レディオヘッド『キッドA』20周年 絶望を描いた問題作が今の時代にも響く理由

『キッドA』とR.E.M.の影響

レディオヘッドの素晴らしい2018年のツアーで、トムは「オプティミスティック」を政治的な怒りに満ちた言葉と共にはじめた。「この曲を書いたのは1998年だった。僕とジョニーはどこかの砂漠を移動中だった。覚えてる? でも当時よりも今のほうがもっとこの曲は重要に思える」。しかし、あの口上は「エヴリシング・イン・イッツ・ライト・プレイス」から「イディオテック」、そして「ザ・ナショナル・アンセム」に至るまで、『キッドA』収録曲のどれにだってふさわしいだろう。これらはすべて、来たるべき時代に向けた切迫した警告なのだろうか? その見方もまだ「楽観的(オプティミスティック)」だろう。




『キッドA』のもっとも明白なインスピレーション源はR.E.M.の1992年のクラシック『オートマチック・フォー・ザ・ピープル』だった――事実、2000年当時のあらゆるレディオヘッドのファンは、このアルバムを隅から隅まで知っていただろう(特にイギリスでは、R.E.M.は彼らの故郷ジョージア州よりも売れていた)。明らかな『オートマチック~』へのオマージュは「オプティミスティック」などたくさんある。この曲はマイケル・スタイプお気に入りのリズムで歌われている(「ファインド・ザ・リヴァー」や「イグノーランド」、あるいは「モンティ・ガット・ア・ロウ・ディール」も「オプティミスティック」風に歌うことができる)。

『キッドA』にはR.E.M.の物悲しい美しさが注入されている――ただし、マンドリンのかわりにシンセが鳴っている。そして『オートマチック~』のように、『キッドA』は重要な体制の変化と共にある作品だ。レディオヘッドは新しいジョージ・ブッシュの台頭を目撃し、R.E.M.も同じように、その父の凋落を満足げに眺めていた。慇懃に、憎しみを込めて。

Translated by imdkm

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