INORANが語る「ブルース」の真意

「荒くれ者的な感じ」と呼ぶタイトルの背景

―楽しみながらというのがINORANさんらしいですね。コロナの影響を受けて弱っているアーティストもいたと思うので。

LUNA SEAの30周年のツアーも延期になり時間もできて、いろんなことを聞いたり見たり読んだりした中で、コロナのことを語るいろんな哲学者の言葉に触れたんです。哲学って結果的にポジティブになるものが多くて「え? そう考える!?」みたいな感じじゃないですか。僕ら音楽家も、音楽で人々に生きがいを与えることが本来の姿だよなって思えて。あるいは、生きがいを与えるきっかけでもいいですけどね。コロナ禍でグローバリゼーションっていうボーダレスな世界がネガティブな方に作用したわけです。けど世界がボーダレスなのなら、音楽自体も壁を越えて行けるのに、音楽作ってる方が壁を作ったってしょうがねえだろって思ったんですよ。壁をぶっ壊して生きがいを与えるものを生産しなきゃいけない、どんな状況だろうと。僕らが作っているのは工業製品じゃないので、部品がなきゃ作れないとかじゃないですからね。工場が止まっちゃうわけでもないし、工場で作っているものでもないし、ってことですよね。

―このような状況でも創造が出来る、それがクリエイターの特権ですからね。

もちろん、普段はたくさんのスタッフに支えられてクリエイティブをしているわけですけど、コロナ禍で一人で作るっていう状況になったわけです。じゃあ自分は何ができるの?っていう話ですよね。この経験って絶対忘れないし、この時期っていうのはみんな一生忘れないと思いますよ。2020年って何百年経ってもたぶん残る年だと思うし。そんな中でやっぱり産み落としていかないと、とも思ったし。なので、自分の修行とか業の意味が入っていますね。

―移動が制限された中で産み落とした一つの記録?

うん。自分の中ではそう思ってますね。

―そのアルバムのタイトルが『Libertine Dreams』=自由な夢という。

僕の中では<自由>というか<放浪>みたいな、ちょっとハードボイルド的な、荒くれ者的な感じです。

―普通だったら“窮屈な現実”みたいなタイトルが付く状況だったわけですが、真逆なんだなと。

物事っていうのは全て対になっていると思うんです。例えば善と悪。善だけが存在することなんてなくて、物事には必ず善もあれば悪もある。他にも、きっかけがあれば結果がある。でも結果だけなんてことはないわけですよ。今があればその先がある。で、今までは一日一日を一生懸命生きゆくことが大事だと思ってきたし、そうしてきたんです。でも、この状況では、その先の夢はどこへ行った?ってその先もしっかり考えないと、と思ったんです。その夢を見るってことがすごく大事だし、それに向けて歩いていくってことが大事なことだと思ったんです。

―なるほど。

別の言い方をすると、みんな今回は日常を失ったんですよね。移動とか、自由とか、今まで会っていた人に会うとか。奪われたものもあったけど、大事なものを見つけたはずです。自分の住む家であったり、住んでいる家族であったり、もう飽きたっていうぐらいみんなが感じたと思うんですよ。今回失ったものがたくさんあるけど、得たものも絶対あると思うから。そういう意味で夢・Dreamっていうワードと、Libertineを組み合わせたセンテンスっていうのは素晴らしい言葉だなと思ってアルバムのタイトルにしたんです。

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