バッドバッドノットグッドが極意を明かす 懐かしくも新しいサウンドメイクの秘密

バッドバッドノットグッド(Photo by Jamal Burger)


即興とコンポーズ、アレンジの関係

―最新作のリリースに合わせて始動した、ZINEシリーズ「The Memory Catalogue」の第1弾には「Signal From The Noise」の譜面が載ってましたよね。AパートとBパートのメロディー及びコードが書いてあるシンプルなものでしたが、この曲の譜面に書かれた部分について、どんなところにこだわりがあるのか聞かせてください。

チェスター:この曲の作曲プロセスは少し変わっていて。最初のディストーションが効いたベースのイントロは、僕たちが以前、ライブで曲と曲の間の休止が入るときに、僕がベースを間奏曲みたいな感じで弾いてみたフレーズなんだ。そのコードがカッコいいと思って、それを元に曲を書いてみようということになった。Bパートに関しては自然に思いついたメロディだったと思う。それが楽譜に書かれている部分で、そこから曲を9分まで発展させ、曲の最後にはリピート再生するアナログ・テープのループみたいなものを加えた。

リーランド:チェスターが今言ったように、この曲にはメロディやコードが先に書かれたパートと、僕たちが意図を持ってコンセプチュアルに行う即興演奏のパートがある。ベース・ソロは曲のハイライトとも言える箇所で、チェスターのエネルギーが際立っているね。曲の終盤で行われている即興は、集団的で乱雑なループになっていて、ループの尺も違えば、様々なポリリズムのアイデアが重なり合ったりしている。その辺りはスティーブ・ライヒの影響だね。



チェスター:あと譜面については、以前から欲しいとリクエストがあったから、今回はクールなアーティストたちとコラボレーションして、最初から公開しようと思ったんだ。それで普通の冊子ではなく、もう少し面白い形で共有しようと考えてZINEにした。

リーランド:譜面のアイデアは、最近亡くなってしまったけれど、素晴らしい作曲家だったカナダ人のレーモンド・マリー・シェーファーにインスピレーションを得たものだ。彼はアートワークと従来の楽譜を融合させた、美しいグラフィック入りの楽譜をたくさん作った人で、僕たちも彼の手法を使って、僕たちがコラボレーションできるネットワークをさらに広げたいと思った。だから、この楽譜も今回のプロジェクトの大切な一部なんだ。




ポスター型のZINEシリーズ「The Memory Catalogue」にはアルバム収録曲の楽譜、未公開写真やコラム、参加ゲストのインタビューなどが掲載。現在は第3弾までレコード店やカフェなどで配布中(国内配布店舗一覧は記事末尾に掲載)。

レーモンド・マリー・シェーファーが手がけた図形楽譜。彼はカナダを代表する現代音楽の作曲家で、「サウンドスケープ」の提唱者として知られる。2021年8月14日、アルツハイマー病の合併症により88歳で死去。

―全8曲のうち「Love Proceeding」などの4曲で、アルトゥール・ヴェロカイがストリングス・アレンジを手掛けています。彼がアレンジを手掛ける前提で作曲や演奏を行った曲もあったりするのでしょうか?

チェスター:実は、ストリングスを入れるということは事前に決まっていなかったし、アルトゥールと一緒に仕事ができるか、作曲の段階ではまだわかっていなかったんだ。レコーディングをして何カ月か経った後にアルトゥールと連絡を取って、アルバムへの参加を快諾してもらえた。しかも、彼から最初に戻ってきたバージョンが、そっくりそのままアルバムに収録されている。だからとても上手くいったと言えるね。

―では、リクエストもしていないということですか?

チェスター:僕たちからは何のディレクションもしなかったよ。

リーランド:曲に何かしらのアレンジを加えることは想定していたけど、管楽器を入れるかもしれないと思っていたくらいで、それがストリングスになるとは特に考えてなかった。僕たちはそもそもアレンジに関しては、アルトゥールの仕事をずっと参考にしてきたんだ。だから僕たちが作った楽曲に、彼のアレンジが自然にフィットしたんだと思う。




アルトゥール・ヴェロカイが作曲/編曲/プロデュースに携わった楽曲のプレイリスト。近年ではハイエイタス・カイヨーテ、クァンティック、Jameszooなど。

―かなり即興の要素があって、ジャズ要素も多めのアルバムだと思いますが、そういったサウンドと弦のアレンジを組み合わせる際にインスピレーションになった作品はありますか?

チェスター:ストリングスと即興ジャズの組み合わせはあまり多くないかもしれないけれど、実際にその組み合わせを聴いてみると、とてもクールな音なんだ。ピアニストのスティーヴ・キューンが70年代に出したアルバムで(実際は1967年)、ゲイリー・マクファーランドがアレンジを手掛けている『The October Suite』という作品があるんだけど、あのアルバムはすごく良いね。今回のサウンドの直接的な影響になった一枚だと思う。


Translated by Emi Aoki

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