質や鳴り方と相性がよさそうなアルバムだと思います。

チェスター:その通りだね。僕たちは作曲やレコーディングを進めている段階から、ヴァイナルでどのように聴こえるのか考えている。さらに今回は、アートワークやパッケージングにも細心の注意を払っていて、素晴らしいデザイン・チームであるAlaska-Alaska(※)と一緒に仕事をすることができたから、レコードとしてリリースするのがすごく楽しみだよ。

※ストリートブランドのOff-Whiteを立ち上げ、黒人として初めてルイ・ヴィトンのメンズウェアのクリエイティブディレクターに就任したデザイナーのヴァージル・アブローが率いるチーム。

リーランド:ヴァイナルのテストプレスを受け取った時は、アルバムを完成させた時の次くらいに感激したよ。このアルバムのサウンドはヴァイナルにぴったりだと思う。全体の95%くらいがアナログでレコーディングされ、ミックスされたものだからね。

―ZINEにはアンドレイ・タルコフスキーについてのディープな文章も掲載されていました。『Talk Memory』には映画音楽のような流れがあり、音楽の運動が映像を喚起させるようでもあるので、タルコフスキーの話が載っているのも納得です。このアルバムのシネマティックな側面に関して聞かせてください。

リーランド:一つのプロジェクトを最初から最後まで取り組むというアプローチは、映画から直接的な影響を受けていると思う。アルバムの全音源が同じセッションで、制限された同じ機材を使って録音されたものだし、そのセッションという過程を経て、シネマティックな要素などが発展していったんだと思う。

チェスターが作曲した「Beside April」と「Beside April (Reprise)」に関しては、前者がアルバムの序盤、後者が後半に聴こえてくることで、アルバムの流れが発展している感じを表現している。そう考えても、映画が僕たち全員の作曲方法に影響を与えていることは確かだね。メロディに関しても、映画のようなアプローチが好みなんだ。今回のアルバムでは幸運なことに、全ての収録曲のMVを制作する事ができた。どの曲もスクリーンの映像と共に楽しんでもらいたいね。




バッドバッドノットグッド
『Talk Memory』
発売中
日本盤CDはボーナストラックを追加収録、解説書を封入
詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11986


Tシャツ付限定盤(CD/LP)
詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=12066


ZINEシリーズ「The Memory Catalogue」国内配布店舗一覧

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boiler
MINGUS COFFEE / roach roaster

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Sound Channel
shabby sic ポエトリー

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Jazzy Sport Shimokitazawa
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Translated by Emi Aoki

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