挾間美帆、世界的ビッグバンドを指揮するジャズ作曲家のリーダーシップ論

挾間美帆(Photo by Nicolas Koch Futtrup)


Editionとの契約、レコーディングの背景

―今回はEdition Recordsからのリリースです。今、世界で最も勢いがあるジャズ・レーベルですよね。どういう感じで話が来たんですか?

挾間:実に今っぽいんですけど、Instagramでレーベル・オーナーのデイヴ・ステープルトンからDMが来ました。ちょうどアルバムを録音する直前で、レコーディングはするけど、その後どうしようって感じだったんです。


Editionの過去作をまとめたプレイリスト。デイヴ・ステープルトンは鍵盤奏者としても知られる。

―もともと今回のアルバムは、自分で企画を立てて録ったんですか?

挾間:いえ、もともとDRBBのシーズン中に(ラジオ用の)コンサートとして1週間予定が組んであって。その後デンマークはずっとロックダウンしてたんですけど、今年3月からレコーディングができるようになって、その週に制作を進めました。ただ録音したはいいけど、レーベルは決まってなかったんですよね。そこにデイヴから連絡が来て「マジか!?」となり、(これまでリーダー作をリリースしてきた)Sunnysideに断って、Editionと契約したっていう流れです。


『Imaginary Visions』レコーディング中のブラス・セクション(Photo by Nicolas Koch Futtrup)

―デイヴはどういう言葉で口説いてきたんですか?

挾間:今のEditionにはUKとUSのアーティストが多くて、USだと東海岸の人が多いのが特徴。そして、ダイバーシティを考えることが必要な今、NYに住んでいながら日本人で女性で、ヨーロッパのビッグバンドと活動している私を知った、と。どうやらマリウス・ネセット(ヨーロッパを代表する若手サックス奏者)とDRBBの作品『Tributes』で私のことを知ってくれたみたいで。こういうフィギュアは他にないので、自分たちの多様性を広げるためにもあなたの作品を扱いたいと。

レコードを出すことが必ずしもビジネスと結びつかない時代になってきているなか、私の将来まで考えてくれて、「知名度を広げていきたい」と言ってもらえたのは嬉しかったですね。アーティストのためにそういうことを言ってくれる人がいるんだと思って。Editionとしては私自身を売り出したいので、「挾間美帆 with DRBB」ではなく「挾間美帆」として出したいと強くリクエストされました。だから、(ジャケットも)表は私の名前だけで、裏のクレジットを見ると「feat. DRBB」になっています。


マリウス・ネセット/DRBB『Tributes』のティーザー映像

―先に録ってあったということは、レーベル側が録音の費用を出してないということですよね。レコーディングの予算はどうなってるんですか?

挾間:レコーディング自体はDRBBのプロジェクトとしてやっているので、DRBBがすべて負担しています。私もDRBBに雇われているので、ギャラをいただきながら自分の作品をレコーディングしています。その後のミックスとマスタリングの費用は自分で負担しました。

レコーディングにお金をかけずに済んだことで、ポストプロダクションに予算をかけられるのは今回しかないと思い、ミックスもマスタリングも今までとは違う嗜好で人選しています。前作と似たサウンドにはしたくないと考えていたときに、Editionが推薦してきたのがクリス・アレンでした。彼はNYベースだし、デイヴ・ホランドがEditionから出した『Good Hope』はいい音だなと思っていたので、それで彼に頼んでみようと。ジェイムス・ファーバー(※)のアシスタントをやっていて、そこから独立したというのもきっかけとして大きかったですね。マスタリングは大御所のグレッグ・カルビにお願いしています。

※ジョシュア・レッドマンやブラッド・メルドーなど、NonesuchからECMまで手掛ける巨匠エンジニア

―ゲストでソロイストを入れようとか、そういう案がDRBBから出たりはしなかったんですか?

挾間:ないですね。彼らは売ろうっていう気がないから。その1週間を私とのレコーディングのために空けて、一緒に録音したというだけで。その音源をどうするのかは私の自由なんです。ただ録っただけでお蔵入りする可能性もありました。

―その余裕がある感じは豊かですね。

挾間:Editionがもっと前から関わっていたら、ゲストくらいは何か言ってきたかもしれない。でも、すでに録っちゃってたから。最初の連絡が来た日に「明日録るんですよ」みたいな感じだったので、有無を言わせずこうなりました(笑)。

―「作品を売るためにキャッチーなゲストを入れたり、フックのあることをやらないといけない」みたいな発想から解き放たれている。それってすごく贅沢ですよね。

挾間:そうですね、それがポジションを与えられたってことなんですよね。




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