『ストップ・メイキング・センス』製作秘話 トーキング・ヘッズ傑作ライブ映画を振り返る

自腹で製作された『ストップ・メイキング・センス』

―当時、ワーナー・ブラザースからの援助はあったのですか?

クリス:これまで誰も言わなかった事実があって、特にデイヴィッド・バーンは絶対に明かさなかったんだけど、実はあの映画の製作費はバンド持ちだった。ワーナー・ブラザースは俺たちにローンを組ませてくれたけど、バンドの印税と相殺する形だったから、俺たち4人が全額を払う羽目になったのさ。当時はまだ印税の額も高くなかったから、メンバー各人がそれまで貯めてきた貯蓄を注ぎ込んだ。でも、今となってはそうして良かったと思う。だって注ぎ込んだ金は回収できたし、映画も最高の作品になったから。

それに、一般の劇場公開ではなくて、国内の小規模のカレッジ・シアターやアート・ハウスで上映することを決めたのもバンドだった。あれほどヒットした大きな理由がそれ。アート・シアターではロングラン上映ができたから、観客が途切れることがなかったんだよ。


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―バンドのメンバーが一人ずつ登場するアイデアはいつ始まったのですか?

クリス:あれはツアー前に決めていた。俺たちの人生で実際に起きたことを少しアレンジしただけの話だよ。あれでデイヴィッドが伝えたかったのは、デイヴィッド・バーンがトーキング・ヘッズを始めて、ティナが加入して、次にクリスが入って、次にジェリーが入って、次にスティーヴ・スケールズが入って……という順番だってことなんだけど、現実はちょっと違う。ティナ、デイヴィッド、俺がバンドを始めようと考えてニューヨークに移ったというのが本当の話だ。俺がデイヴィッドを説得して、ティナに加入を打診した。そしてジェリー・ハリスンにも入ってくれるように頼んだ。それとはちょっと違う順番になってはいるけど、映画の語り口としては非常に良い出来だ。

―デイヴィッドがドラムループに合わせてギターを弾くイントロ部分の「Psycho Killer」について覚えていることは何かありますか?

クリス:デイヴィッドはあれを自分で作ったんだよ。俺は一切関わっていない。彼は誰にも何も言わなかったし、「俺一人でやる」って感じだった。かなり上手く行ったよね。

Translated by Miki Nakayama

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