羊文学・塩塚モエカ×君島大空 共鳴し合う2人がギターを奏でる理由

塩塚モエカと君島大空(Photo by Kana Tarumi)


まるで違うスタート地点
音楽との出会いとギターとの接し方

ーそんなふうに共感し合う一方で、音楽の出発点はだいぶ違うみたいですね。まず塩塚さんは、昔から歌うのが大好きだったとか。

塩塚:幼稚園のときにSPEEDを聴いて、「歌うってかっこいい」と思ったのが最初ですね。そのあと、小学生になるとYUIさんが好きになって、自分もシンガーソングライターになりたいと考えるようになって。そこからもう少し経つと、今度はサカナクションを通じて「こんな電子音が入った音楽もあるんだ」と知り、中学の終わりにジェイムス・ブレイクと出会って「自分もこういう音楽をやりたい」というのが目標になりました。でも、パソコンは高いし、機材を揃えるのも大変だなって。今でこそiPhoneにGarageBandとか入ってますけど、まだそういう時代じゃなかったし。だから、とりあえずバンドをやろうと。

ー最初にギターを手にとったのはいつ?

塩塚:小学生のときにYUIさんが好きな友だちがいて、その子のものを貸してもらってました。そのあと、中学受験の合格祝いで買ってもらって。

ーそこからたくさん練習したんですか?

塩塚:いや、まったく(笑)。ご存知の通り、今もギターは全然弾けません。私はダンスも好きで、身体の表現に興味があって。ギターも手で弾くから肉体的といえるけど、歌は体から音が出てくるじゃないですか。そう考えると、ギターは弾いてて楽しいけど、どうしてもってわけでもなくて。

ーたまたま手に取ったのがギターだっただけで、そこまで執着があるわけでもない?

塩塚:そうですね。でも、いろいろ出来るようになりたいし、エフェクターで歪ませたり、ギターっぽくない空間みたいな音を作ったりするのはすごく楽しい。バンドではあんまり使えないけど(笑)。


もともとFender Japanのストラトキャスターを使っていた塩塚が、楽器屋で薦められて購入したFender USA FSR American Vintage 65 Jaguar。「ポイントは色の可愛さ」と本人も語るように、限定モデルのソニック・ブルーカラーが映える。ボディにはヨ・ラ・テンゴのジェイムズ・マクニューにもらったサインも。「塗装が薄いのでチューナーを挟んだらロゴが剥がれちゃったけど、そうなると自分のものになってきた感じがするんですよね」(Photo by Kana Tarumi)

ー逆に君島くんは、もともとプレイヤー志向が強かった。

君島:親父がギターをやってて、今日持ってきたガットギターも親父の知り合いからもらったんですけど、これを家で弾かされたんです。最初は興味がもてなかったけど、あるとき「Cのコードを押さえてみろ」と言われて、押さえることができなくて。そこから急に火がついて、ずっと一人で練習してましたね。親父はフォーク、母はAORが好きで、あとはジャズギターのコンピレーションをもらったりして、そういう音楽をずっと耳コピしてました。

塩塚:英才教育だね。

君島:アル・ディ・メオラとパコ・デ・ルシア、ジョン・マクラフリンの『Friday Night In San Francisco』っていうスーパーギタートリオのライブ盤を、親父の知り合いからカセットでもらって、そこで何かの糸が切れた感じがしました。「俺はこれになる!」って(笑)。特に好きなのはパコ・デ・ルシア。ガットギターでこんなにドロドロした表現ができるんだって。そこからずっと技巧的なものを追及しつつ、家にパソコンが来てからは、YouTubeで音楽をどんどん掘っていって。中学生の頃はずっとメタルを聴いてました。

塩塚:出た! その話好き!(笑)

君島:とにかく速く弾けることが正義だと思ってた時期が長かったんですよ。


静岡・浜松の老舗ギターブランド、TOKAIの昭和46年製ガットギター。文中でも言及されているように、君島とは学生時代からの付き合いで、現在もレコーディングやライブで使われている。「もう体の延長みたいになっていて、『こう弾いたらこう鳴る』というのがわかりやすい。あと、ガットギターは弦を交換するのが大変で、僕も2年くらい弦を張り替えてないので、(劣化して)おじいちゃんみたいな音になっている。そうやって音を育てるのも好き」(Photo by Kana Tarumi)

ー君島くんは胸を張って「ギター大好き!」って感じですか。

君島:好きですね。でもしばらくして、技巧的な自分に嫌気が差してきて。弾き語りの女の子のサポートに呼ばれるようになってから、自分が聴いてきた音楽とあらためて向き合い、ギターがどうやって歌に寄り添えばいいのか意識するようになりました。そこからフォーキーなブルースとかフリージャズっぽいアプローチだったり、今の感じに近付いていった気がします。

ー君島くんの音楽はDTMに支えられている部分も大きいと思うけど、自分のなかで生演奏と打ち込みはどんなふうに区分されているんですか?

君島:弾き語りで演奏するギターと、音源で鳴ってる打ち込みは、自分のなかではそこまで変わらないですね。モエカちゃんもさっき言ってたけど、肉体性みたいなものが僕も好きで。自分でギターを弾くときも、どうやってるのかわからないけど確実に人が演奏している、みたいなギリギリの感じをめざしてます。筋肉の伸縮が見えるような状態というか。打ち込みに関してもそう。ジェイムス・ブレイクの1stアルバムみたいなドライに振り切ったものも大好きだけど、自分で作る音楽に関しては、シーケンスでも感情をイメージしながら打ち込みするようにしてます。

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