マデオンに訊く、若くして成功したEDMプロデューサーの「その先の人生」

2020年1月、マイナビ赤坂BLITZで来日公演を行ったマデオン(Photo by Masanori Naruse)


―「アーティスト」としてのマデオンが、このアルバムで伝えたかったことはなんでしょう?

マデオン:「喜び(Joy)」だと思う。ただ「喜び」を祝福するだけでなく、見つけること、失くしてしまうこと、どういうものか追求することもそこには含まれている。制作をスタートさせた2015年頃はNYで仕事していたんだけど、そこでいきなり「喜び」のヴィジョンが見えてきて、興奮のあまり1週間くらい眠れなくなってしまった。ギターの音色だったりどんどんアイディアが湧いてきたので、僕は次々と音楽を作っていき、自分の内面が求めるサウンドを録りためていった。当時の僕は、その「喜び」が永遠に続くものだと考えていたんだ。でも、あるとき急に消えてしまった。そこから1カ月は途方にくれてしまったよ。

だから『Good Faith』では、いつまでもあると信じていたインスピレーションがなくなった状態を克服しながら、それがどこからやってきたのか理解し、パーマネントな「喜び」を再び見つけ出すまでの過程をテーマにしている。だからメンタルヘルスとか、自分との格闘だったりも関係している。



―前作から4年間もスパンが空いたので、何かパーソナルな浮き沈みがあったりしたのかなとも想像していました。

マデオン:たしかに落ち込むことは多かったけど、いいこともあったよ。ポーターとの「Shelter」で1年間ツアーを回ったりとか。でもそのあとに、ミュージシャンとしての自分を見つめ直す時間が必要だった。10代の頃からツアーを続けてきたから、同じ場所に落ち着いて、普通の人生を過ごすということを僕はやってこなかったんだ。

だから、今回の制作については焦らないようにした。時間をかけて正解だったし、そういう時間を自分に与えることができたのもよかった。これは僕の人生にとって必要なステップだったんだ。完成したアルバムを誇りに思うし、聴き返すといろんな記憶が走馬灯のように蘇ってくる。多くの浮き沈みがあったけど、そのプロセスこそがアルバムのストーリーにつながっている。そして、僕は成長することで「喜び」を取り戻すことができたんだ。

―『Good Faith』でドリーミーな音作りが目立つのも、今の話と関係ありそうですか?

マデオン:そうだと思う。僕が好きなアルバムは大概にして、表面上から受ける印象とは違う美しさを持っていることが多い。『Good Faith』もそうしたつもりで、一見楽しげなサウンドに満ちているけど、その根底にはダークな感覚が横たわっているんだ。例えば「Be Fine」という曲は、音自体は非常に楽観的なんだけど、しっかり歌詞を読み解くと、そこでの「喜び」が危なっかしくて落ち着かないものとして描かれていることに気付くはずだ。ある種の間違った「喜び」というか。たしかにアルバムの音は全体的にドリーミーだけど、表面を引っ掻いて、その下にあるものを覗いてもらえたら嬉しいね。



―最後の質問です。2010年代のダンスシーンで活躍してきたDJやプロデューサーが、これから2020年代を迎えるうえで、どういった人生設計を描いているのか興味があります。若くして亡くなった人もいるし、目標を保ちながらキャリアを長く維持するのは並大抵のことではないでしょう。あなたはどんなふうに考えていますか?

マデオン:マデオンの活動について判断するとき、僕はいつもふたつのことを考えている。ひとつ目は、いかにオーディエンスを楽しませるか。僕が尊敬しているアーティストは、音楽を通してファンに豊かな体験を与えられるよう、クリエイティブな表現に取り組んでいる。マデオンも単なるビジネスではなく、音楽による小さな世界を創り上げ、誰もが興奮を見つけられるコミュニティにしていきたい。

もうひとつは、マデオンをやっている自分がハッピーかどうか。もしそうじゃなかったら、何かを変えなければいけない。マデオンはこれまで何度もバージョンアップしてきた。そうやって変化してきたからこそ、ファンも信頼してくれるし、僕のプロジェクトにも関わってくれる。だから、自分に誠実であれば大丈夫と思えるようになった。この間のアメリカのツアーでも、僕はより大きな会場でライブすることができた。広大なEDMシーンのなかで、僕は自分のやり方で成長することができたんだ。

2020年代に最初にやることは『Good Faith』のサイクルを終わらせること。ひとつの章が閉じたら、また自問自答の日々が始まるだろう。自分にとってマデオンは「喜び」であり、人生で一番重要なことだ。僕にはこれしかないとも言える。だからこそ、慎重にキャリアを築きながら、人間らしさを残せるくらいのバランスを保っていけたらと思っているよ。


Photo by Masanori Naruse




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