挾間美帆、世界的ビッグバンドを指揮するジャズ作曲家のリーダーシップ論

挾間美帆(Photo by Nicolas Koch Futtrup)

挾間美帆というジャズ作曲家は、2010年代後半から現在までに大きな飛躍を見せてきた。2016年には世界で最も権威あるジャズ専門誌ダウンビートが選ぶ「ジャズの未来を担う25人」にカマシ・ワシントン、ジュリアン・ラージ、マーク・ジュリアナらと共に選出。2018年にはオランダの名門メトロポール・オーケストラとのコラボ作『The Monk: Live At Bimhuis』を発表し、翌年のリーダー作『Dancer in Nowhere』はグラミー賞にノミネート。いまや名実ともにジャズ界におけるトップランナーのひとりだ。

【画像を見る】最新作『Imaginary Visions』レコーディング風景(全23点)

その挾間は2019年、デンマークの国営ラジオ局専属のビッグバンド「デンマーク・ラジオ・ビッグバンド」(以下、DRBB)の首席指揮者に就任。先ごろリリースされた5作目のリーダー作『Imaginary Visions』は、彼女がDRBBと組んだ初のアルバムとなる。

日本でNHKが「N響」ことNHK交響楽団(通称)を運営しているように、ヨーロッパでは多くの公共放送がオーケストラだけでなく、ビッグバンドを運営(もしくは援助)している。なかでも有名なのが、上述のメトロポール・オーケストラ、ドイツ・ケルンのWDRビッグバンド、同フランクフルトのHRビッグバンドといったあたり。彼らはジャンルを問わず世界中のミュージシャンとコラボを重ね、傑作を生みだしてきた。DRBBもそんな公共放送系のビッグバンドのひとつだ。

老舗ジャズクラブのカフェ・モンマルトルや、Steeple Chase、StoryVille、Stuntといった伝統あるレーベルをもつデンマークは、ヨーロッパ屈指のジャズ大国として知られている。デクスター・ゴードンやジャッキー・マクリーン、サヒブ・シハブを始め、アメリカのレジェンドがデンマークで録音した傑作も数知れない。

そんなデンマークで1964年に設立されたDRBBは名門中の名門で、過去にサド・ジョーンズ、ボブ・ブルックマイヤー、ジム・マクニーリーという、ジャズ・ビッグバンドの歴史に名を刻む作編曲家たちが首席指揮者を務めてきた。そんな錚々たる顔ぶれから挾間がバトンを受け継いだのは、世界的快挙としか言いようがない。


しかも、『Imaginary Visions』のリリース元であるEdition Recordsは、現代ジャズの最先端を突き進むUKの新進レーベルである。グレッチェン・パーラトやネイト・スミス、ベン・ウェンデルなどが刺激的なアルバムを発表し、2021年にはカート・エリングの作品でグラミーも獲得したばかり。そのEditionが目を付けたのが挾間だった、というのも大きなポイントだろう。

名門ビッグバンドの首席指揮者という立場に就いたからには、ただ自分の音楽を追求するだけでなく、バンドの歴史と否が応でも向き合わざるをえなくなるし、リーダーとしての指導力や責任感、振る舞い方も求められてくる。これまで彼女とは取材やそれ以外の場所で何度も話をしてきたが、今回のインタビューでは野心をのぞかせつつ、これまでとは違う雰囲気の挾間がいた。「何をしたいか」と「何をすべきか」を両立させようとしている彼女の話は、ある種のマネージメント論としても興味深い内容となった。

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