リトル・シムズが語る、UKラップの傑作をもたらしたディープな自己探求

音楽的にも成長、俳優業との相乗効果も

彼女は『Sometimes I Might Be Introvert』を映画的なアプローチで制作し、映画的な要素を吹き込んだ。「少なくとも私が聞いた限りでは、インタールードとかのおかげで、すごく視覚的イメージが湧いてくるんだよね」 。これまでのアルバム同様、『Sometimes I Might Be Introvert』でもインタールードを有効に使うことで一貫したビジョンを作り上げている。今回の新作では『ザ・クラウン』でダイアナ妃を演じた女優のエマ・コリンを起用した。女優の声は聴く者をアルバムで紡がれた感情の海へと誘い、シムズの鋭敏な口調と好対照をなしている。

自主隔離中に『ザ・クラウン』を何度も見たというシムズは、高尚な「イギリスらしさ」に自分の独特のディープなストーリーを並べたらどうなるだろう、と興味を持ったそうだ。「ああいうインタールードで、何でもいいからリスナーに感じてほしかった。無意識の声が語りかけてくるようだと感じたなら、それでいい。母親にうるさく『あれしなさい、これしなさい』と言われていると感じたなら、それでもかまわない」とシムズ。「この作品では、完全に想像力に任せるような部分を作りたかった」



彼女は音楽的にも幅を広げ、新たな方向へと道を開いた。それはナイジェリア人のミュージシャン、Obongjayarをフィーチャーしたアフロビート調の「Point and Kill」にも表れている。シムズの両親は2人ともナイジェリア人。移民としてのルーツのサウンドを掘り下げ始めた理由として、彼女は人間としての成長を挙げている。「ナイジェリア人であることがクールだと言われる前から、私はナイジェリア人だった」と言って、西洋諸国で高まっている西アフリカ文化ブームを指摘する。「歳を重ね、自分自身のことやルーツについて知るにつれて、もっと掘り下げていきたいと思うようになった。本当にすごいの――私たちは王家の血を引いているんだから」

アルバムを完成させただけでは物足りないと言わんばかりに、シムズはこの1年イギリスの人気犯罪ドラマ『トップボーイ』の撮影にも取りかかった。ドラマのエグゼクティブ・プロデューサーを務めるのはなんとドレイクで、アメリカではNetflixで放映されている(彼女の役柄は、タイトルになっているトップ・ボーイの1人ダシェンが恋焦がれるシェリー役)。「今シーズンは間違いなく、以前にも増して頑張ったと思う。2ついっぺんに取り組むことができて楽しかった。この週は撮影、次の週はスタジオに入るという感じでね」と本人は語る。「いい相互作用があった。スタジオでいい仕事をした後は、『トップボーイ』でもそれに負けない演技をしようって気になるから」

この1年、音楽でも演技でも持てる力のすべてを出し切った、というシムズの言葉が本音であることは明らかだ。「今はすごくリラックスしている。多分どちらも片が付いたから。どちらも全力を出したもの」と本人。「さて、この先はどうなるんでしょう」


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From Rolling Stone US.




リトル・シムズ
『Sometimes I Might Be Introvert』
発売中
詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11836

Translated by Akiko Kato

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