ネット発クリエイターとリアルの最前線に立つ「正夢」の狙い

「今」のボカロPや歌い手が目指すゴール

—音楽シーンを巡る状況は5年前と今ではだいぶ違っていると思います。かつてボカロPや歌い手などのクリエイターが見据えていた成功や目標と、今の10代にとっての前提はかなり違っている気がします。そのあたりはどう見ていますか?

杉浦:たぶん5年前の目標ってメジャーデビューだったと思うんです。そういうところを見据えている人が多かったと思うんですけれど、今は発信する方法が沢山ある。「別にそこがゴールじゃないよね」という人が非常に多いと思います。実際、楽曲の配信も自分でできるし、CDもディストリビューターを使えば全国に流通できる。自分でYouTubeに動画を投稿してその反応が自分に返ってくるしということも当たり前になっている。そこで音楽家としてどう成功するか、みなさんいろいろ模索してる状況なのかと思いますし、できるところまでは自分でやってみたいという人も多いと思います。

阿部:今は恵まれてる時代だと思います。SNSをうまく活用して自分のランクを上げることができる可能性もある。ただ、僕自身はメジャーレーベルにいた人間でもあるし、そこに行ってみないと見えない景色があるというのも実感しているんです。その可能性も選ぶことができる。そういう意味で、選択肢が増えた時代になったと思います。

—昨年にYOASOBIのAyaseさんがインタビューで言っていた言葉が印象的だったんですけれど、「“ネット発”みたいな言葉で語られるのは、僕らぐらいの世代が最後になるんじゃないか」と言っていたんですね。どんなアーティストもネットで発信しているわけで、「ネットシーン」とそうじゃないものをわける垣根がどんどん無くなってきたのが最近の傾向だ、と。そういう風にフィールドが広がったことで、逆にシーンの中の細分化や多様化も進むようにも思っているんですが、そのあたりはどうでしょうか。

杉浦:今はこれだけいろんな才能が溢れていますからね。シーンの中のカテゴリも増えているし、さらにここから増えていくとも思います。でも、ネットの中でも広がる人と広がらない方に大きな差があると思っていて。ユーザーにとっては、本当に自分が好きなものになかなか行き着かないことが多いと感じているんです。カテゴリが細分化されすぎて、どこに行けばいいのかわかりづらくなっている。今後しばらくこれは続くじゃないかなと思ってます。なので、今回のコンピでボカロPさん、歌い手さん、Vtuberさんといういろんなタイプのクリエイターを集めたのは、その中で一個でも引っかかるものがあると嬉しいというところもあるんです。何か一つでも、どのジャンルでもいいから、こういうものがあるんだというのが伝わったらいいなというのはあります。

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