『ストップ・メイキング・センス』製作秘話 トーキング・ヘッズ傑作ライブ映画を振り返る

振り付けとスーツはどうやって決めた?

―あなたがステージに登場したあと、1分間ほどヘッドホンで何かを聞いていますが、ジョナサンからの指示でもあったのですか?

クリス:いや、なかったよ。ヘッドホンでテンポを聞いていた。それというのも、俺たちは3日間撮影し続けていたから、どの曲も同じテンポで始まるように気をつけていたんだ。そこで、俺は最初にクリック・トラックを聞く方法を考案したというわけ。ライブで演奏するときって、特にパンクやニューウェイブの場合、若干テンポが早くなることが多々ある。観客は酔っ払ってライブらしいパフォーマンスを要求するからね。でも、あの3日間はライブらしさを控えめにしなくちゃいけなかった。

―この映画に各メンバーの最高の表情がクローズアップで切り取られていますが、あなた自身のお気に入りはどれですか?

クリス:映画の中でティナはずっと天使のような最高の表情をしているし、バーニー・ウォーレルが意味もなく変な目つきで誰かを見ている(笑)。バーニーは本当に見ていて面白い。デイヴィッドは最初から最後まで見事だ。

―「Life During Wartime」を演奏中に突然デイヴィッドがドラム・ライザーに乗ったときには驚きましたか?

クリス:彼が落ちなかったことに感心してる。デイヴィッドはひっきりなしに動き回っていたから。彼は卓越したパフォーマーだよ……っていうか、少なくとも当時はそうだった。



―バンドの振り付けはどうやって決めたのですか?

クリス:みんな自分勝手にやっていたよ。バックコーラスも最高で、エドナ(・ホルト)もリン(・マブリー)もとにかく素晴らしかった。彼女たちはあのステージ衣装があまり気に入っていなくてね。二人とも見目麗しい黒人女性だから素敵なドレスを着たがった。でもデイヴィッドがヨガウェアみたいな衣装を着せてしまったのさ。とは言え、彼女たちも徐々にそれに慣れて、すっかり着こなしていたと思うよ。

―あの衣装にした理由はあるのですか?

クリス:デイヴィッドが言うには「一人が目立つことのないように全員がニュートラルな色の衣装を着て欲しい」ということだった。そのクセ、デイヴィッドはこれ以上ないってくらい白くて大きいスーツを着て登場したんだからね(笑)。


Photo by John Atashian/Getty Images

―それはサプライズとして?

クリス:みんな知っていたけど、それがどんなスーツかは出来上がるまで分からなかった。立派なスーツだったし、最高に面白かった(笑)。

―あのスーツにした理由は何ですか?


クリス:あのツアーの直前に日本に行ったんだけど、デイヴィッドはいつも、あのスーツは日本の能の装束がもとになっていると言っていた。つまり、能の主役の装束は大きくて四角いから、その装束のスーツ版がデイヴィッドのあのスーツってこと。

Translated by Miki Nakayama

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