ローリングストーン誌が選ぶ「2019年ベスト・メタル・アルバム」トップ10

2位 ムーン・トゥース『Crux』


このアルバムはコンヴァージを一瞬彷彿させ、その次にジョン・メイヤーを思い出すかもしれない。辛抱強くこのまま読み進めてほしい。ロングアイランド出身のムーン・トゥースの2ndアルバムには錬金術的な何かがあり、注意散漫なジャンルのマッシュアップが巧妙なハイブリッドに変貌してしまうのだ。「Omega Days」や「Motionless in Sky」のような曲にはバンドの趣旨替えの証拠は一切なく、プログレ・メタルの怒りとR&Bの辛辣さが仲良く噛み合っている。パワーバラッド特有の優しく囁いて歌う手法が野獣モード炸裂の楽曲に問題なく溶け合うなど想像だにしなかったのだが、『Crux』の鳥肌モノのタイトル曲のおかげで、それが現実のものとなったようだ。初期のマーズ・ヴォルタが、最強のフックを保ちながら、ロック・バンドでも幅広く冒険的なサウンドを取り入れられると証明して以来の快挙だろう。(HS)




1位 スリップノット『We Are Not Your Kind』

『.5: The Gray Chapter』でベーシストのポール・グレイの死を悼んでから5年。反体制の人々に向けた猛烈な速さのアンセムを詰め込んだ6枚目のアルバムで、スリップノットが戻ってきた。「ひどく保守的な世代の連中を撃退しようと頑張っている生きづらい人々、環境に適応できない人々、利口な人々」のための曲を集めた作品だと、コーリー・テイラーが「Birth of the Cruel」で吐き出すように言う。

『We Are Not Your Kind』は再活性化されたスリップノット・サウンドが一巡して戻ってきた感じがする。ある意味でまとまりのないホラーショーのようだ。ダークなポップ・ハーモニーをだみ声で歌うロックラップとは対象的に、クラウンが作った小競り合い曲「Nero Forte」でテイラーはあざ笑いながらうぬぼれた態度で、繊細な瞬間に場違いな陽気さを加える。「Critical Darling」のキャッチ&リリース系メロディでは、福音伝道者たちと気候科学者たちが予報したとして、テイラーは人間が一番の原因の大災害への用心を呼びかける。「その予報がもう始まっている/俺が見ることもない終焉が/天国がなければ地獄もないと俺たちは自分に言い聞かせる」と。5月に「あんたらは悪者がほしいんだよ。だから俺がお望みの悪役を与えてやる」とテイラーが語っていた。しかし、スリップノットの曲でよく歌われるように、自分の心の遅く底に潜む悪者ほど自分を不安にさせる悪者はいないのだ。(SE)

Translated by Miki Nakayama

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