スパークスとエドガー・ライト監督が語る、最新ドキュメンタリーと謎多きバンドの50年史

スパークスとして活動するラッセルとロンのメイル兄弟(『The Sparks Brothers』より)(Courtesy of The Sundance Institute)

『ベイビー・ドライバー』『ショーン・オブ・ザ・デッド』などで知られるエドガー・ライトが監督を務めた、スパークスのドキュメンタリー映画『The Sparks Brothers』がサンダンス映画祭の一環でプレミア上映された(日本公開は未定)。50年に渡る音楽キャリアを克明に描いた同作について、スパークスのいまだ謎多き魅力について、メイル兄弟とエドガー・ライトが大いに語る。

【動画を見る】エドガー・ライト監督の最新作『The Sparks Brothers』予告編

スパークスには、気軽なファンなど存在しない。ファンとしてのこだわりのレベルがいくつか、という尺度でのみ測られる。例えば、ロンとラッセルのメイル兄弟が歩んできた長年に渡る音楽のキャリアに興味を持つきっかけとなったアルバムを手にして、生涯大切にしようと決めたとする。それがポスト・グラムロックの『Kimono My House』(1974年)であれ、ジョルジオ・モロダーがプロデュースしたディスコ後期の『No. 1 in Heaven』(1979年)であれ、或いは世界的に有名なFM局KROQで受けそうなモダンロックの『In Outer Space』(1983年)であれ、ファン・レベル1〜10で言えばレベル4に過ぎない。

スパークスのユニークでチャレンジングな回り道(1977年の錯乱したアルバム『Introducing Sparks』を称賛するなど)をきっかけにファンとなり、アルバム毎にコロコロ変わる彼らのサウンドに魅了され、さらに、21世紀に入ってもなおチケットを購入して彼らのコンサートへ足を運ぶファンもいるかもしれない。そんなファンはレベル6に相当する。ロンの不気味な表情と50年代風のファッションセンスをそっくり真似ているファンは、レベル7.5。背中にアルバム『Pulling Rabbits Out of a Hat』のジャケット写真のタトゥーを入れているなら、レベル8だ。

そして、多くの作品を残しながらも極度にマニアックな存在のバンドをテーマにしたドキュメンタリー映画が、3年間かけて製作された。バンド初期の成功から低迷期、ラインナップに名を連ねた人々、代表的なヒット作と失敗作、そして唐突な復活劇まで、バンドの全時代を網羅している。スパークスの全てがわかる作品だ。ファン・レベル1〜10を基準にすると、監督のエドガー・ライトのファン・レベルは25程度に達するだろう。

『ショーン・オブ・ザ・デッド』等の代表作を持つライトはスパークスの超ファンで、バンドの50年に渡る音楽キャリアを初めて徹底的に掘り下げたドキュメンタリー映画『The Sparks Brothers』を監督した。70年代のアリーナロックに始まり、パンク、パワーポップ、エレクトロポップ、ニューウェイヴ、90年代のオルタナ・ロック、ニューミレニアムのレイヴミュージックからポストパンク・リバイバル(フランツ・フェルディナンドとのコラボバンド「F.F.S.」としてアルバムを発表)に至るバンドの歴史と、完全に未知なる領域への寄り道までも描いている。この映画は、自分たちのロックンロールや映画への愛情と並外れたユーモアのセンスを実験的な作品に込めた、南カリフォルニア出身の2人兄弟の物語でもある。

ライト監督のドキュメンタリー映画には、インタビューや秘蔵映像の他、多くのユーモラスな要素も含まれる。歪められたバンド像を直視した作品で、スパークスのアルバムと同等の価値がある。馬鹿げた感じに見えるが嘘偽りはなく、皮肉めいているが愛情が込められている。ありがちな構成だが、どこかまるっきり異なるものとの境で揺れている感じがする。暴露する前から10もの見えすいた嘘を並べたバンドを主人公にした音楽ドキュメンタリーなど、他にはないだろう。そんなことは、まあ気にしないことだ。

『The Sparks Brothers』がプレミア上映された完全オンライン開催の2021年サンダンス映画祭に先立ち、監督のライトとメイル兄弟にオンラインインタビューを行った。3人には、時には自己を犠牲にしてまでも、常に前進することを余儀なくされたバンドを振り返るプロセスについても語ってもらった。会話については長さを調整し、3人がどれだけ楽しそうに会話していたかを分かりやすく強調する目的で、内容の編集を加えている。

Translated by Smokva Tokyo

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