カート・コバーン「死の真相」に言及、FBIが封印されていたファイルを初公開

初公開ファイルに含まれていた「奇妙なFAX」

さらに奇妙なことに、公開されたファイルには1997年1月にFBIロサンゼルス支局とワシントンDC支局に(さらに複数のNBC重役にも)送信されたFAXも含まれていた。FAXの送信元はロングヒットTVシリーズ『未解決ミステリー』を制作したロサンゼルスのドキュメンタリー制作会社Cosgrove/ Meurer Productions。事件に関する諸説が1パラグラフにまとめられ、「元ロサンゼルス郡保安官代理で、ロサンゼルスを拠点に活動する私立探偵トム・グラント氏」の名前と、自殺と断定するのは「時期尚早だ」という同氏の疑念が書き添えられていた。概要報告書には、グラント氏が「遺書とみられるメモに関する疑問など、数々の不審な点を発見した」と書かれている。遺書について、グラント氏は「コバーンからファンへの引退宣言」だと考えていた。

Cosgrove/ Meurer Productionsの共同創業者テリー・モイラー氏は、当時の要請についてあまり覚えていなかったが、たしかにこの年に『未解決ミステリー』はこうした説を検証するエピソードを放映している。「うちでは様々な事件でFBIにコンタクトし、情報収集しています」とモイラー氏。「今でも手法は変わりません――昨日もFBIと話をしたばかりです。FBIとは頻繁に連絡を取っています。あのFAXもいつもと同じやり方です」

ローリングストーン誌はファイルの公開時期についてFBIに問い合わせたが、記事掲載の段階では返答は得られなかった。だがファイルの公開により、コバーンはFBIの監視・捜査対象となったミュージシャンの顔ぶれに名を連ねることとなった。彼以外にはノトーリアス・B.I.G.(殺人事件の捜査は2005年に終了しているが、事件に関するFBIのファイルは300ページを超える)、モンキーズ(60年代のコンサートのビデオ映像に反アメリカ的な「サブリミナル・メッセージ」が盛り込まれていた件)、ビージーズのロビン・ギブ(離婚協議中、当時の妻の代理人を務めた法律事務所に、当人の署名入りの「脅迫ともとれる」電報を送った件)、ジョン・デンバー(1979年に脅迫状を受けと言っていた件)などがいる。

コバーンのファイルはそこまで際どくないにしても、ミュージシャンの情報を収集するFBIの関心がクラシックロック時代にとどまらなかったことを改めて実感させた。謎の男たちにも、「オルタナティブ」な別の一面があったのだ。

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From Rolling Stone US.

Translated by Akiko Kato

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