イマジン・ドラゴンズが語るバンド再始動の裏側、リック・ルービンと幻覚体験

精神疾患や離婚の危機を救った「幻覚体験」

一「カットスロート」は歌詞の中に抗うつ剤やセロトニンが出てくるので、ご自身の鬱の経験を取り上げているんだと思いました。

ダン:そう、あの曲は自己嫌悪の悪魔祓いなんだよ。僕はこの人生で何年も「ああ悲しきかな」と(思いながら)過ごしてきた。僕の鬱は遺伝的なものなのか、それとも宗教的危機が原因なのかはわからない。僕はモルモン教の中で育てられたが、自分にはしっくりこなかった。頭の中でうまく整理できなかった。だが理由は何であれ、10代のころに精神疾患の治療を始めて、セラピストに通ったりいろんな薬を試したりした。

僕の音楽はどれもそういったことが中心で、自分自身にたっぷり焦点を当ててきた。あの曲は一種の悪魔祓いの歌。そういった自己憐憫を取り除いて、人生や自分に与えられたものを受け止めよう、という歌なんだ。「カットスロート」やアルバムの多くの曲は、人生の終焉が大きなテーマになっている。僕も昨年、義理の姉をガンで亡くした。彼女が亡くなった時、僕は兄貴と一緒に部屋にいた。兄夫婦は7人の子持ちでね。故人と同じ部屋にいたのは初めての経験だったから、今までにないショックを受けた。毎日の生活について、人生の生き方について考えさせられたよ。その前の年には、親友の1人が自ら命を絶った。そういうことがあると、自分の健康や1日1日に感謝するようになる。あの曲を聴くと、みんな誰かに怒っている曲だと思うだろう。でも本当は、自分自身に怒っているんだ。

一どういった経緯でそういった境地にいたったのですか?

ダン:僕が試したことで実際に人生を変えるような出来事だったのは、アヤフアスカをやったことかな。自分にとってはまさに分岐点だった。あれのおかげでどうでもいいことが何かわかって、それを手放すことができたし、大事なことが何かわかって、受け止めることができた。僕にとってはすべてがガラリと変わったよ。もちろん、アヤフアスカ博士とかなんとかを気取るつもりはないよ。でも僕にとっては人生を変える体験だった。精神疾患から大きな1歩を踏み出す助けになった。

一どんな状況だったんですか? ジャングルに行ったのか、それともリビングルームでただ座っていたのか?

ダン:実は、妻とは7カ月別居していたんだ。離婚するつもりだった。ちょうど最後のアルバム『エヴォルヴ』を出したころで、僕はツアーに出ていて、7カ月間言葉を交わさなかった。その時点では、弁護士を通じて話をしていた。帰宅して、弁護士の同席のもとで書類にサインすることになっていた。お互いテーブルに向かい合って、ただ相手を見つめていた。会合の直前に、彼女は携帯にメールしてきたんだが、目からうろこがおちるような内容で、胸に
深く刺さった。今まで互いに触れたことのない内容だったんだが、僕はそれですごく癒された。

それで2人も匙を投げたんだ。「これは僕らが求めていることじゃない、僕らに今必要なのはランチに行くことだ」ってね。それで一緒にランチに行った。彼女は、アヤフアスカをやったら人生が変わったと教えてくれた。「あなたがその気なら、一緒に次の週末やってもいいわよ」って彼女が言ったので、僕も自分で少し調べて、一緒にやってみたら本当に人生変わったってわけさ。言葉で説明しようとするとどうしても陳腐に聞こえてしまう。そのくらい奥が深いんだ。

そのおかげでヨリを戻し、それから何年も幸せに結婚生活を送っているよ。16カ月の赤ん坊もいる。それまでたどり着けなかった健全な環境や、自己愛へと導いてくれたんだ。

一私も人からアヤフアスカがいいという話は聞いたことがありますが、あなたの話は一番ポジティブなものかもしれませんね。それでも怖くて個人的にはまだ試していないんですが……。

ダン:そりゃ怖いさ。僕だってみんなに「君もやるべきだ」なんて絶対言いたくないし。一大事だからね。全員に向いてるようなものでもないと思う。でも僕の場合、信心深さがちっぽけなものだと気づかせてくれたんだ。

Translated by Akiko Kato

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